『虎狼の血LEVEL2』・・・鈴木亮平、迫真の演技。しかしヤクザ映画そのものにリアリティなし。井筒監督の『無頼』ほどではないが、感情の奥行きが描かれず、途中で飽きてしまった。

9月も半ばに入った。また蒸し暑さが戻ってきた。

とはいえ、夏の間咲き続けた百日紅タチアオイは鮮やかさを失い、境川の土手には曼殊沙華が目立つようになった。

4羽の子カモと母ガモは相変わらず元気に動き回っている。日々見かけるが、5羽がそろっていないことはまずない。鉄壁のチームワークである。活動範囲も広がっている。

昨日の朝も、いつも回遊している鶴間小学校あたりから300㍍も上流に移動。

体つきはもう母カモとひけをとらない大きさに。くちばしのオレンジ色と尾羽の中の白い部分がどちらもあと少し鮮やかに発色すれば、成鳥である。こうして観察していると、カモは産まれて2~3か月で一人前になるのだろうか。

4羽が飛ぶところをみてみたいもの。

 

映画備忘録。

9月8日、グランベリーシネマ。

『虎狼の血LEVEL2』(2021年製作/139分/R15+/日本/原作:柚月裕子/監督:白石和彌・脚本:池上純也/出演:松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎 西野七瀬 中村梅雀 中村獅童 斎藤工 滝藤賢一/公開2021年8月20日

白石和彌監督の作品はかなり見ているつもりだが、いつもちょっとがっかりさせられることが多い。よかったのは『凶悪』(2013年)『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)。出来不出来がはっきりしているというか、ずいぶん傾向の違うものをつくる人という印象がある。『人よ』『凪待ち』はそこそこ、『止められるか、おれたちを』『サニー32』『日本で一番悪いやつら』はちょっと・・・。前回の『虎狼の血』は悪くなかったのだが、今回の2は・・・。

 

 

原作は柚月裕子となっているが、映画はオリジナルストーリーのようだ。80年代の広島と呉を中心としたヤクザの離合集散の時代、抗争は鳴りを潜め組織同士がバランスをとって共存しようという、そこに刑務所から出てくる上林(鈴木亮平)が抗争の中で死んでしまった親分に義理を果たすため、「バランス」を徹底して破壊していくというのが物語の軸。

この上林の暴力が常軌を逸している。ストーリーとしては親の虐待がその理由になっているが…。所謂サイコパス。刑務所で自分を抑え込んだ刑務官の妹を、出所後すぐに訪れ目をくりぬき強姦するというすさまじさ。かえってそこまでやられるとみる方としては鼻白んでしまう。

また、こうした上林のやり方に既存の組織がまったく抵抗できないのがおかしい。経済ヤクザに成り下がって、というのが理由なのだろうが、たった一人のムショ帰りと数人のヤクザに大きな組織が動揺させられるのが不自然。会長とその女を犬の檻に監禁したり、話し合いの途中に容赦なく銃で撃ち殺してしまう、しまいには姐さんまでも射殺する。ただただ残酷。やりすぎるとリアリティがなくなる。上林の物語だけが浮き上がってしまっている。ところがそうは言っても鈴木亮平の狂気ともいえる演技の迫力はなかなかのもの。『人よ』(2020年)で気の弱い長男を演じたが、今回は度肝を抜かれた。だからこそ、

上林のストーリーそのものを地についたものにしてほしかった。

一方、このヤクザ同士の「バランス」を仕組んだのが『虎狼の血』で新米刑事だった日岡松坂桃李)。先輩刑事の大上(役所広司・・・狼?)亡き後、若き日岡が暗躍して組織間のバランスをつくりだしたことになっているが、リアリティなし。そんな若い刑事がベンツに乗って・・・。

松坂もそこその暴力的な演技をするのだが、ちょっとした瞬間に素の松坂が出てしまうときがある。前作の日岡がこんなふうに変貌するのがそもそも無理がある。

こうした物語の背景に県警の腐敗があるのだが、これも新鮮味なし。

公安出身というヒラ刑事の梅雀が松坂と捜査のチームを組むのだが、実は県警幹部の手先として日岡を陥れようと・・・。

梅雀がじつは・・・・、というネタバレは置くとしても、どうもストーリーを追っても面白くない。いろいろ入り組んではいるのだが、登場する人間の感情の奥行きがないのだ。正直途中で飽きてしまった。

良かったのは、チンタ役の村上虹郎瀬々敬久監督の『楽園』(2019年)でみた時も引っ掛かり気味の癖のある演技で印象が強かった。今回もチンピラの役に深みがあってよかった。

もう一人西村七瀬。次の日に見た『鳩の撃退法』でも光っていたが、この映画でも存在感があった。『一度死んでみた』のチョイ役で印象に残った人。

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鈴木亮平村上虹郎

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西村七瀬と松坂桃李