『TAR ター』頂点を極めた者の落魄の物語。常人では考えられない音に対する敏感さを、映像は信じられないほどの丁寧さで撮り続けているが、それがそのままターの精神世界の異様さを表している。壊れていくターの精神のひだのひとつ一つを見事に捉えた稀有な映画。

毎日、スッキリしない日が続いている。夜中に降って明け方は上がっていることが多いのは助かるのだが、梅雨時だけになかなか安定しない。

境川の水辺の鳥たちは、天気に関わらず元気に飛び回っている。

カワセミの動きが激しい。オスが餌を咥えて低空を飛んでメスのところへ向かっていく。昨年目撃した求愛給餌だ。慌てているのか、潜っても餌が取れずに潜水を繰り返すオスの姿も。

カワウが1羽、片羽を怪我したのか、岩の上に悄然と佇む姿を気にかけている犬の散歩の女性。そのうち人が集まり、羽を乾かしているのでは?とかさまざまな憶測が飛び交う。常に食欲旺盛で水の中でも活発に動き回るカワウにしては珍しいこと。

今日もスッポンを見る。この間はかなり大きかったが、今日はそこそこの大きさ。Mさんの見立てだと1万円ぐらい?だとか。お店で出るのにちょうど良い頃合い。

それから今日は今までにない動物を目撃。10数年散歩をしていて初めてアオダイショウをみる。それも遊歩道に横たわるように長々と。長さ1m20㎝ほど。向こうが驚いたのか、スルスルと川の方へ降りていった。

 

映画備忘録。

6月分が終わらない。もう1ヶ月にもなるだろうか。

『TAR  ター 』(2022年/アメリカ/158分/原題:Tar/脚本・監督:トッド・フィールド/出演:ケイト・ブランシェットほか/日本公開:2023年5月12日)

 

イン・ザ・ベッドルーム」「リトル・チルドレン」のトッド・フィールド監督が16年ぶりに手がけた長編作品で、ケイト・ブランシェットを主演に、天才的な才能を持った女性指揮者の苦悩を描いたドラマ。

ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター。天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラー交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。

アビエイター」「ブルージャスミン」でアカデミー賞を2度受賞しているケイト・ブランシェットが主人公リディア・ターを熱演。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ブランシェットが「アイム・ノット・ゼア」に続き自身2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、ブランシェットにとってはゴールデングローブ賞通算4度目の受賞となった第95回アカデミー賞では作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門でノミネート。(映画.comから)

冒頭のシーンは、ターの出自にまつわる音楽の世界。そしてそれに続いて、ターが語る音楽の世界観のインタビュー。まるでドキュメンタリーのような始まり。

ベルリンフィルのスター指揮者ターの物語。とにかくつくりもの感がない。学生に限らず先輩の音楽家や実際の演奏家と話す(確かに話しているように見える)内容に全く妥協がなく、観客が分かろうがわかるまいが関係なく議論が展開していく。

この本編映像でも、バッハを弾きながら、時にグレングールド風に弾いてみたり、演奏シーンの撮り方のうまさもあるが、とにかく本格的な演奏に見える(実際にサントラ版はベルリンフィルに擬したドレスデン交響楽団ケイト・ブランシェットが指揮した録音が使われているとか)画像3

誰にでもわかるように・・・ということを考えずに撮りたいように撮っている。では、天才指揮者の物語かというとそうではない。頂点を極めたものの落魄の物語。私生活も才能も全てが次第に壊れている過程を、それこそこれでもかと執拗に撮り続けている。

常人では考えられない音に対する敏感さを、映像は信じられないほどの丁寧さで撮り続けているが、それがそのままターの精神世界の異様さを表している。壊れていくターの精神のひだのひとつ一つを撮ろうとしている。

正直、凡人の私は途中辟易してしまった。もういいよ、という感じ。でも、それを凌ぐ映像の持つ力に最後まで引きずられてしまったというのが正直なところ。

凡人の希望としては、もう少し演奏シーンを長く見せてほしかった。

間違いなく二度見、三度見の映画。見逃しているシーンがたぶんいくつもある。

クラシック音楽映画というと、日本では、近年では「蜂蜜と遠雷」があるが、比較の対象にならない。画像6