『アナザーラウンド』「青春とは? 夢である。愛とは? 夢のなかのものである」中年4人組が大量飲酒実験。コメディにもなっていないと思う。

映画備忘録。10月25日。

『アナザーラウンド』(2020年製作/115分/PG12/デンマーク/原題:Druk(デンマーク語で「大量飲酒」/監督:トマズ・ビンターベア/出演:マッツ・ミケルセン/日本公開:2021年9月3日)

冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、実験をすることに。朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり……。(映画ドットコムから)

 

2021年のアカデミー賞の外国映画賞受賞作。

評判の高い『コレクティブ 国家の嘘』『アイダよ、何処へ』(2作ともまだ見ていないが)それとこれぞ映画の王道『少年の君』の3作品を差し置いて受賞した作品。

どれほどのものかと楽しみにしていたのだが、正直がっかりした。

中年男性たちの友情?青春?

冒頭のキェルケゴールの言葉

「青春とは? 夢である。愛とは? 夢のなかのものである」

シビアな現実をコミカルな映画にしているのなら、この設定はわかるが、依存症になって自殺してしまう男まで出てしまっては。

発想があまりに単純。コメディにもなっていない。ひねりも感じられない。マッツ・ミケルセン、渋くて演技もうまく、エンディングの唐突なダンスもかなり上手だが、どうしてここで踊らなければならんのか。

いくつものエピソードも凡庸。

退屈した。

酒に対する感性がかなり違うのは確かだが。

 

監督は、この映画を撮っている最中に娘を交通事故で亡くしているのだとか。

それが映画に微妙に影を落としているように思えた。

 

 

わからないのは、なぜこの映画をアカデミー賞の審査委員が外国映画賞に選出したのか、だ。『ファーザー』『ミナリ』『ノマドランド』いずれも秀作だと思うが、それに並ぶのか?

いや『コレクティブ』や『アイダよ、何処へ』をノミネートしながらこれを選ぶ?

ノーベル賞がロシアの記者を選んだのとは事情がかなり違うようだ。

大量飲酒の実験映画は、世界の情勢にコミットしていないと思う。

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