『夢の家』(魚住洋子)

魚住陽子『夢の家』を読んだ。短編集。作者は昨年亡くなっていて、遺作集のようだ。

芥川賞の候補に2度上がっているが、生前、それほど注目はされなかった作家。もちろ

ん私も知らなかった。

どの作品も、濃密な死の気配が漂うが、言葉の紡ぎ方が素晴らしく、イメージ豊か。

後半、読むのが辛く感じることがあったが、読み終わって)凝縮された中身の濃い小旅行に行ってきたような気持ちになった。(駒草出版 2022年)

表題作「夢の家」には死者は登場しない。なくなったものは人生の晩年に訪れた恋だ。画家の女性とコレクターの男性の夢の家の生活のしたに隠された無残な所有欲の発露である暴力と狂気を描き出す。実際の事情とはずれた甘い恋のつぶやきが重ねられる怖さはどこか幽冥の境を踏み破っている気配がある。(東京新聞中沢けい・作家)