『高速道路家族』韓国社会の矛盾を描く。ラ・ミランの演技が素晴らしい。子役二人も。

映画備忘録。6月6日 kiki

『高速道路家族』(2022年/韓国/128分/脚本・監督:イ・サンムン/出演:チョン・イル ラ・ミラン/日本公開2023年4月21日)

 

ホームレス一家と裕福な夫婦の偶然の出会いが思わぬ事件を引き起こす様子を描いた韓国発のスリラー映画。

高速道路のサービスエリアを転々としながらテントを張って暮らし、2度と会うことのない他人から2万ウォンを借りて食いつないでいるギウと3人の家族。ある日、ギウは以前お金を借りたことのあるヨンソンと、別のサービスエリアで偶然にも再会してしまう。不審に感じたヨンソンはギウを警察に突き出すが、残されたギウの妻ジスクと子どもたちを放っておけず、家へ連れ帰って一緒に暮らし始める。ヨンソンのもとで何不自由なく生活する家族を取り戻そうとするギウだったが……。

ホームレス一家の父ギウをテレビドラマ「太陽を抱く月」のチョン・イル、サービスエリアでギウ一家と出会うヨンソンを「ガール・コップス」のラ・ミランが演じた。

                        (映画.comから)

 

スリラー映画ではない。

韓国の貧困を描いたドラマ。エンタメでありながら、テーマ性があり、丁寧に作り込んであって楽しめた。二人の子役が素晴らしい。ラ・ミランという女優の演技が素晴らしい。この人が主役か。

ラ・ミラン演じるヨンソンは、高速道路のサービスエリアで寸借詐欺を繰り返すギウに怒りを持ちながら、その家族に手を差し伸べる。夫との関係の冷え込みも合わせて、アンビバレントな感情を彫りの深い演技でじっくりと見せてくれる。

ストーリーが進むうちに、ギウやその妻の背景やヨンソンの生活が浮き彫りになっていって、韓国社会の矛盾にしっかりと向き合っている。

子役二人の演技が一貫していて素晴らしい。監督はこれが第1回作品のようだが、脚本から演出まで手がけた。後半、ややドラスティックすぎるかなと思えるところもあるが、長丁場を飽きさせずに見せてくれて満足。1944年生まれとあるが、他に作品が見当たらないのはどうしてか。