映画『最初の晩餐』意表を突く食事をめぐる物語。いい脚本だと思うが、次々と出てくる通夜ぶるまい、長すぎる。不自然。物語としては面白いのに。斉藤由貴と戸田恵梨香がよかった。  

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写真はネットから拝借しました


久しぶりに映画館で観た映画二本

 

『山中静夫氏の尊厳死』(2019年/107分/日本/監督・脚本:村橋明郎/原作:南木佳士/出演・中村梅雀 津田寛治 高畑淳子/公開2020年2月)★★★

梅雀と津田寛治という取り合わせが気になってみることに。梅雀の絶妙なうまさと津田寛治の独特の緊張感。見せるシーンもいくつもあり、最後まで飽かずには見られたが、今一つの感はぬぐえなかった。がんの告知、末期医療について、原作の書かれた時期と現在はかなり違ってきているが、そのあたりがどうもはっきりしない。やはり監督自身のオリジナルな脚本でないという点で腰が引けているのかなと思った。原作の単行本は1993年、2004年発行の文庫本を古本で購入、これから読む。

 

『架空OL日記』(2020年/100分/日本/監督:住田崇/原作・脚本・主演:バカリズム そのほか夏帆 シム・ウンギョンなど/2月公開)★★★☆

『約束の巡礼』と『山中静夫氏の尊厳死』の間にちょうど2時間余空いていたので、時間つぶしにと見た。映画館で声を出して笑うということはほとんどないが、この日2、3度声が出てしまった。バカリズムという人、ほとんど知らないが、ブログで連載した銀行のOLに扮しての語りがそのまま脚本のベースに。原作、脚本まではわかるが、本人がOLの一人として女装はするけれど声も髪型も男性のまま出づっぱり。最初の違和感が最後には全くなる不思議さ。言葉や空気に対する敏感さがとにかく面白い。不思議な映画。

 

 

 

 

 

 

薄暮シネマ】6月15日~6月29日

 

『検事フリッツ・バウアー ナチスを追いつめた男』(2016年/93分/ドイツ

原題:Die Akte General/監督:ステファン・ワグナー/シュツエン・ウルリッヒ・ノエテンほか)★★★

アイヒマンを追う検事フリッツ・バウアーの物語は、『アイヒマンを追え』とも共通するが、フリット・バウアーの人物像は同じでも、部下の若い検事の位置づけがかなり違う。イスラエル東ドイツなどの秘密警察と西ドイツ政府内のナチス残党の暗躍は、一筋縄でいかないものを感じさせる。これと併せて『アイヒマンショー』をみると、アイヒマンを追う物語の全貌はある程度分かる。ユダヤ人でゲイでもあるフリッツ・バウアーを検事総長として起用する州首相、こうした人たちがいてこそのドイツの戦争犯罪に対する戦後の在り方が規定されてきたのだろう。

 

『最初の晩餐』(2018年/127分/日本/監督:常盤司郎/脚本:杉山麻衣/出演:染谷将太 戸田恵梨香 窪塚洋介 斉藤由貴 永瀬正敏/2019年11月公開/Amazonプライムレンタルで500円)★★★☆

意表を突く食事をめぐる物語。いい脚本だと思うが、次々と出てくる通夜ぶるまい、長すぎる。不自然。物語としては面白いのに。斉藤由貴戸田恵梨香がよかった。

 

 

『薄氷の殺人』(2014年/106分/中国・香港合作/原題:白日烟火 Black Coal, Thin Ice/監督・脚本:ディアオ・イーナン/出演:リャオ・ファン グイ・リュンメイ/日本公開2015年)★★★

「2014年・第64回ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞と男優賞をダブル受賞したクライムサスペンス。中国北部の地方都市を舞台に、元刑事の男が未解決の猟奇殺人事件の真相に迫っていく姿をスリリングかつリアルに描いた。「こころの湯」の脚本などでも知られ、これが長編監督3作目のディアオ・イーナンがメガホンをとった。1999年、中国の華北地方。ひとりの男の切断された死体が、6つの都市にまたがる15カ所の石炭工場で次々と発見されるという事件が発生。刑事のジャンが捜査を担当するが、容疑者の兄弟が逮捕時に抵抗して射殺されてしまい、真相は闇の中に葬られてしまう。それから5年、警察を辞め、しがない警備員として暮らしていたジャンは、警察が5年前と似た手口の事件を追っていると知り、独自に調査を開始。被害者はいずれも若く美しいウーという未亡人と親密な関係にあり、ジャンもまたウーにひかれていくが……。」

                      (映画ドットコムから)

クライムサスペンスではあるが、登場人物の内面の描き方が深みがあっていいと思った。リャオ・ファン グイ・リュンメイのふたりが際立って見える。

 

 

『破獄』(1985年/90分/NHK/演出:佐藤幹夫/原作:吉村昭/脚本:山内久/出演:緒形拳 津村雅彦ほか)★★★

35年前に見た記憶がある。当時はもっと迫力を感じたのだが、今回見て、主人公の佐久間清太郎と看守の鈴江のふたりの「物語」に収まってしまっているのにちょっとがっかりした。原作は、当時の時代背景から佐久間の置かれた境遇までかなり詳細な記述があり、佐久間の人間像もさらに彫り深かったように思うのだが。のちにビートたけし山田孝之が佐久間を演じている。

 

ヒットラーに屈しなかった国王』(2016年/136分/ノルウェー/原題:Kongens nei/監督:エリック・ポッペ/主演:イエスパー・クリステンセン/2017年日本公開)★★★☆

ポーランド侵攻をはじめとしてナチスドイツが周囲の国々に侵出、併合していく1940年代、降伏を要求するナチスに対し、毅然として自国の独立を主張する国王。欧州の王室の独特の成立とナチスドイツの容赦のない侵略、知らないことが多いなと思った。

 

 

アイヒマンを追え』(2015年/105分/ドイツ/原題:Der Staat gegen Fritz Bauer/監督・脚本:ラース・クラウメ/主演:ブルクハルト・クラウスナー/2017年日本公開)★★★☆

映画館で見たが、今一度。『検事フリッツ・バウアー』と続けて見て、理解が少し深まったというところ。ドイツの周囲の国々に対する戦争犯罪の謝罪は、このアイヒマン逮捕によって始まっていくようだ。