四季の森公園・旭ベーカリー・『ハマのドン』

不順な天候が続いていたが、ようやく五月晴れが続くようになった。

たまには森林浴でもと、緑区の四季の森公園へ行くことに。

連休中にも一度試みた。市内は空いているだろうという予想は外れ、保土ケ谷バイパス上川井出口がズーラシアへ向かうクルマで大渋滞。途中で諦め帰ってきた。

公園の前に今宿東町の旭ベーカリーというパン屋さんへ。連休の時にも寄ったのだが、定休日だった。59歳になる卒業生の兄夫妻がやっているパン屋さん、卒業生LINEで話題に上るので寄ってみることに。

お店は開いてはいたのだが、ショーケースの中にパンはほとんどない。人気店ということで早々と売り切れてしまうようだ。カレーパンにあんぱん、そして食パンを買って四季の森公園へ。

無料の駐車場。日陰に停める。

地図の右側を30分ほど散策。

途中のベンチでパンとお茶。ウグイスの啼き声がひっきりなしに聴こえてくる。よく響いて気持ちがいい。市内にいるとは思えない独特の無音。地方都市に行った時に感じる無音さ。

清水の谷、田んぼ方面へ。近くの小学校3校が作る田んぼがあるが、この時期、田植えの準備が全くできていない。コロナ期間は放置だったのだろう。最後は152段の階段を上って散歩終了。

起伏が多いのが難点だが、空気の清浄さはこの上なし。日陰に吹く風も心地よい。こういう季節は短い。すぐに暑くなる。

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映画備忘録

5月15日(月)

『ハマのドン』(2023年/日本/100分/監督:松原文枝/公開2023年5月5日)

 

カジノ誘致問題に揺れた2021年の横浜市長選で反対派の急先鋒に立った政治家・藤木幸夫を追ったドキュメンタリー。テレビ朝日が製作した2022年2月放送のドキュメンタリー番組を劇場版として公開。

2019年8月、「ハマのドン」と呼ばれる91歳の政治家・藤木幸夫が、横浜港へのカジノ誘致阻止に向けて立ちあがった。地元政財界に顔が効き、歴代総理経験者や自民党幹部との人脈も持つ保守の重鎮が、政権中枢に対して全面対決の姿勢を示したのだ。決戦の場となった横浜市長選で藤木は、住民投票条例の署名を法定数の3倍も集めた市民の力にすべてを懸けた。

裏の権力者とされてきた藤木が市民と手を取りあい、カジノ誘致を覆すまでの軌跡を追う。テレビ朝日報道ステーション」のプロデューサーを務めた松原文枝が監督を務めた。リリー・フランキーがナレーションを担当。

いつも閑散としているkikiだが、半分ほど座席が埋まっている、高齢者がほとんどだが、関心が高いようだ。

ナレーションはリリー・フランキー。彼の声音には独特の聴く者を引き込むような物語性がある。

その効果もあって、これはドキュメンタリー映画というより、藤木幸夫一代記といった風情の、いわば藤木幸夫物語。

藤木の懐深くに入りこんで撮り続けた映像は、90歳を超える横浜の港湾界のドン藤木幸夫という人物の日の当たる部分を痛快に描いてみせた。

横浜IR誘致という国を挙げた政治的なアクションを向こうに回し、藤木が市民とともに白紙に戻した2021年夏の横浜市長選がその舞台だ。

官邸や自民党県連が推す対抗馬の小此木八郎、林現市長、そして藤木と立民が推す新人山中候補の三つ巴の選挙。

本来ならば、菅首相や官邸、自民党は林現市長を担いでIR推進で選挙をすべきところ、

菅側近の小此木八郎が「IR撤回」を掲げ突然の出馬。IR推進は林現市長だけに。梯子外しと言われた。

小此木と自民党の変節が何に拠るものなのか、正直なところよくわからない選挙であった。市民の中にはIR撤回とは言っても、いずれまた出してくるのではないかという疑心暗鬼、自民党への不信感が、小此木には向けられた。

一方林現市長に対しては、2017年の選挙を「IRは白紙」で闘ったにも関わらず、「推進」に歩を進めたのは裏切りと見られた。林は何度も「白紙とは言ったが、やらないとはひとことも言っていない」と繰り返したが、受け入れられなかった。

第三極の山中は、全くの新人、知名度もない。しかし非自民党、非IRという点で無党派層の支持を集めた。そこに藤木が加わり、「港で博打はやらせない」というわかりやすいスローガンが支持を集めた。

物語は、ハマのドンと無党派市民層が手を握り、IRを撤回させたということになるのだが、それほど単純なものではないだろう。

「オレと菅のケンカなんだよ」と藤木はいうが、菅は小此木彦三郎のところで育てられ、八郎は彦三郎の息子。藤木と彦三郎は盟友、その菅と八郎とケンカするために、藤木は山中についた。これがわからない。

元々自民党県連の重鎮である藤木は、八郎が「IR撤回」ならば、八郎を応援して自分の意を体現すればいいのだが、最後まで立民が推す山中を応援した。形の上では、国と自民党V.S .藤木・立民・市民運動ということになったし、ハマのドンという何やら恐ろしげな巨魁が柔和な笑顔で「自民党をぶっ潰す」ような挙に出たことが、選挙の妙味を引き出した。

私が想像するのは、どこか裏での調整が不調に終わったのではないかということ。  八郎が市長選に出ることは、それまでの流れから行ってあまりに唐突。当選8回のベテランで菅の側近という立場からすれば、国政で今後要職を占めるのは見えているのに何ゆえ横浜市長選に出るのか?それも落選したら政治の世界から身を引くとまで八朗は言った。

このあり得ない選択、ウルトラC級の調整が功を奏さなかった。どこかで順序を間違えたか、藤木は臍を曲げてしまった。誰も鈴はつけられない。そうなると江田憲司などの立民の国会議員、花上などの市会議員が藤木を持ち上げるという不思議な構造が出来上がり、その上に乗っかった山中は難なく市長の椅子を得ることに。政治的な駆け引きが失敗に終わった結果、山中が漁夫の利を得たということではないか。

ほとんど表には出てこないが、自民党県連内部、支持母体である横浜財界にはかなりのしこりが残っているはずだ。市会議員も林についた議員もいれば八郎についた議員もいる。自民党は3分裂したことになる。

組織論からすれば、藤木は除名ものだと思うが、藤木の人脈からすればそうもできない。林派からすれば、突然の八郎の出馬が選挙をダメにした、指導部の責任はと詰め寄ったと思うが、総じて、混乱の大きな原因となった高齢のドンには早くお引き取り願いたいというのが、自民党県連内部の本音なのではないか。

難しいように見えて、政治もまたつまらないプライドや損得勘定のやり取りであって、

映画にはその辺りの生臭い部分には全く手をつけなかった。だから藤木幸夫一代記なのだ。