10月の映画寸評(6)
面白かった映画を⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から⭐︎まで勝手に評価。
『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか』
2026年製作/116分/PG12/日本/配給:キノフィルムズ/原作:アレン・ネルソン/
脚本・監督:塚本晋也/出演:ロドニー・ヒックス マーク・マーフィー(青年期)ジェ
フリー・ラッシュ リリー・フランキーほか/劇場公開日:2026年9月11日
10月20日 キノシネマ ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
「野火」の塚本晋也が監督・脚本を手がけ、ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンが自らの戦争体験と帰還後の葛藤をつづったノンフィクション書籍を原作に、“戦争加害者の傷”というテーマに取り組んだドラマ。
ニューヨークの貧しい家庭に生まれたアフリカ系アメリカ人のアレン・ネルソンは、貧困や差別から抜け出すため18歳で海兵隊に入隊する。沖縄のキャンプ・ハンセンを経て、1966年にベトナム戦争の最前線へ送られた彼は、苛烈な戦場でただ人を殺すことを強いられ、命を奪う経験を重ねるうちに心の感覚を失っていく。やがて23歳で帰国した彼を待っていたのは、戦場の記憶に縛られる日々だった。大きな音や暗闇に怯え、家族との関係も崩壊しホームレスとなった彼は、絶望の淵へと追い込まれていく。退役軍人病院でカウンセリングを行うダニエルズ医師はそんな彼に真正面から向き合い、救い出そうとする。
ブロードウェイミュージカル「RENT」のオリジナルキャストとして知られるロドニー・ヒックスが主人公アレン・ネルソンを演じ、「シャイン」「英国王のスピーチ」などの名優ジェフリー・ラッシュが精神科医ダニエルズ役で共演。リリー・フランキーがアレンの活動をサポートする日本人・黒井役で出演し、全編英語での演技に挑んだ。2026年・第83回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。
配給会社が経営する映画館で見た。どういうわけか当初の上映館が減らされ、限定的な公開になっている。ネットで調べてもその理由はわからない。この映画を人々に見させたくないベクトルが存在するのだろう。これだけの映画、時間をかけて広げていってほしい。
全編、ただただ圧倒された。
戦争映画と言っていいと思うが、今まで見てきたどの国の戦争映画でも、ここまで兵士の側の心的状況に迫った作品は見たことがない。特筆に値する作品だと思う。
殺す側、殺した側の語られなかった苦悩は、戦闘シーン、戦場シーンだけでなく、ドクターとネルソンの対話のシーンが出色だ。
「君はなぜ人を殺したのか」
兵士として「つくられていく」ことは、同時に壊されていくこと。その壊れた場所から、立ち上げろうとするネルソンさんの家族との葛藤、後年の講演部分も印象深い。
「考えるな 服従しろ 殺せ」
という海兵隊の訓練、それも下級兵士として黒人が多くを占める部隊。戦う相手が違うだろうと殺される寸前のベトコンの青年が吐露する。
これら3つのの言葉は、カードを裏返すようには簡単には裏返すことはできない。
スクリーンの前で考えたこと。書きたいことはたくさんある。
それよりもとにかくこの映画、見てほしい。切実にそう思う映画は多くはない。
今まで見てきた塚本晋也監督の作品の中で、最も優れた作品だと思う。





