『猿楽町で会いましょう』本編がまだ影も形もなかった時にできた受賞「予告編」のほうが、出来上がった「本編」よりずっと面白い。 「本編」は、受賞「予告編」とは全く違う通俗的な作品になってしまった。猿楽町も何の必然性もない。

映画備忘録。

あしたは映画へ行こうと考えて眠るのだが、朝になって朝刊で感染状況を見ると怯んでしまう。そんなことを数日繰り返して、このままではらちが明かないと出かけたのが24日。

あつぎのえいがかんkikiは、火曜日はポイントが2倍に。4本見ると1回がタダになる。

 

『猿楽町で会いましょう』(2019年製作/122分/R15+/日本/監督:児山隆/脚本:児山隆・渋谷悠/出演:金子大地 石川瑠華/公開2021年6月)

予告編が二つある。

一つは第2回「未完成映画予告編大賞」でグランプリを受賞した作品。

下は、グランプリ受賞のご褒美「製作費3000万円相当+賞金100万円」によってつくられた本編の予告編。

 

 

 

 

面白い企画があるものだ。本編がないのに「予告編」をつくる。その予告編をもとに「本編」をつくる。

 

出来上がってみたら、本編がまだ影も形もなかった時にできた受賞「予告編」のほうが、出来上がった「本編」よりずっと面白い。

「本編」は、受賞「予告編」とは全く違う通俗的な作品になってしまった。猿楽町も何の必然性もない。

 

何より、受賞「予告編」は、石川瑠華演じるユカが主役。次々とうそを繰り出すユカの中に広がる深くて暗そうな背景が映画の軸となっているのに対して、「本編」では金子大地が演じる小山田の純粋な苦悩がテーマ。ユカはそのための道具に成り下がっている。

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本編のユカのウソは、その辺に転がっているありがちなウソ、男でも女でもこの程度のウソをつく人間はよくいるし、この程度では関係は破綻しそうでしない。子どもには悪いが、子どもじみている。それに女性の場合は女性性を背景にしている分「これだから女はこわい」的な男性の女性蔑視が底にあって、通俗を下支えしている。

受賞「予告編」のユカは、見えない部分をもった謎のウソつき女。たった2分半ほどに後先かまわずひたすらにうそをつき続けるシュールさ、ほの暗さがある。

『本気のしるし 』(2020年)という映画があった。やはりうそがテーマだった。でもン外だけでつまらない映画だった。

ウソは、テーマとしては普遍性がある。

受賞「予告編」をもとにしたウソの映画が見たかった。

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