『素晴らしき世界』役所広司のまともさが少し邪魔。『彼女は夢で踊る』エンドロールの加藤雅也のダンスがぐっときた。

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朝の境川河畔、カモが三羽、カエルのような声を発しながら飛んでいた。初めて聴いた声。

 

映画の備忘録

2月15日、グランベリーシネマで。

『素晴らしき世界』(2021年/126分/日本/監督・脚本:西川美和/原作:佐木隆三/出演:役所広司・仲野太賀・六角精児/2021年2月11日公開)

 

『ゆれる』『長い言い訳』の西川監督が佐木隆三の『身分帳』をもとに脚本を書いた作品。

 

・・・舞台を原作から約35年後の現代に置き換え、人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描く。殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司らの助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田とやり手のプロデューサーの吉澤が近づいてくる。彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていたが……。(映画ドットコムから)

 

最後まで飽きさせずしっかり見せられる映画ではある。しかし・・・。

役所広司の存在感は圧倒的なのだが、彼の視線も含め地のまっすぐぶりが、13年の刑期を終えて出てきた男の暗さのようなものを覆い隠ししまう。演出、演技としてはそういうものを出そうと苦労しているように見えるが、時に癇癪を起して暴力をふるったり刺青を出したりしても、どこか崩れきれないまっすぐさが見えてしまう。「いい人間」を描こうとしているわけではないのだし、素性の良さはちょっと邪魔だ。

心臓病や糖尿を抱えているのに走ったり、サッカーしたり、自転車に乗ったり。最後は心筋梗塞で亡くなるのだが、映画的にはいいかもしれないが、リアリテイという点では気になる点がいくつも。

コンビニ店主の六角精児が深みのあるいい演技。

梶芽衣子が三上のアパートの部屋での歓迎会で歌う「見上げてごらん夜の星を」は沁みた。最近人気の仲野太賀もいい。

 

悪い出来とは思わないが、もっと三上の内面の複雑さ、わからなさに迫るところがあってもいいと思った。

 

2月18日 本厚木 厚木の映画館kikiで

『彼女は夢で踊る』(2019年/95分/日本/監督・脚本:時川英之/出演:加藤雅也/2020年10月23日公開)

 

実在した広島のストリップ劇場広島第一劇場が舞台。閉館する!と言っては客を集め、営業を続けるため閉館サギなどなどと呼ばれている劇場。映画も閉館が決まったところから始まる。

 

映画のつくりは簡単。加藤雅也が若かった頃、なぜか劇場主となっていく過程と何十年か経た現在、閉館を前にうつうつと過ごす時間を行ったり来たりする。若かったころに付き合った踊り子がそのまま現在にも出てきて・・・。

 

ストリップはかつての生々しく激しかったものではなく、踊りを中心とした穏健なもの。今はそうなっているのでだろうか。

ストリップ劇場自体がなくなっているからわからないが。

横浜には日ノ出町駅前の日ノ出劇場だけが健在。かつては野毛、仲木戸、横浜、黄金町、鶴見には2軒あった。ほとんどが京浜急行線沿線。

 

劇場主の淡い青春夢物語を幻想的に描いた映画、こちらが年を取ったのか、それほど面白さは感じなかった。ふむふむという感じか。

よかったのはエンドロールで加藤雅也が劇場の回る舞台のうえでダンスを踊るシーン。ストリップの照明の中でよくわからないダンスを踊る加藤。バックに流れる歌がとってもいい。調べてもよくわからないが。

 

教員になったすぐ、誘われてストリップに行った。確か4人だった。若者3人と年配の先生。

誘ってくれた年配の先生は、後ろのほうでつまらなそうに見ていた。

 

世の中や人間が単純にはできていないことに少し気がついたころのことだ。