『海角7号 君想う 国境の南』どうして今までこの映画をみなかったのか。何とも情緒のあるしみじみとしたいい映画だ。タイトルもいい。音楽が楽しませてくれる。台北ではなく、南部の高尾より南の恒春が舞台。中国とは明らかに違う国、台湾。

薄暮シネマ【5月23日~25日】

 

『ショートターム』(2013年/97分/アメリカ/原題:Short Term 12/監督・脚本:デスティン・ダニエル・クレットン /出演:ブリー・ラッソン ジョン・ギャラガー・JR・2014年日本公開)★★★★☆  

日本でもたぶん大きな話題になったのだろうが、私はこの映画のことを全く知らなかった。仕事を定年になった年の11月に公開されている。もっと早く見たかった。

 

ストーリーを追いながら、何度も自分の仕事で出会った子どもたちとのことをさまざま思い浮かべた。間違いなくみるほうの想像力をかきたててくれる映画、

「10代の少年少女を対象とした短期保護施設を舞台に、誰にも言えない心の傷を抱えた女性と子どもたちが、大切な誰かとともに生きる喜びや希望を見出していく姿を描いたヒューマンドラマ。」(映画ドットコムから)

 

と書かれてしまうと、違うかなと思う。

映画、つまりつくりモノと思えるところと、全くそうでないところがうまくかみ合って、映画の中に引きずり込まれる。出演者のほとんどは素人、撮影は20日間。

 

人と人がぶつかり合う「現場」のリアリティが伝わってくるのは、脚本の完成度の高さと若い監督のエネルギー、そして出演者たちの「演技」のしなさだ。

 

人と関わる喜びと落胆、やさしさと残酷さがまだら模様になって肌にひりつくような感じ。自分が壊れそうになりながら、目の前の子どもから目を離すことができない。そんなふうに「在る」ことは、現実には珍しいことではないけれど、表現されると大事なものが脱色されてしまう。

 

たいそうな話ではない。こんなことって日常だし、そういうふうな仕事ってフツーのあるわけよって感じ。

 

とにかく超おススメの映画である。

 

いい映画は、いろいろな人がいろいろな方向から評価できる面があるが、この映画もまさしくそれ。教育臭が全くしない、豊かな映画。ある意味、良質な青春映画なのかもしれない。

アカデミー賞にかすりもしていないのはどうしてなのだろう。

この監督、注目していきたいものだ。

 

『昔々、アナトリアで』(2011年/157分/トルコ・ボスニア・ヘルツェゴビナ合作/

原題:Bir Zamanlar Anadolu'da トルコ語邦題は直訳)/監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン  /出演:ムハンメト・ウズネル)日本未公開 2014年にDVD)★★

「稀有な傑作」という評判もあり、カンヌ映画祭でグランプリ(パルムドールの次点)をもらっという作品。全編、暗く独特の雰囲気があるが、私には難解すぎて正直愉しめなかった。降参。

 

『海角7号 君想う 国境の南』( 2008年/130分/台湾/原題:海角七號/監督・脚本:ウェイ・ダーション /出演:ファン・イーチェン 田中千絵・中孝介/2009年日本公開)★★★★☆

 

 

 

日本の植民地であった台湾、しかしつくられる映画は親日的な映画が多い。実際に台湾を訪れてみても、人々は日本人に対しあたりがやわらかい。

同じ監督の『KANO 1931海の向こうの甲子園』(2015年)にも、長年にわたった日本の占領下での抑圧状況はほとんど描かれていない。抗日蜂起を描いたセデック・バレの真実』 のような映画もつくっている監督なのだが、たしかに満州朝鮮半島に対する占領政策とは懸隔があるのも事実のようだ。

ノリとしては『52Hzのラヴソング』(2017年)に近いのかもしれない。それにしても何とも情緒のあるしみじみとしたいい映画だ。タイトルもいい。音楽が楽しませてくれる。台北ではなく、南部の高尾より南の恒春が舞台。中国とは明らかに違う国、台湾。大好きな台湾映画だ。たくさんの論評がネットにある。これを読むのも面白い。

 

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古い友人のSさんが贈ってくれたCD。マイケル・ナイマン。映画『ピアノレッスン』(1993年)の音楽を担当した人。 

 

おととい届いたのだが、もう6回も聴いている。

雨音を聴くようなしみじみとしたピアノ。とってもいい。調べてみたら2006年発売のCD。いいものを贈ってくれるSさんはジャズピアノを弾く。