ハクボシネマの記録(11月)
『0.5ミリ』(2013年/196分/日本/監督・脚本:安藤桃子/エグゼクティブプロデューサー:奥田瑛二/フードスタイリスト:安藤和津/出演:安藤サクラ 津川雅彦 木内みどり 織本順吉 柄本明 坂田利夫 浅田美代子ほか)★★★
『居眠り磐音』(2019年/121分/日本/原作:佐伯泰英/監督:元木克英/出演:松坂桃李 柄本佑 柄本明 奥田瑛二ほか)★★★
久しぶりの時代劇。松坂桃李の殺陣はすごくいい。柄本佑もいい。奥田瑛二の悪役、現代劇よりずっとうまい。男女の配役の取り合わせなど、伝統的な時代劇?が再現されていて安心して楽しめた。最初のめった斬りで話が続くのか心配だったが、なるほどこういう風に流れていくのかと納得。
『海にかかる霧』(2014年/111分/韓国/監督:シム・ソンボ/原題:海霧 Haemoo
出演:キム・ユンソクほか/2015年4月公開)★★★☆
2001年に韓国で起きた「テチャン号事件」。不景気の中不漁の続く漁船チョンジン号の船長チョルジュ(キム・ユンソク)は、中国人の密航者を運ぶ違法な仕事に手を染める。沖合で密航船と合流し、多数の密航者たちを乗せるが、海上警察の捜査や悪天候に阻まれ、ほとんどの密航者を死なせてしまう。普通の船長が取り返しのつかない状況に落ちていく。乗組員と船長の間のきずなと離反。キム・ユンソクの暗い眼がいい。この間見たばかりの『暗数殺人』での刑事役、『1987、ある闘いの真実』の朴所長、いい役者だと思う。船と海のシーンがほとんどだが、ソウルの食堂でのラストシーンが印象的。
大好きな役者の一人、『焼き肉ドラゴン』『特別捜査 ある死刑囚の慟哭』「ソウォン 願い』で好演したキム・サンホがいい味を出している。
『天才作家の妻40年目の真実』(2017年/101分/スウェーデン・アメリカ・イギリス合作/原題:The Wife/監督:ビョルン・ルンゲ/出演:グレン・クローズ ジョナサン・プライス/2019年1月公開)★★★☆
グレン・クローズは1988年の映画『危険な関係』の主演。原作の『危険な関係』(ラクロ)を読んで勇んで見に行った覚えがある。出演作はたくさんあるのに、見たのは『危険な関係』『危険な情事』『白と黒のナイフ』『運命の逆転』ぐらい。
物語は、ノーベル文学賞を受賞した作家の作品が実は妻が書いていたものだった、というある意味わかりやすい話。しかし、その妻の若いころからの懊悩をグレン・クローズがグタグタにならずに格好よく演じている。セリフのない時の表情にセリフ以上のものがある。『危険な関係』をまた見てみたいものだ。
『SALT』(2010年/105分/アメリカ/原題:Salt/監督:フィリップ・ノイス/出年:アンジェリーナ・ジョリー リーブ・シュレイバーほか)★★★☆
古い映画だが、アンジェリーナ・ジョリーが見たくて。二重スパイがテーマのアクションもの。子供からスパイを育てるソ連のスパイ養成機関出身のSALT、米ソのそれぞれの仕掛けは複雑。息をつかせぬ展開とアクション。最後はこう来るか、と驚かされる。とにかく映像がすごい。楽しめた。10年前?『SALT2』はできたのか?
『夏、19歳の肖像』(2017年/105分/中国/原題:夏天十九歳的肖像 Edge of Innocence/監督:チャン・ロンジー/出演:ホアン・ズータオ ヤン・ツアイユー/2018年公開)★★☆
島田宗司の同名の小説を中国で映画化。なんだかこなれていない感じ。主演の二人は爽やかでいいのだが。やっぱりそういうことねというネタばらし。
『さいはてにて ~やさしい香りと待ちながら~』(2014年/日本/118分/監督:チアン・ショウチョン/出演:永作博美 佐々木希ほか)★★☆
最果ての海辺で吉田岬(永作博美)は朽ちかけた舟小屋を改装し、焙煎珈琲店「ヨダカ珈琲」の営業を開始する。「ヨダカ珈琲」の向かいに住むのはシングルマザーの山崎絵里子(佐々木希)と二人の子供たち。絵里子は生活の為に家を空けることが多く、幼い姉弟はたったふたり、肩を寄せ合って母のいない日を過ごしている。 珈琲店を訪れる様々な人々との交流が生まれる中、ある夜、舟小屋で“事件”が起きる。絵里子が岬の危機を救ったことで事件は未遂に終わったものの、深く傷つく岬。そんな岬の為に珈琲を淹れる絵里子。温かい珈琲が、傷つき、頑なだった心を溶かしていく…。いつしか4人は家族のように支え合って暮らし始める。そんな中、絵里子は岬が最果ての地にやって来た本当の理由を知ることに。それは、漁師だった岬の父にまつわるもの。そして父について衝撃の事実が岬にもたらされ…。(フィルマークス映画より)
なんだかわざとらしい。永作博美はいいのだけれど。ストーリーが理屈っぽくかつ通俗的。どうして人の来ない岬でコーヒーの焙煎屋?その家の前に住む3人の母子。どこもみな不自然に思えた。ラストにネタバラシはあるけれど…。
『希望の灯り』(2018年/125分/ドイツ原題:In den Gangen/監督:トーマス・ステューバー/出演:フランツ・ロゴフスキ サンドラ・フラー ペーター・クルトほか/2019年公開)★★★★
原題は「通路にて」とでも訳すのだろうか。
ほとんどのシーンはライプツィッヒ近郊の巨大スーパー。訳あり入社のクリスティアンが主人公。上司も同僚もいろいろあるけれど、自然にクリスティアンを受け入れてくれる。既婚者のマリオンを好きになるクリスティアンだが、周囲はこれもまた静かに見守ってくれる。
全編、同じリズムで淡々と日常が描かれる。クリスティアンの揺れ動く気持ちもその時間の中で癒されていく。
媚びも妥協もない「これを描きたい」という強い意志を感じさせる映画。統一ドイツの中の埋めきれない東西の人々の心の溝。しみいるような映画だ。
『億男』(2018年/116分/日本/監督:大友啓史/出演:佐藤健 高橋一生 黒木華 沢尻エリカ 池田エライザほか)★★
3000万円の兄の借金を肩代わりして別居中の男(佐藤健)が宝くじ3億円を手にする。当選者の悲惨な行く末を見て怖くなり、友人でIT企業の成功者(高橋一生)に相談するが、泥酔した翌朝、高橋に3億円を持ち逃げされてしまう。そこからが映画なのだが、全体に題材が散らかりすぎてよくわからない。高橋の演技は独特で印象が強い。
お金のもつ不思議なリアリティが足りないのかな。
『国選弁護人』(2015年/126分/韓国/原題:The Unfair/監督:キム・ソンジェ/出演:ユン・ゲサン ユ・ヘジン キム・オクビンほか/2016年公開)★★★★
とにかく面白い。韓国の反権力ドラマは突き抜けている。
いろいろ書きたいのだけれど、疲れてしまった。
11月の『おうち(はくぼ)シネマ』はこれで終了。