ゴジラ1.0・・最後まで見てしまったのは、優れた特撮と伊福部昭をベースにした音楽の迫力のせいか

2024年4月の映画寸評④

<自分なりのめやす>

お勧めしたい   ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

みる価値あり   ⭐️⭐️⭐️⭐️

時間があれば    ⭐️⭐️⭐️

無理しなくても  ⭐️⭐️

後悔するかも   ⭐️

 

㊴『ゴジラ−1.0』(2023年/125分/日本/脚本・監督:山崎貴/出演:神木隆之介 浜辺美波 山田裕貴 吉岡秀隆 青木崇高 佐々木蔵之介ほか/劇場公開日:2023年11月3日) 4月19日 グランベリーシネマ ⭐️⭐️⭐️

日本が生んだ特撮怪獣映画の金字塔「ゴジラ」の生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズをはじめ「永遠の0」「寄生獣」など数々の話題作を生み出してきたヒットメーカーの山崎貴が監督・脚本・VFXを手がけた。

タイトルの「-1.0」の読みは「マイナスワン」。舞台は戦後の日本。戦争によって焦土と化し、なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく。

主演を神木隆之介、ヒロイン役を浜辺美波が務め、NHK連続テレビ小説「らんまん」でも夫婦役を演じて話題を集めた2人が共演。戦争から生還するも両親を失った主人公の敷島浩一を神木、焼け野原の戦後日本をひとり強く生きるなかで敷島と出会う大石典子を浜辺が演じる。そのほかのキャストに山田裕貴青木崇高吉岡秀隆安藤サクラ佐々木蔵之介ら。2023年12月にはアメリカでも公開され、全米歴代邦画実写作品の興行収入1位を記録するなど大ヒットを記録。第96回アカデミー賞では日本映画として初めて視覚効果賞を受賞するという快挙を達成した。第47回日本アカデミー賞でも最優秀作品賞ほか同年度最多8部門の最優秀賞を受賞した。

 

怪獣映画を初めて見たのは、何年も遅れて田舎の映画館にやってきた『空の大怪獣ラドン』(1956年)だった。父親兄2人と一緒に見たが、あの怖さは忘れられない。

本作も特撮でやや調子に乗りすぎているところはあるにしても、後半、伊福部昭のテーマがドンピシャで入って来たところでは、怖いというより少し鳥肌が立った。

しかし最後まで見てしまったのは、優れた特撮と伊福部昭をベースにした音楽の迫力のせいか。とにかく人間ドラマが薄っぺらい。演技も感情の入れ込みが強く、共感できない。パラシュートや浜辺美波が生き残っていたことなど、布石の回収もかなり早い時点で見えてしまった。

戦後、人々が何に怯え、何を希望としたのか。いったいゴジラとは何か、そうした歴史や思想の中の表象としてのゴジラをどう捉えるか。

南太平洋のマーシャル諸島での水爆実験から、突然変異で生まれたゴジラが、東京・皇居を目指すといった緊張感が全くなく、特攻から逃げかえった航空兵の個人的な物語・・・自分の弱さから果たせなかった特攻兵としての矜持を、ゴジラに向き合うことで乗り越えようとする・・・ズレてるし、ちょっと違うんじゃないかと思った。特攻の生き残りの人たちは、もっと思想的な深まりを持たざるを得なかったのではないか。人間ドラマも大迫力が欲しかった。