『鳩の撃退法』タイトルと予告編を見て映画館に足を運んだ。この映画、シネコンで上映するというのは大英断だったろう。タイトルの妙と気合の入った予告編、そして藤原竜也や土屋太鳳の人気を当て込んだのだろうが、客席に多かった若い人たちはこの映画どう見たのだろう。もしかして「分かっていない」のは私だけだったりして。

明け方、雨が降ったようだ。境川河畔は湿気が強かった。

パソコンの前に坐ったとたん外からセミの声。もうセミは鳴かないね、と話したのは昨日の散歩だったか。初秋にはまだ気が早い。

 

『日没』を読んだことは書いた。ずいぶん話題になった本、しかし期待はずれだった。

続けて『緑の毒』(文庫 2014年)と『夜の谷を行く』(文庫 2020年)を読んだ。『緑の毒』のほうは桐野夏生らしいエッジの効いた小説。そこそこ。『夜の谷を行く』は連合赤軍事件で有罪となって服役した架空の60代半ばの女性西田啓子の日常が丁寧に描かれていた。文章が桐野独特のグサグサ刺さってくるようなものでなく、感情のひだをきめ細かく追っている。登場人物は少ないが、会話が良い。事件から40年経って現れるかつての「同志」たち。再び事件に向き合わざるをえなくなる西田。ラストのサプライズは別として、連赤への視点としては新鮮。弁護士の大谷恭子の「解説」もよい。ただ、この題材ならさらに倍の分量でもよいのにと思った。

 

このところシネコンづいている。

10日、グランベリーパーク109シネマで。

『鳩の撃退法』(2021年製作/119分/G/日本/原作:佐藤正午/監督:タカハタ秀太/脚本:タカハタ秀太 藤井清美/出演:藤原竜也 土屋太鳳 風間俊介 西野七瀬 豊川悦司ほか/公開2021年8月27日)

 

タイトルと予告編を見て映画館に足を運んだ。

映画は予告編からあまり逸脱してほしくないが、そうは言っても予告編の役割は私のような客をスクリーンの前まで連れて来ることなのだから、洞察力甘く引っかかる方が悪い。

 

「この男が書いた小説(ウソ)を見破れるか?」という惹句は本編にはあまりかかわりがない。この作家は、若い編集者とともにどろなわで小説を書いているに過ぎない。

 

はじめこそ、なんだ?何だ?と思わせるが、あとは何が何だかとっ散らかってしまってまとまらず終わってしまったという感じ。題材的には芝居の方がいいのかもしれない。

あちこちに思わせぶりな比喩と布石が仕組まれているようにみえるが、解けない。もつれたまま。映画のリズムはあるのに中身がない。脚本はそこそこ愉しめる。藤原竜也にからむ役者陣もすばらしい。上に書いた人のほかにミッキー・カーチス 岩松了 濱田岳 リリー・フランキー・・・。みなうまい。とくに西野七瀬。藤原とのやり取りは非凡だと思う。乃木坂46のメンバーだった人だそうだ。アイドルには才能のある人が多い。

ということで、この映画、シネコンで上映するというのは大英断だったろう。タイトルの妙と気合の入った予告編、そして藤原竜也や土屋太鳳の人気を当て込んだのだろうが、客席に多かった若い人たちはこの映画どう見たのだろう。もしかして「分かっていない」のは私だけだったりして。

気になるので原作を購入。

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