wowowで放送された『前科者 新米保護司・阿川佳代』第1話~6話を、アマゾンプライムビデオで見た。
原作は、ビッグコミックオリジナルの連載で読んでいた。
原作の阿川佳代の印象は、有村架純が演じる阿川とはかなり違っていて、ドラマのほうは脚色が強いと思ったが、6編を見続けているうちにひきこまれた。
もちろん原作の阿川佳代自身もなかなかあり得ない設定だった。
実際、保護司という仕事が、コンビニでバイトで働く20代の若者に任されることがあるのかどうか。法務省のHPを見ると保護司の要件は、
・人格及び行動について、社会的信望を有すること
・職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること
・生活が安定していること
・健康で活動力を有していること
とあるからなれないこともなさそうだが、実際にはある程度社会経験の豊富な高齢者が就いているケースが多い。
クラスの生徒が、少年院や施設などの施設から戻ったときに、保護司の方にお世話になることが何度かあった。その時にお会いした方は、みなかなり高齢の方ばかりだった。給与の出ない非常勤の国家公務員という資格とコンビニで働く20代の若者という際立った設定が発想の妙。
この物語の面白さは、保護司自身の抱えている問題と対象者の問題が交差するところにある。社会的経験の少ない保護司が、重い経歴をかかえた対象者に向き合う純粋かつ未熟なところが、物語を面白くしている。教師経験の少ない若い教員が、問題生徒に徒手空拳で向き合うのによく似ている。相手が前科をもつという点ではかなり違うが。
南岳彦の脚本がかなりいいと思う。6話がそれぞれ1話で完結していながら、登場人物が重なり、連作となっている。阿川佳代だけでなく、他の人物にも連続性があり、変化がある。
もうひとつは、役者陣の充実と岸善幸の演出の巧みさだ。
阿川佳代を演じる有村架純は、まっすぐ対象者に向き合うが、どこか抜けたところがある。母親はなくなっており、祖父が残した家に住んでいる。父親は大学の教員。彼女自身が欠落した部分をもっているところが物語の深みにつながっている。
対象者である3人
石川静河が演じる斎藤みどり、石川二朗役の大東俊介、田村多実子役の古川琴音。3人が3人とも二重性をもった陰のある彫りの深い演技、とりわけ石川、古川の演技は出色。大東もミステリアスでいい味を出している。
ここに、コンビニ店長の宇野祥平や保護観察所の係官の北村有起哉、そして特筆したいのが斎藤みどりの母親役の秋山菜津子。いろいろなドラマや映画で見たことのある人だが、演技の間や動きが何と言えず、一つひとつ理にかなっている。
ヒューマンドラマというのが売り言葉だが、もう少し重みのあるそして見ごたえのあるドラマになっている。
1月末封切りの映画版では、木村多江や若葉竜也、森田剛、リリーフランキーなどが加わるようだ。それはそれで楽しみだが、古川琴音と秋山菜津子が欠けるのが残念。