『ミナリ』スンジャが植えるミナリ(韓国のせり)の生命力の強さが、韓国移民のメタファーであるのはわかりやすいのだが、家族間の感情のやり取りを丁寧に掬い取っている点でとってもいい映画だと思った。

映画備忘録

次の日16日。再び南町田のグランベリーシネマ。この日はMさんと二人。いまさらだがこの日、43回目の結婚記念日。働いていたころ、16日は給料日だった。

 

前から気になっていた映画

『ミナリ』(2020年/115分/アメリカ/原題:Minari/監督:リー・アイザック・チョン/製作総指揮:スティーブン・ユァン ブラッド・ピット他/出演:スティーブン・ユァン ハン・イェリ ユン・ヨジョン/日本公開3月19日) 

 1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた家族映画。2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した。農業での成功を目指し、家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは不安を抱くが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだす。やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャも加わり、デビッドと奇妙な絆で結ばれていく。しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかり……。父ジェイコブを「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、母モニカを「海にかかる霧」のハン・イェリ、祖母スンジャを「ハウスメイド」のユン・ヨジョンが演じた。韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督・脚本を手がけた。第78回ゴールデングローブ賞では、アメリカ映画だが大半が韓国語のセリフであることから外国語映画賞にノミネートされ、受賞を果たす。第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など計6部門にノミネート。(映画ドットコムから)

 

1980年代のアメリカ、韓国出身の移民一家の物語だが、あちこちによくわからないところがある。とりわけ宗教について。韓国はキリスト教が多数を占めるが、一家はアーカンソーの教会に通うが、ジェイコブ、モニカ、スンジャそれぞれにかかわりの違いがあり、何かすっきりしないものがあるのだが、私のレベルの知識ではよくわからない。

ジェイコブの農業を手伝い励ますポールの存在が気になる。日曜日になると十字架を背負って歩くのだが、どこか宗教的な寓話風。ミナリ(韓国のせり)を植えるところで出てくる蛇の存在も気にかかる。蛇は何かの比喩か。

スンジャが認知症を発症するシーン。男児デビッドは夜尿症が治らないが、ある日スンジャに抱かれて眠る。朝、目が覚めると布団が濡れている。このシーン、はじめはデビッドが自分の寝小便をスンジャのせいにしているかと思ったが、スンジャがこの後様子が変わっていくのを見るとスンジャの粗相ということになる。

ポールとスンジャに対して、ジェイコブは微妙な感情をもっているのだが、それがこの映画に深みを与えていると思った。

特にドラスティックな事件が起きるわけではない。

残っているのは、スンジャとデビッドのかかわり。韓国文化をどんどん持ち込むスンジャに対して、違和感を覚えながら親密さを感じていくデビッド。心臓の病を抱えているデビッドはどこかこましゃくれているのだが、それに対するスンジャのストレートな韓国のおばあさんの振る舞いが小気味いい。花札のシーンは見もの。いくつものエピソードがどれも味わいのあるものだ。動きのあるスンジャの演技が光る。スンジャとデビッドの映画として見ていいと思った。

スンジャが植えるミナリの生命力の強さが、韓国移民のメタファーであるのはわかりやすいのだが、家族間の感情のやり取りを丁寧に掬い取っている点でとってもいい映画だと思った。

 

こういう映画もいい。アカデミー賞6部門ノミネートというのは驚くが。

ジェイコブ役のスティーブン・ユァンは、『バーニング劇場版』(2019年)に出ていたが、映画が面白くなかった。妻役のハン・イェリは印象が強い。『海にかかる霧』(2015年)での演技が印象的。特にラストシーン。強さと弱さ。ユン・ヨジョンは『ハウスメイド』(2011年)で味のあるメイド頭?の役を演じていた。このときもうまいと思った。

 

 

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