『ファースト カウ』など2024年2月の映画寸評⓵

年が変わってから映画館によく足を運んでいる。

2024年2月の映画寸評⓵

<自分なりのめやす>

ぜひお勧めしたい ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

みる価値あり   ⭐️⭐️⭐️⭐️

時間があれば   ⭐️⭐️⭐️

無理しなくても  ⭐️⭐️

後悔するかも   ⭐️

 

(8)『いま、ダンスをするのは誰だ?』(2022年/日本/114分/原作・監督:古新

   舜/出演:樋口了一/2023年10月7日公開 ⭐️  ジャック&ベテイ 2月1日

2009年にパーキンソン病と診断されたシンガーソングライターの樋口了一が主演を務めたドラマ。40代で若年性パーキンソン病と診断された主人公がダンスを通じて自身の生き方を見つめ直していく姿を描く。

家庭を顧みず、仕事一筋で生きてきた功⼀は、ある日若年性パーキンソン病と診断される。妻とはすれ違いが続き、娘とも仲が悪かった功一は、その事実を受け入れることができず、職場でも仲間が離れていき、ひとりで孤独を抱えてしまう。そんな中、功一はパーキンソン病のコミュニティ「PD SMILE」に通い始める。コミュニティで本音を話せる友人ができた功一は、人とのふれあいの大切さを痛感し、不仲だった娘ともダンスを通じて関係が改善されていく。

樋口が主人公・功一を演じるほか、杉本彩塩谷瞬、IZAM、渋谷哲平、吉満寛人、新井康弘らが脇を固める。監督は「あまのがわ」「ノー・ヴォイス」の古新舜。

                          (映画.com)

 

パーキンソンを患う役者樋口了一が主演を務める。映画制作までの経緯は毎日新聞に大きくとりあげられたものを読んだ。たやすい道のりでなかったことがよくわかった。しかし残念だが、完成度の低い映画となってしまった。

ストーリーに込めた想いは理解できるが、脚本をはじめ映画をつくる技量が不十分。ストーリー展開がありきたりで、設定がいかにもつくりものめいている。役者の演技にキレがないし、観衆を惹きつけるものが希薄だ。主人公の周囲の人々の病に対する理解についても掘り下げ方が浅かったと思う。病気に対する偏見は根深いものがあるし、家庭問題にあっても離婚や親子関係の描き方が浅薄。一つひとつのエピソード、シーンの必然性が感じられない。ここにしか入らないピースの選択が甘いと思った。

ただ、パーキンソン病を取り上げたことは大きな意義があるし、「I am パーキンソン病」ではなく「  I have パーキンソン病」だというメッセージは響いた。

 

(9)『朝が来るとむなしくなる』(2022年/日本/76分/脚本・監督:石橋夕歩/

   出演/唐田えりか 芋生悠/2023年12月1日公開 ⭐️⭐️⭐️⭐️ジャック&ベテイ

   2月1日

寝ても覚めても」の唐田えりかと「ソワレ」の芋生悠が共演し、人生に諦めを感じていた女性が、同級生との再会をきっかけに自分らしさを取り戻していく様子を描いた再生の物語。初長編作「左様なら」で注目された新鋭・石橋夕帆監督の長編第2作。

会社を辞め、コンビニでアルバイトとして働く24歳の希。バイト先でもなかなかなじめず、実家の親にも退社したことをいまだ伝えられないまま、今日もむなしい思いで朝を迎える。そんなある日、中学時代のクラスメイトだった加奈子がバイト先にやってくる。最初はぎこちなく振る舞う希だったが、何度か顔を合わせるうちに、加奈子と距離を縮めていく。加奈子との偶然の再会が、希の日常を少しずつ動かし始めて……。

石橋監督が当て書きしたという唐田えりかが主人公の希を演じ、「左様なら」に続いて石橋監督とのタッグとなる芋生悠が加奈子に扮した。(映画.com)

 

取り立てて何にも起きない若い女性の日常の微妙な生きがたさを、二人の女優を通じて伝わってくる。期待しないでみにいったが、面白かった。こういう映画・ありだなと納得。脚本を書いて演出した石橋夕歩監督のセンスのよさ、東出昌大との不倫で話題となった唐田の自然な演技、それから芋生悠という個性的な女優の絡みがが面白かった。二人の距離の近づき方の妙。セリフがよく練られていて自然、現実の若い女性がどんなふうに話しているか知らないが、すっと入ってくる。

芋生はドラマ『SHAT  UP』や映画『夜明けのすべて』にも出ているが、この映画がいちばんよかった。石橋監督のタッグの前作『左様なら』をみてみたい。

いつものことだが、男女問わず、若い役者がどんどん出て来ている。老人はなかなか追いついていけない。画像10

 

(10)『ファースト カウ』(2022年/アメリカ/122分/:First Cow監督:ケ

   リ ー・ライカート/出演:ジョン・マガロ オリオン・リー/2023年12月22

   日公開)⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ kiki 2月5日

 

「オールド・ジョイ」「ウェンディ&ルーシー」などの作品で知られ、アメリカのインディペンデント映画界で高く評価されるケリー・ライカート監督が、西部開拓時代のアメリカで成功を夢みる2人の男の友情を、アメリカの原風景を切り取った美しい映像と心地よい音楽にのせて描いたヒューマンドラマ。

西部開拓時代のオレゴン州アメリカンドリームを求めて未開の地へ移住した料理人クッキーと中国人移民キング・ルーは意気投合し、ある大胆な計画を思いつく。それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である牛からミルクを盗み、ドーナツをつくって一獲千金を狙うというビジネスだった。

クッキー役に「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のジョン・マガロ。これまでライカート監督作の脚本を多く手がけてきたジョナサン・レイモンドが2004年に発表した小説「The Half-Life」を原作に、ライカート監督と原作者レイモンドが脚本を手がけた。2020年・第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。

 

アメリカの原風景を切り取った美しい映像と心地よい音楽にのせて描いたヒューマンドラマ」とはとても思えない深みのあるしぶい映画。くわからないが、圧倒される映画というのがあるが、これがそれだ。全く妥協の感じられない、一つひとつのシーンが丁寧に磨き込まれているといった印象。見る側は少ないセリフから想像力を膨らますしかないのだが、それが至福、映画に「包まれる」のだ。不思議な魅力の映画だ。

 

(11)『ノセボ』(2022年/アイルランド・イギリス・フィリピン・アメリカ合作/

   97分/原題Nocebo 監督:ロルカン・フィネガン/出演:エバ・グリーン マ

   ーク・ストロング/2023年12月29日公開 ⭐️⭐️⭐️⭐️ kiki 2月7日

ビバリウム」のロルカン・フィネガン監督が、幸せの絶頂にいた家族が恐ろしい怪異に見舞われる姿を独特の世界観で描いたホラー。

ファッションデザイナーのクリスティーンは、夫フェリックスや幼い娘ボブスと共にダブリン郊外で順風満帆な生活を送っていた。ある日の仕事中、彼女はダニに寄生された犬の幻影に襲われる。8カ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣や記憶喪失、幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされていた。そんなクリスティーンの前に、彼女を助けに来たというフィリピン人の乳母ダイアナが訪ねてくる。雇った覚えのないダイアナを不審に思うクリスティーンだったが、ダイアナは伝統的な民間療法で彼女の不調を取り除き信頼を得る。クリスティーンは次第に民間療法にのめり込んでいくが、それは想像を絶する恐怖の始まりだった。

 

ホラーはあまり好んで見ないが、気になった映画。合作の国々の取り合わせの妙。一人の有能なデザイナーの身体に取り付いたノセボ(ダニ)を追い出すために、フィリピン人メイドが除霊するのだが。背景には、アジアの低賃金の労働力を駆使して成功を夢みる西欧のデザイナーと、抑圧されこども奪われたアジアの若年女性労働者の怨念のぶつかり合い。幻覚の映像が寓意に満ちていて惹きつけられる。子役もいい。エバ・グリーンの演技はみもの。

ホラーというが、心理劇といった方がいいかもしれない。

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