久しぶりの帰省。コロナに阻まれた4年半。
大学入学で会津を出てから、こんなに長いこと帰らなかったことはない。
2泊3日の小旅行。
新横浜から新幹線を乗り継いで北上する。
こだまは案外込んでいる。通勤の人たちだろうか。
東北新幹線からは旅気分。久しぶりに午前中のビール。
郡山から磐越西線に乗り換える。
帰省するごとに乗り継ぎのいい時は乗るのだが、本数が少ないので、近年は磐越道を走る高速バスを利用することが多かった。込まなければこっちの方がかなりはやい。
久しぶりに車窓から眺める磐梯山はまばらに雪を抱いている。
遠くに見える飯豊連峰?は真っ白。冬と変わらない。富山市から見える立山連峰とまでは言わないが、違うのは高さだけ。(写真は会津美里町あたりから)
会津若松のホテルに2泊。2人の実家はもうない。
Mさん運転のレンタカーで、会津若松から会津坂下、会津美里、喜多方、会津柳津などをめぐった。
横浜は桜が散りかけだったが、会津はちょうど真っ盛り。ソメイヨシノだけでなく、枝垂れ桜が至るところに。
通り過ぎる集落の中には、庭に桜の木が植えてある家が何軒も。横浜ではあまり見かけない珍しい光景。
大ぶりの桜で、花見に行かずとも、花見ができる。
阿賀川の支流の何本もの川の河岸にも等間隔に桜が植えてあって並木になっている。
親戚の人に案内してもらったが、しかし人出があるわけではない。
人出が多いのは特定の場所。
レンタカー屋にいく時に乗ったタクシーの運転手によると、13日には会津若松の鶴ヶ城公園の駐車場は進入禁止になっていたとか。花見客で大渋滞だったそうだ。
もう一つ、近年、花見の名所となっている旧国鉄日中線あとしだれ桜ロード。こちらはMさんの親戚の方々とともに歩いたが、大変な人出。
ほとんどが旅行者のようだ。外国人も多い。
この通りが3キロほども続いている。SLや線路も展示されている。
サイクリングロードにもなっているらしい。
親戚まわりに2日。最終日は観光を少し。中田観音を経てパールラインという信号のない農道を西に向かう。柳津に近い道路の両側には水仙が数キロにわたって植えてある。
車はほとんど通らないが、人の手が入っているのが嬉しい。
会津柳津の斉藤清美術館。ちょうど新しい企画展が始まったばかり。
斎藤は1959年、損保会社AIGの創業者コーネリアス・ヴァンダー・スターの招きでパリの地を踏み、1ヶ月半にわたってパリの街を歩き尽くしたそうだ。その時の膨大なスケッチを帰国してから作品化していったという。
デッサン、版画が展示されている。どれもこれも声が出そうになる程、センスに溢れている。
時代は100年ほどもずれているが、絵の背後からエリック・サティの明るい三拍子のピアノが聴こえてくるようだ。
もう一つの企画は、PHISICAL BEAUTY 斉藤清✖️ヌード。
こちらは抽象度が増してデフォルメされた造形美の版画群。木肌の違いが面白い。
斉藤は会津を描いた作品群の印象が強く、常設もそうしたものが中心だったように考えていたが、今回全く違い傾向の作品が並んでいて新鮮だった。
館内には塗り絵のコーナーや版画のコーナーも。どちらも実際に作業ができるような仕組みになっている。
また、筑波大学の学生とのコラボによるさまざまな取り組みも展示されている。よくわからないが、どれも斬新で新鮮に感じられた。
館内の只見川に向かって開いている大きな窓から、桜と菜の花畑を散策する人々の様子が見える。
穏やかな春の日、私たちも風に吹かれながら散歩。この日の最高気温29℃。
もう1ヶ所、いつも寄るところがある。
私が生まれた町にある国指定の重要文化財、恵隆寺というお寺にある立木観音。高さ8.5mの千手観音だ。
一木彫で現在も床下には根があるのだそうだ。
その左右には二十八部衆が四段、一番上に風神雷神が配されている。
拝観できるのは、お堂の中のわずかなスペース。人が7、8人しか立てない。下から見上げる観音立像と二十八部衆はすごい迫力だ。
恵隆寺は真言宗のお寺。創建は舒明6年(634年)、恵隆によって高寺というところに作られる。
775年、北越の蝦夷の反乱で焼失、804年に再興が企図され、空海や坂上田村麻呂が協力したとされる。
808年、この千手観音像が開眼、伽藍も建立される。1190年に現在地に移転、再出発したとされる。奈良、平安から仏都会津と称された地域の一つのメルクマールだったようだ。
生家のあった会津坂下は昔も今もこれといった特徴のない町だが、こんな貴重な仏像がある。
町名は坂下と書いて「ばんげ」と読む。アイヌ語のバッケ(坂の下という意味)に由来するという。
観音堂もやはり国指定の重文。明治、大正時代にはともに国宝に指定されていたとリーフレットにある。
この観音と、野口英世の母がお参りしたという中田観音、喜多方の西、野沢というところにある鳥追い観音の三観音を「ころり観音」と称して、観光バスが訪れる。
いずれも抱きつき柱が堂内に配され、抱きつけば長患いすることなくころりといけるという。
恵隆寺の山門。本堂はこの奥にある。