『ホールドオーバース 置いてけぼりのホリディ』アメリカ映画の王道、ユーモアとセンチメンタルの融合。日本未公開の『アメリカンフィクション』もいい。共にアカデミー賞主演男優賞にノミネート。

2024年8月の映画寸評②

<自分なりのめやす>

お勧めしたい   ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

みる価値あり   ⭐️⭐️⭐️⭐️

時間があれば    ⭐️⭐️⭐️

無理しなくても  ⭐️⭐️

後悔するかも   ⭐️

 

(59)『ホールドオーバース 置いてけぼりのホリディ』(2023年製作/133分/PG12/アメリカ/原題:The Holdovers/脚本:デビッド・ヘミングソン/監督:アレクサンダー・ペイン/出演:ポール・ジアマッティ ダバイン・ジョイ・ランドルフ ドミニク・セッサ/日本公開:2024年6月21日)

                 kiki 8月7日 ⭐️⭐️⭐️⭐️

 

物語の舞台は、1970年代のマサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校。生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている教師ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役を務めることに。そんなポールと、母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになった学生アンガス、寄宿舎の食堂の料理長として学生たちの面倒を見る一方で、自分の息子をベトナム戦争で亡くしたメアリーという、それぞれ立場も異なり、一見すると共通点のない3人が、2週間のクリスマス休暇を疑似家族のように過ごすことになる。
ポール・ジアマッティが教師ポール役を務め、メアリー役を「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」「ラスティン ワシントンの『あの日』を作った男」のダバイン・ジョイ・ランドルフ、アンガス役を新人のドミニク・セッサが担当。脚本はテレビシリーズ「23号室の小悪魔」「ママと恋に落ちるまで」などに携わってきたデビッド・ヘミングソン。第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞編集賞の5部門にノミネートされ、ダバイン・ジョイ・ランドルフ助演女優賞を受賞した。

 

96回アカデミー賞5部門のノミネート。ダバイン・ジョイ・ランドルフ助演女優賞を受賞したというが、ポール・ジアマッティも男優賞にノミネートされていた。

同じ96回アカデミー賞脚本賞を受賞した『アメリカンフィクション』は、日本では公開されておらず、アマプラで配信されている(なんと無料)のを見たが、こちらも5部門ノミネートで脚色賞受賞。こっちの主演ジェフリー・ライトも主演男優賞にノミネートされている。しかし、主演男優賞を受賞したのは『オッペンハイマー』のキリアン・マーフィー。納得・・・かホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

『ホールドオーバーズ』『アメリカンフィクション』の2作、舞台は1970年代と現代と別物だが、アメリカ映画の王道のようなユーモアとセンチメンタルが融合した素晴らしい映画。前者は間に料理長のメアリーを置いて、アンガスとポールが化学反応を起こしながら、3人が繋がっていく。それぞれが喪失や欠落をうちに抱いていて、否定や反発を繰り返しながら変化していく様に引き込まれた。

アメリカンフィクション』も十分に⭐️⭐️⭐️⭐️。日の目を見ない黒人作家の悲哀をまさにユーモアとセンチメンタルで描いている。なぜ日本の映画館で公開されないのか。下世話な想像だが、主人公のモンクがゴーストで書いた小説が大変な反応で売り出されることになるのだが、大金を目の前にしながら最後の矜持?で企画を潰すためにモンクが提案したタイトルが「ファック」。出版社はそれでもこのタイトルで売り出すことに。日本公開取りやめはこのせいなのか?画像1