8月の音のつれづれ・・・ イソヒヨドリ・ワカケホンセイインコ・長崎の鐘・夢のあとに・モーツァルトのクラリネット五重奏曲。

執拗な暑熱は治まる気配を見せない。連日、気温は35℃近辺をうろうろしている。

今日はもう9月2日。ずいぶん長い間、この暑熱の中にいるような気がする。日記には7月8日に就寝から明け方まで夜通しエアコンを使ったとある。それからエアコンを使わなかった日はない。

 

8月27日、境川川畔で、虫の音を今年初めて聞く。もちろんセミの鳴き声も一緒だが。

川面に出た瞬間、吹く風にひんやりしたものを感じる時がある。

このところ、イソヒヨドリがよく鳴く。決まった場所で数羽が飛びかう。

同じマンションに住む顔見知りの女性の方が通りがかり、「きれいな鳴き声ですね。

なんという鳥ですか?」と。

鳥の名前を訊かれたことも、答えられたのも初めてのこと。名前の言える鳥の数は10数羽にすぎない。

このところ、ワカケホンセイインコもよく見かける。こちらは見かけは鮮やかな緑の色合いだが、声はイマイチ。



 

声と言えば、月末の27日28日の日曜、月曜は、2日続けて2人で歌を歌いにいく。

27日の日曜日は、以前にも書いたが「るるるサロン」という福祉クラブ生協が主催する歌の会。

今回も友人のMKさん夫妻と一緒に出かけ、1時間強で16曲を歌った。

その中に古関裕而の曲が2曲。「長崎の鐘」「栄冠は君に輝く」。どちらもうろ覚えではあるが、なんとなく歌えてしまう。名曲だなと思いながら、どこか引っかかるものがある。

 

古関裕而といえば、軍歌や戦時歌謡の大家。戦時中は、哀愁を帯びたメロディーの歌謡曲や戦意を高揚するような明るい曲をたくさん作曲した。戦後、彼は筆を折ることなく、長崎の永井隆博士を訪ねて行き「長崎の鐘」を作曲したり、1964年の東京五輪の入場行進曲も作曲した。そして高校野球甲子園大会のテーマソング「栄冠は君に輝く」も。戦前戦後を通じて音楽界の王道を歩いてきた人。

 

一方に「海道東征」「海ゆかば」紀元二千六百年頌歌などを作曲したドイツロマン派の流れを汲む信時潔がいる。「海ゆかば」が学徒出陣に利用されたことを恥じて(ウィキペディアにはそう記述されているが)戦後は作曲活動を控えたと言われる。

 

古関は控えない。戦後もこだわりなく人々に愛される歌を作り続けた。NHK連続テレビ小説「エール」でも取り上げられた。

時流に合わせてなんでもつくる才能豊かな無節操な人、という風説は流れなかったのだろうか。

生涯5000曲を作曲したと言われる。私が在学した高校の校歌も古関の作曲。そんな人とは知らず、会津の自然と歴史を散りばめた明るい曲を、3年間、男声四部コーラスで歌い続けた。

今にして思うと、思想が曲を作るわけではないし、才能のある人間は時の権力に重用されるのは、ある意味致し方のないこと。食っていくためには・・・ということだ。「エール」では、自分の作った歌を歌いながら死んでいった兵士のことに思い至る古関の心情がわずかに取り上げられていたが、才能を持つしんどさは、凡人には計り知れないものがあるのだろう。

 

歌の伴奏は、ギター2本とピアノ、オカリナの4人の方が担当する。MCを務める方が、毎回歌にちなんだ本などを紹介するのだが、今回は「長崎の鐘」のところで、『ワタシゴト 14才のひろしま』『あなたがいたところ ワタシゴト 14才のひろしま』『いつものところで ワタシゴト 14才のひろしま』の3部作を紹介してくださった。

終了後に少しお話をしたのだが、この夏、中澤さんの本をかなりの冊数読まれたとのこと。本はピアノを担当するKさんからの紹介。Mさんの友人のKさんは私たちと同世代の広島県出身の方。奇しくも中澤さんとは全く同じ年齢。中学、高校時代を一緒に広島で過ごしたことになる。本がつなぐ人の繋がり、いいものだと思う。

 

もう一つ、28日の月曜日の歌は「優しいコーラス」。こちらは1時間半、声楽の先生の指導で楽譜を読みながらしっかりみっちりうたう。いつもは私たち2人なのだが、今回はもうお一人参加、3人に。

10曲ほども歌ったが、もっとも難曲だったのがフォーレの名曲「夢のあとに」。ピアノやチェロでもよく演奏されるが、私の世代ではテノールカミーユ・モラーヌやジェラール・スゼーがよく知られている。

今回は、これをフランス語で。しかし何度やってもズタボロ。名曲が迷曲になってしまった。

帰って久しぶりにスゼーを聴く。違う曲のようだ。

 

音と言えば、8月23日、フィリアホールで愉音のコンサートに2人で出かける。

19時からの第一部は、ヴァイオリン松本絋佳 ピアノ松本有理江 川島余里で

小品の中にプーランクシューマンソナタ。どちらも構成のしっかりした骨太の演奏。愉しめた。

第2部は、モーツァルトクラリネット五重奏曲。

クラリネット アレッサンドロ・ベヴェラリ 第一ヴァイオリン 松本絋佳 

第二ヴァイオリン近藤諒 ヴィオラ 松実健太 チェロ ドミトリー・フェイギン

何度も聴いている曲だが、目の前で生で演奏されると印象はかなり違う。

クラリネットアレッサンドロ・ベヴェラリは、イタリア生まれ。現在東京フィルハーモニー交響楽団の首席クラリネット奏者。洗足学園音大で指導も。

エスプレッソのようなクラリネットと言ったら怒られるだろうか。酒で言うなら淡麗辛口ではなく、芳醇馥郁といったところか。濃いクラリネットをチェロのフェイギンがしっかり下支えしているから、クラリネットが自由には羽を伸ばしている印象。ヴァイオリン2本とヴィオラはチームワークよくクラリネットに絡み、しっかりしたアンサンブルで曲の表情を明るくきわだたせていた。贅沢な五重奏曲の演奏。以前のブラームスクラリネット五重奏曲(第一ヴァイオリンは原田幸一郎、第二ヴァイオイリン松本絋佳、ビオラ長谷川弥生、チェロはドミトリー・フェイギン クラリネットはコハーン・イシュトバーン)に勝るとも劣らない演奏。満足、満足で帰途につく。

 

10人、東京タワー、テキストの画像のようです