『空気殺人』 ユン・ギョンホがよかった。『最強殺し屋伝説国岡完全版』フェイクドキュメンタリー?もっと笑わせてほしかった。

映画備忘録。9月にみた映画3本。

 

『最強殺し屋伝説 国岡 完全版』(2021年製作/93分/G/日本/監督:坂元裕吾/出演:伊能昌幸他/公開:2021年10月8日)

「ベイビーわるきゅーれ」「黄龍の村」など、バイオレンス、アクション、ホラージャンルの作品で注目を集める阪元裕吾監督が、あるひとりの殺し屋の日常や仕事の様子を描いたフェイクドキュメンタリー。「ベイビーわるきゅーれ」のシナリオ作りに励んでいた阪本監督は、「関西殺し屋協会」なる殺し屋ビジネスネットワークの存在を知り、協会の紹介で京都最強と呼ばれるフリー契約の殺し屋・国岡昌幸と出会う。国岡の密着取材で彼と行動をともにする阪元監督は、友人や恋人と過ごす国岡のプライベートや、仕事として殺人の依頼を受け、淡々と対象人物を殺めていく姿を包み隠さずカメラに捉えていく。そんな阪本監督の熱心な密着取材が続く中で、殺し屋と依頼元との連絡ミスが良からぬ事態へと転じていく一幕があった。そのトラブルはやがて肥大化し、国岡は大殺戮を繰り広げることとなる。

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黄龍の村』もそうだったが、文化祭の出し物の映画をみんなでワイワイ言いながら作っているような空気感。こういう映画が商業映画としてつくられて、そこそこ見る人がいるというのはいいことなのか?

フェイクドキュメンタリーという形容矛盾がそのまま映画になっていてばかばかしいのだが、もっと笑わせてほしかった。

冒頭で、担任の先生がうざいので殺してほしいと殺人依頼をした小学生の女の子が、母親と一緒に国岡のところに来て「取り消したい」。国岡は「依頼通りやってしまった」。母親は「ほら、先生死んじゃったじゃない。アンタどうすんの?」と娘に言いながら国岡に「本気で頼んだんじゃないからお金を返してほしい」。国岡は「返せない。契約通り仕事をした。これではもうらちが明かない、裁判するしかない」と裁判に訴える。結末の方で、国岡は「勝訴」ののぼりをもって裁判所から出てくる。

 この一連のくだりは笑えた。

あとは、正直退屈だった。

 

『空気殺人』(2022年製作/108分/G/韓国/原題:Air Murder/監督:チョ・ヨンサン/出演:キム・サンギョン イ・ソンビン ユン・ギョンホ他/日本公開:2022年9月23日)

解説

殺人の追憶」のキム・サンギョンが主演を務め、韓国で実際に起きた加湿器殺菌剤事件を題材に描いた社会派ドラマ。

大学病院の救命救急室で働く医師テフン。ある日、彼の息子ミヌが、意識を失った状態で病院に運び込まれる。診察の結果、ミヌは肺が硬くなる急性間質性肺炎であることが判明。さらに、テフンの妻ギルジュも同じ病気で突然亡くなってしまう。不審に思い調査を始めたテフンと義妹ヨンジュは、病気の原因が家庭で日常的に使用していた加湿器用の殺菌剤にあることを突き止める。販売元の世界的企業オーツー社は、自社製品に有害化学物質が含まれていることを隠したまま、17年間も販売を続けてきたのだ。テフンをはじめ多くの被害者たちは、真実を明らかにするべくオーツー社に立ち向かうが……。

社会派ドラマには違いないが、一番の見どころはユン・ギョンホが演じる殺菌剤製造会社の裏仕事を担うウシクの演技。この人は『チャサンオボ』に出演とあるが、全く印象にない。しかし、この映画では二つのキャラクターをものの見事に演じて切った。主役のキム・サンギョンを食っている。

 

実際に起きた事件をベースにしているとはいえ、そこは韓国映画。そこそこの娯楽作品に仕上がっている。裁判シーンも面白い。ただ、ユン・ギョンホの演技はいいのだが、ストーリーとしてやや無理はある。無理はあるのに引っ張り込まれる魅力を感じるのは

日本の映画には感じられない、はやりの言葉でいえば熱量の高さということだろうか。

ただ封切りから1週間、ほとんどバイヤーが関心を示さず、公開が広がらなかったのはなぜか。それほど忌避されるほどの駄作とは思われないが。