『仕事を辞めたい ~職場で自分を守る最善の選択』(岡崎勝)人間は時に「怠惰」でもよいのではないでしょうか。いつもいつも仕事に一生懸命になる必要はないのです。「勤勉」と「怠惰」は対立させるものではなく、バランスをとって使い分けるものだとボクは思っています。

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ジャパンマシニスト社『「岡崎勝シリーズ」③』(2021年7月25日本体1600円+税)

 

 

誰が読む本?

これは「辞めたい本人」はもとより、「仕事を辞めたい」なんて考えてもいない家族や友人、同僚が読んだほうがいい本だ。もちろん直属の管理職だって読んだほうがいい。

読んでみて感じるところがあれば、いままでより少しだけゆったりと仕事に向きあえるのではないか。そして「辞めたい」と思った時、あたふたせずに選択ができると思う。

 

全編、岡崎節全開。眉間のしわをゆるめて・・・。

 

Ⅰ 休むか、やめるか、続けるか「迷い」と「選択」に役立つ8つのQ&A

 Q&A形式で「学校での働き方・あるある」がどんどん語られる。そして具体的な対 応策が明確に語られる。

 

少しだけ紹介してみる。

Q1 仕事のしんどさ、「我慢」していいのはどこまで?

答えは 「我慢できる期限(日数)」を決めておく。

 

「我慢」のレベルを具体的に。

第1段階・・・軽い「不調」を感じたとき

まず「具体的な短時間休養対応」をする。合理的な生活世界

から離脱して、無為な時間を過ごすこと。

「できません」ということが大事。

「いつも「元気ですぅ~」と見栄やプライドで言ってしまう人もいますが、それは避けたほうがいい。それはいつか墓穴を掘ることになる。

 

第2段階・・・身体の「動きにくさ」を感じたら

「動けない」時は無理をしないのが原則。

「同じ「痛み」や「辛さ」でも、快癒に向かっているときと、悪化しているときの区別はつくでしょう」

「「何とか動けている」ことは「倒れる」ことの前段ですから、その状態をすぐにシャットアウトしてください」

 

第3段階・・・「がんばる自分」と「がんばれない自分」が戦い始めたら

「・・・精神的に「うつ状態」になったり、キレやすくなったり、ふだんの自分と違うと感じたときは要注意です。「がんばる自分」と「がんばれない自分」が戦い始めたら重症だと思ったほうがいいでしょう。

 

「我慢できる日数」は人によってちがいます。最長でも7日までにしてください。それ以上は命の問題となり、危険領域です。」

 

 

こんなQ&Aが8つ続いたあとに、

『児童精神神経科医・石川憲彦さんに聞く』

石川さんは「うつ」とは何かとして3つに分類しています。

(1)古典的「うつ病

(2)「そううつ病双極性障害)」

(3)「新型うつ病」など(気分が落ち込んで。「うつ病」と似たさまざまな

   状態が出てくる)

 

それぞれ詳細に。さいごに薬の使い方についてもアドバイスがある。これは重要。

 

Ⅱベテラン教員・岡崎勝が教える仕事への向き合い方と対人関係

 岡崎さんの労働観と人間観がよく見えるところだ。

 

まとめの部分

 

人間は時に「怠惰」でもよいのではないでしょうか。いつもいつも仕事に一生懸命になる必要はないのです。「勤勉」と「怠惰」は対立させるものではなく、バランスをとって使い分けるものだとボクは思っています。(略)とはいえ「怠惰」の市民権はなかなか得られません。でも、「怠惰の権利」というのは重要なことです。(略)「勤勉」と「怠惰」も同じです。勤勉になろうと一生懸命働いたことで、要領の悪い同僚が居づらくなったり、よけいない仕事が増えたりすることはよくあるでしょう。怠惰のようにゆっくりのんびりやっても、結局何とかなるということもあります。

ネットが普及し、コンピュータが行き渡ることで、仕事は減ったでしょうか?(略)・・オンライン授業が増えれば、きっとよけいに子どもたちは学習に追い立てられるようになるでしょう。

仕事がいやになったら、それは「働き方を見直すチャンス」だと思うことが一番前向きなのです。過剰な仕事でうつになったら、問われるべきは本人ではなく「過剰な仕事」なのです。(略)

現代社会は何でも合理性や効率性、または年収で人間の生き方の良し悪しをはかろうとします。しかし、にんげんは、そんなちっぽけな存在ではありません。自由は危険が伴いますが、自由を捨てたら人間(生き物)らしく生きられないと思うのです。

 

 

 

内容のほとんどのことは学校、教員に限らない問題。仕事への向き合い方が精神論に陥っておらず、具体的な対応策が語られているところがいいところ。はしばしに岡崎さんの人生が見えてくる。