2024年4月の映画寸評②
<自分なりのめやす>
お勧めしたい ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
みる価値あり ⭐️⭐️⭐️⭐️
時間があれば ⭐️⭐️⭐️
無理しなくても ⭐️⭐️
後悔するかも ⭐️
『青春ジャック止められるか、俺たちを2』(2024年製作/119分/日本/脚本・監督:井上淳一/出演:井浦新 東出昌大 芋生悠 杉田雷麟 他/劇場公開日:2024年3月15日) 4月10日日kiki ⭐️⭐️⭐️
若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクションの黎明期を描いた映画「止められるか、俺たちを」の続編で、若松監督が名古屋に作ったミニシアター「シネマスコーレ」を舞台に描いた青春群像劇。
熱くなることがカッコ悪いと思われるようになった1980年代。ビデオの普及によって人々の映画館離れが進む中、若松孝二はそんな時代に逆行するように名古屋にミニシアター「シネマスコーレ」を立ち上げる。支配人に抜てきされたのは、結婚を機に東京の文芸坐を辞めて地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治で、木全は若松に振り回されながらも持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていく。そんなシネマスコーレには、金本法子、井上淳一ら映画に人生をジャックされた若者たちが吸い寄せられてくる。
前作に続いて井浦新が若松孝二を演じ、木全役を東出昌大、金本役を芋生悠、井上役を杉田雷麟が務める。前作で脚本を担当した井上淳一が監督・脚本を手がけ、自身の経験をもとに撮りあげた。
全編、80年代前半の小ネタ満載。懐かしいし、笑える。いつもはクールな役どころが多い井浦新がかなりデフォルメした形で若松孝二を演じる。解けることなく最後までなり切っていた。
木全を演じる東出も毒がなく、らしくないのがいい。監督自身を演じる杉田雷麟もちょっとありえないほど間抜け。
金本を演じる芋生悠は存在感あり演技もいい。80年代の在日の指紋押捺拒否の時代。
女で才能がなくて在日であることが三重苦だという「鬱屈」をよく表現していると思った。この辺りの脚本に共感した。
高校生で指紋押捺を拒否、大学卒業後、東京新聞に入社、スポーツライター記者となった横浜の辛仁夏さんのことを久しぶりに思い出した。
85年は指紋押捺をめぐるあつい時代だった。押捺拒否の運動を支援し、在日文学を意識的に読むようになったのもこの頃だ。
そんなこんなを思い出させる映画だった。
『戦雲(いくさふむ)』(2024年製作/132分/日本/監督:三上智恵/劇場公開日:2024年3月16日) 4月10日kiki ⭐️⭐️⭐️⭐️
「標的の村」「沖縄スパイ戦史」の三上智恵監督が、沖縄など南西諸島の急速な軍事要塞化の現状と、島々の暮らしや祭りを描いたドキュメンタリー。
日米両政府の主導のもと、自衛隊ミサイル部隊の配備や弾薬庫の大増設、全島民避難計画など、急速な戦力配備が進められている南西諸島。2022年には台湾有事を想定した日米共同軍事演習「キーン・ソード 23」と安保三文書の内容から、九州から南西諸島を主戦場とする防衛計画が露わになった。
三上監督が2015年から8年間にわたり沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島などをめぐって取材を続け、迫り来る戦争の脅威に警鐘を鳴らすとともに、過酷な歴史と豊かな自然に育まれた島の人々のかけがえのない暮らしや祭りを鮮やかに映し出す。(映画.com)
与那国、石垣、本島、奄美、馬毛島と、九州から南西諸島に至る自衛隊の配備やミサイル部隊の配備などの実態が克明に描かれている。
数年前に石垣島を訪れた時に、自衛隊配備で揺れていたが、今ではかなり実体化が進んでおり、暗澹たる気持ちにさせられる。
映画は、島の歴史や反対運動の実相、賛成派、反対派の論理を丁寧に掬おうとしている。
見ておくべき映画だ。
ただ、テレ朝系のテレメンタリー2024は、宮古島の石垣市への合併反対運動から説き起こし、自治体として台湾はじめ独自の自治体交流が、自衛隊配備によってその力が削がれていく過程を丁寧に描いていた。
自衛隊配備の問題を住民自治の問題としてきちんと捉え、その政治活動についてもしっかりレポートされていた。
それに比べ、「戦雲」はやや個人や文化に傾きすぎたかとも思えた。
タイトルの「いくさふむ」は、石垣につたわる「とぅばらーま」の歌詞「また戦雲(いくさふむ)が湧き出してくくる、恐ろしくて眠れない」に由来しているという。