ふたりだけの納涼映画会に「糸」を選択。いつだったか孫のR君が4歳のころ、「菅田将暉が好き」というので、菅田将暉はこんな幼児まで引き込んでしまうのかと驚いていたら、菅田将暉は仮面ライダーをやっていたということだった。今では、仮面ライダーが若い男優たちのこの世界での登竜門になっているのだとか。

f:id:keisuke42001:20200831160713j:plain

あるがままのアート展から


 

真夏の備忘録の続き、あと少し

 

8月28日(金)

夕方、グランベリーパークシネマで納涼映画会をしようということに。

ふたりでまずグランベリーパークのカット屋さんに行き、それからシネマへ。ちょうどよく予告編他もカット。ぎりぎりの時間で着席。

  

封切りから1週間が経った

「糸」(2020年/130分/日本/監督:瀬々敬久/脚本:林民夫/出演:菅田将暉 小松菜奈 榮倉奈々 長嶋敏行 成田凌 斎藤工

 

いつも気にしている映画のブログに菅田将暉のセリフのない時の表情がいいとあった。

わたしたちが小さかったころ、歌謡曲のタイトルがそのまま映画になったり、映画の主題歌がヒットしたり。

最近、そういうのは少ない?

よくわからないけれど、「糸」は、中島みゆきらしいひねりも何もないストレートな愛の歌。結婚披露宴の定番曲なのだそうだ。

「うちの娘たちも「糸」を披露宴の曲に入れてたよ」とMさん。

そうだったのか。覚えていない‥‥。

youtubeで娘の披露宴で「糸」を熱唱するお父さんというのがあったけれど。

 

監督は瀬々敬久。『64』 『友の罪』 などを見たが、雰囲気はあるのに芯のようなものが今一つ見えてこないという点が共通した不満。

はたして、それほど重く深く描く必要のない歌謡曲映画はどんなふうに料理するのか。

菅田将暉を起用して、ベタなラブストーリーということは、まさかないだろうと、少し期待。

 

平成という枠組みでものを見るという発想は自分にはないが、平成生まれの人たちの31年

という枠組みでつくられた映画。

いろいろなものをぶち込んで、かといってどれひとつシリアスに突っ込むこともなく、さらっと若者群像を軽快に描いたという点、そしてそれがちっとも飽きもさせず最後まで見せられたという点で、「けっこう面白かったね」が感想。

 

 

それにしても菅田将暉はうまい、いい。

いつだったか孫のR君が4歳のころ、「菅田将暉が好き」というので、菅田将暉はこんな幼児まで引き込んでしまうのかと驚いていたら、菅田将暉は仮面ライダーをやっていたということだった。今では、仮面ライダーが若い男優たちのこの世界での登竜門になっているのだとか(R君の母親、つまり私のところの長女によると、福士蒼汰、佐藤健、竹内涼真、オダギリジョー、吉沢亮、瀬戸康史、桐山蓮など皆仮面ライダーだそうだ)。

 

菅田将暉は、どこにでもいる少しイカれたお兄ちゃんの表情も自然だし、かといって求心的に何かに向かっていく表情も併せ持っている。薄っぺらくないのだ。自然な奥行きのようなものがあるように見える。

わざとらしい目線の強さ(今風に言うとめぢから?)もないし、カラダもどちらかと言えば貧弱。それなのに惹きつけられる、なんというか不思議な存在感?のようなものがある。

 

映画全体にも言えるのだけど、変な「湿度」を感じさせないのがいい。それこそ今風なのか。

 

ヒロインである小松菜奈は、「湿度を感じさせない」のではなく、あっけらかんとし過ぎで、もう少し暗さがあってもいいのではと思った。菅田将暉とがっぷり四つ、というわけにはいかなかった。

脚本のせいもあるのかもしれない。

中学生のころ、母親の彼氏から長い間虐待を受けていた小松が、菅田将暉と好き合って二人で逃げ、つかまり…そのうちの東京に出てキャバクラで働いているうちにITバブルで設けた若き経営者斎藤工の彼女となり大学に入り、リーマンショックでコケた斎藤が置いていったお金をもってシンガポールに行き、ネイルサロンに勤めているうちにネイルショップを起業、大成功をおさめるが、共同経営の山本美月にお金をだまし取られ…。沖縄には行くは、北海道には帰ってくるわ。

アジアを飛び回っているエネルギッシュなお姉さんぶり。

その中に9・11や3・11が挟み込まれ…。

 

子ども食堂なども出てきて、「平成という時代」をなぞったストーリーなのだろうが、安易と言えば安易、小松は暗くなどなっているヒマもなく、 どちらかと言えば虐待の傷など感じさせないくらい健康で前向きな女性として描かれている。母親に対する「謝ってほしい」という感情は取って付けたようにしか感じられない。

 

演技という点では、榮倉奈々がメリハリがあって良かった。

 

映画はたしかに「糸」に合わせたすれ違いや惹かれ合いが描かれているが、劇中、榮倉や成田凌が歌う「ファイト!」がしみじみとしてよかった。

 

こじゃれたセリフもあちこちにあり、いいなあと思うところもいくつもあった。泣かせる映画なのだろう。実際、となりのとなり(コロナ対策で一つ空き)に坐っていた女性も号泣気味であった。

宣伝惹句ふうに言えば、老若男女が楽しめる「全世代型ラブストーリー」といったところか。

ポスターが還流ドラマ風なのは、そのせいか。

 

ただどうしても気になったのは、菅田将暉が映画の中で2回、美瑛から函館までクルマで走るシーン。

割と簡単に着いてしまう。休憩や食事をしているふうでもない。

 

美瑛と函館はかなり距離があるはずと思って調べてみたら、ナビタイムで430キロ6時間半。

映画やドラマでは、設定の都合上、距離感が実際とは違うことがよくあるが、これはいただけなかった。北海道をナメてはいけない。

それともう一つ。美瑛のチーズ工場が舞台なのに、誰も北海道弁を話さないのはどうしたわけ。平成時代はもうみんな標準語になっちゃってか。沖縄のシーンは門柱墓で親戚が集まり宴を開き、歌い踊るのに、北海道は東京と同じ都会になっちゃったってわけさ。これも北海道をナメてるんじゃないのか(笑)。

 

 でも、酷暑の夏のふたりの納涼映画会としては、十分に楽しめた映画だった。

 

下のyoutubeは飢えの予告編とそっくりだが、こっちはmusic video

 

 

 

ちなみに朝日新聞の週間ランキングでは1位。