ニューイヤーコンサート 岡本拓也と松本絋佳二人の若者が奏でる華麗な音楽

コンサートの備忘録。

1月8日、フィリアホールのリハーサル室でニューイヤーコンサート

午前中は「0歳からの愉しいコンサート」。子どもたちがたくさん集まったそうだ。

 

13時からアフタヌーンコンサート、こちらの方に伺う。今井茜(Pf.)・岩井亜咲(Pf.)・松本紘佳(Vn.)&岡本拓也(Gt ...

あざみ野でのクリスマスコンサートもご一緒したAさんご夫妻も来られる。2週間ぶり。

12月24日のコンサート終了後、あざみ野駅のカフェで、生ビール1杯、ワイン1杯だけの小さな忘年会をした。3〜40分、4人での楽しいおしゃべり。

次の日、奥さんのほうが発熱されたそうだ。陽性。旦那さんは症状はなかったものの陽性だったとのこと。お二人で私たちのことを心配してくださっていたようだが、私たちには全く影響がなかった。

お二人とも軽症かつ無症状だったのは、5回目のワクチンの効果だったのかもしれないとのこと。

 

さて、フィリアホールの練習室。大ホールは今年4月あたりまで改修工事。天井の改修をしているらしい。ミューザの例もある。ここはミューザよりずっと古い。

練習室といってもいすが7〜80は並ぶ。今回は感染対策で間隔をとっているため50席ほど。練習室のため音はかなりデッド。

 

今日はギターとヴァイオイリンのデュオ。

MCは、ギターの岡本拓也。以前にも一度聴いたことがある。30歳前後だろうか。

雰囲気のある静かで穏やかな語り口。やわらかい声で歌にも合いそう。

 

1曲目はプログラムにない「グノーのアベマリア」。元々はバッハの平均律クラヴィーア曲集、人気曲。

普段は歌われたり、ピアノとヴァイオリンの二重奏で演奏されることが多いが、今日はギター。

反響の少ない会場なのに、ギターは、大きな反響用の箱をもっているようなものだから、まるでアンプを仕込んでいるように柔らかく響く。思わずうなる。

そこに松本絋佳のヴァイオリンが重なる。使い古された言い方だが、まさに妙なる調べ。

続いて2曲、ギターのソロ。

1曲目はアジャラアメリ組曲。ナルシソ・イエペスが好んだスタンダード。2曲目はギターといえばこの曲、タレガの「アルハンブラの思い出」。

ナマで聴いたのはいつ以来だろうか。驚異のトレモロ。行ったことのないアルハンブラ宮殿をゆっくりと歩いている感覚。

MさんとAさん夫妻は、秋に長津田のホールで村治奏一の同じ曲の演奏を聴いている。これもよかったそうだ。

 

4曲目は、アストル・ピアソラの「タンゴの歴史」。

ピアソラは、売春宿や酒場の酔漢の気晴らしにすぎなかったタンゴを、新しい音楽に変貌させたと言われるが、その変遷の歴史を描いた曲。

 

1売春宿(酒場)1900

2カフェ    1930

3ナイトクラブ 1960

4現代のコンサート 

 

の4楽章構成のうち、

本日は、1、2、3を演奏。フルートとギターのためにつくられた曲だが、今日はヴァイオリンで。初めて聴く曲。

よくわからないが、酒場のいかがわしげな雰囲気から、現代曲を思わせるところまで

変な言い方だが、二人ともまるでジャズかロックを演奏しているようなグルーヴ感があった。

 

最後の曲。

テレビでしか見たことがないが、ウイーンのニューイヤーコンサートで必ず演奏される「ヨハン・シュトラウスの美しき青きドナウ」。

編曲は徳備康純。この人の曲を松本が初演したのを聴いたことがある。

ギターとヴァイオリンがここでも、闊達にワルツを繰り広げる。

リズム感の乏しい私でもなんとも言えず乗せられてしまう軽妙かつ華麗な演奏。楽しかった。

 

そしてアンコール。

モンティ(1868-1922)の「チャルダッシュ(チャールダーシュ)」

ヴィオリンの超絶技巧を聴かせる曲。モンティはこの曲1曲で世界に名を残した。

チャルダッシュは「酒場風」といった意味のハンガリー音楽の一つ。19世紀にはウイーンを中心に大流行。宮廷は禁止令を出すほどだったという。随所にロマの雰囲気を強く感じさせる。

いつもはソロで聴かせるところを今日はギターと。

寸分の乱れもなく華麗に二人の若者が聴かせた。堪能。

 

岡本は、昨2022年カウンターテナーの中嶋俊晴と『武満徹SONGS』をリリース。

これはyoutubeで聴けるので貼り付けておく。素晴らしい演奏だ。武満の傑作「SONGS」は藤木大地も歌っているが、カウンターテナーがよく合う。伴奏はピアノより武満が好きだったギターの方が合うような気がする。

そう言えばペーターシュライヤーにもギター伴奏の『美しき水車小屋の娘』があった。よく聴いた。ギターとテナーの相性は抜群にいい。 

 

一方、松本は、このところイタリアのクレモナに何度か出かけているとインスタグラムにあった。

プログラムを見てその理由がわかった。

昨年、クレモナのシュタウファーアカデミー主催の「コンサートマスターアーティストディプロマコースの選抜に合格したそうだ。今年10月まで計10回、受講費免除で世界の一流コンサートマスターよりアドヴァイスを受けるとのこと。

クリスマスコンサートのヴィヴァルディの「弾き振り」は、その片鱗を見せてくれたということだ。

今後の二人の若者の活躍に期待したい。

2022年12月24日、あざみ野アートフォーラム クリスマスコンサート