みても次々に忘れていく。中身はともかく?みたことだけでも記録しておかないと、何にも残らない。よかったのか、つまらなかったのか、これを読んでくださっている方に<自分なりのめやす>をお知らせすることにした。
2024年1月映画寸評②
<自分なりのめやす>
ぜひお勧めしたい ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
みる価値あり ⭐️⭐️⭐️⭐️
時間があれば ⭐️⭐️⭐️
無理しなくても ⭐️⭐️
後悔するかも ⭐️
(5)『PERFECT DAYS』(2024年/日本/124分/脚本/ジム・ベンダース、
高碕卓馬/監督:ジム・ベンダース/出演:役所広司 柄本時生/2024年12月22日
公開 )⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
(映画.com)
近くのグランベリーシネマ。
もう3週間以上経つが、ふところの中でこの映画の小さな火が燃えているような心持ちがある。
ストーリーを追わない。行為の理由を問わない。ただシーンを丁寧に重ねていく。すると、平山だけでなく、何人もの人物の背景がうっすらと見えてくる。しかしストーリーのディテールは気にならない。何人もの登場人物が呼吸をくりかえすように、わずかに変化していくものを、まるで木の成長を見るような気持ちで眺めている、そんな映画。
心地よい。小津がどうとかいうことはよくわからない。平山のセリフを抑制することで、他の人物がよく見えてくる。雄弁なのは音楽だ。60年70年代のアメリカンポップスが、映画を殊更に思念的にせず、心地よさを増している。
映画のピースの一つと忘れらないのは、平山が訪れるスナックのママ、石川さゆりが歌う浅川マキの「朝日のあたる家」。youtubeにも上がっているが、何度聞いてもゾクゾクする。とってつけたようなハメコミの不自然な音ではなく、スナックの中の空気が震えるように、歌に情がこもっていて響きも豊か。こちらがその場にいて聴いているような臨場感がある。録音技術の高さ。短いが音楽シーンとして秀逸。もちろん石川の演技もこれ以上ないほどの自然体。石川のすごさ、演出のすごさ。
ママの別れた夫、三浦友和と平山のやりとりもかなりいい。ここでも二人のストーリーは語られない。平山の屈託と三浦の諦念がシーンで語られる。柄本時生や、妹麻生祐未や姪っ子とのからみも同様だ。
久しぶりにいい映画をみた
(6)『枯葉』(2023年/フィンランド・ドイツ合作/81分/Kuolleet lehdet(枯
葉)/監督:アキ・カウリスマキ/出演:アルマ・ポウスティ ユッシ・バタネン
/2023年12月15日公開)⭐️⭐️⭐️⭐️
フィンランドの首都ヘルシンキ。理不尽な理由で失業したアンサと、酒に溺れながらも工事現場で働くホラッパは、カラオケバーで出会い、互いの名前も知らないままひかれ合う。しかし不運な偶然と過酷な現実が、2人をささやかな幸福から遠ざけてしまう。
(映画.com)
近作の『ル・アーブルの靴みがき』『希望のかなた』』しかみたことがないがこの監督は、あとをひく。この映画も同様。ダルデンヌ兄弟と双璧。
ロシア・ウクライナ戦争下のフィンランドの、若者とは言えない男女の労働者の生活をつぶさに見せてくれる。何か主張しているわけではないが、西欧諸国とも極東にいてこの戦争を見ている私たちとも、決定的に違うものがある。人が人を必要とするぎりぎりのところで、互いが手の中からスルッと抜けていってしまう空虚さ。
とことん主張を抑えて、これもまたシーンを重ねていくだけ。こういう映画はカウリスマキにしかつくれない。1957年生まれ
(7)『市子』(2023年/日本/126分/原作・脚本・監督:戸田彬弘/出演:杉咲
花 若葉竜也/2023年123月8日公開)⭐️⭐️
川辺市子は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則からプロポーズを受けるが、その翌日にこつ然と姿を消してしまう。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れ、彼女について信じがたい話を告げる。市子の行方を追う長谷川は、昔の友人や幼なじみ、高校時代の同級生など彼女と関わりのあった人々から話を聞くうちに、かつて市子が違う名前を名乗っていたことを知る。やがて長谷川は部屋の中で1枚の写真を発見し、その裏に書かれていた住所を訪れるが……。(映画.com)
過酷な境遇に翻弄されて生きてきた市子を杉咲が熱演し、彼女の行方を追う恋人・長谷川を「街の上で」「愛にイナズマ」の若葉竜也が演じる。(映画.com)
予告編が良かったので見にいったが、残念。役者はいいし、演技もいいのに。脚本が問題。アナがいくつもある。考えていくいるうちに次のシーンに。だからか冗長に感じられる。つくりながら先を考えているのか?完成度低い。素人考えだが、脚本を整理し、物語の結構をしっかりつくれば100分ほどの映画になっていいものになるのにと思った。
1月の配信 寸評
(1)『ラーゲリより愛をこめて』(2022年/日本/133分/監督:瀬々敬久・出演:
二宮和也 松坂桃李 2022年12月19日公開)⭐️⭐️⭐️⭐️
期待していなかったが、面白かった。時代考証がよかった。ただ翼竜者に流れる時間と戦後の日本の流れる時間のずれが今ひとつ伝わらなかった。北川景子のリアリテイのなさもあるが・・・。
(2)『ハードヒット発信制限』(2021年/韓国/94分/監督:キム・チャンジュ/
出演:チョ・ウジン/2022年2月25日公開)⭐️⭐️⭐️⭐️
アクションスリラー?クルマの座席下に仕掛けられた爆弾をめぐる攻防。この面白さは日本映画を超えている。
(3)『シャイロックの子どもたち』(2023年/日本/122分/原作:池井戸潤/監督
:元木克英/出演:阿部サダヲ 上戸彩/2023年2月17日 500円)⭐️⭐️⭐️
原作に及ばず。もっとミステリスなものにしていいのでは。阿部サダヲがあまり生きていない。
(4)『網に囚われた男』(2016年/韓国/112分/監督:キム・ギドク/出演:リュ
・スンボム イ・ウオングン/2017年1月7日公開)⭐️⭐️⭐️
豊かな民主主義国家を標榜する韓国、貧困の独裁国家北朝鮮、一人の人間を間に置いたとき、さほど違いはない。人間らしく生きようとすれば国家と対峙、あるいは逃亡しかない。キム・ギドク監督にしては抑制した表現。
(5)『夜、鳥たちが啼く』(2022年/日本/115分/原作:佐藤泰志/監督:城定
秀夫/出演:山田裕貴 松本まりか/2022年12月9日公開)⭐️⭐️
原作をなぞっただけ?完成度低い。面白くない。