暁闇のひとり刃傷沙汰

週の初めにはエアコンを使っていたが、この週末は使っていない。

朝の気温が今朝も25℃ぐらい。つけたまま寝る扇風機も、毎晩のように深夜に止める。境川河畔のセミは相変わらず元気に鳴いているが、虫の音がそれに重なる。季節が少しずつ移っていくようだ。さまざまな色の百日紅の花も、そろそろ色落ちしてきたように感じる。サルスベリ

この時期になると、5、6月の日の長い時期が恋しくなる。

早起きだから、部屋から朝日が昇るのが感じられるのがいい。

今は真っ暗だ。深夜2時を過ぎると、遠くにバイクが行き来する音が聞こえる。新聞配達の人たちだけが街を行き交う時間。

音を立てないようにマンションの廊下を歩いて各戸に新聞を配る気配が伝わって来る。

 

小さな傷はよくあるが、久しぶりにグサッとやってしまった。

31日の暁闇、蓮根の端っこを切ろうとしていた。右手に持った包丁が蓮根の硬さに耐えきれず方向を失い、左手の中指を突き刺さった。

けっこうな出血。心疾患のための血液サラサラの薬を飲んでいるせいもあるのかもしれないが、なかなかとまらない。傷は横にだが、そこそこ深い。

夜明け前の”一人刃傷沙汰”に起こされてしまったMさん、「これは縫ってもらったほうがいいかもしれないね」と判断、救急で診てもらえる近くの病院に電話をしてくれた。「今日は外科のドクターもいないし、血が止まっているなら診療時間に来てください」とのこと。

 

今日の予定は、本厚木で映画を観た後、平塚に住む同級生のSさんとの昼呑み。

断りのメールを入れる。

 

 

受付はまず8時までに玄関前に並ぶのだそうだ。

クルマで5分ほどの病院。7時45分到着。

玄関前には7〜8人の人たちが並んでいる。

けんけんで歩いている女子高生を連れた母親らしき人、初めてのことで心配げに、「ここで並んでいていいんですよね」と話しかけてくる。さっきまで、学校に遅刻する旨の電話をしているのが聞こえた。部活で怪我をしたようだ。雰囲気はバスケットボール部

「私も最近来ていないので・・・」

娘は県立高校名が入ったトレーナー。背中にはアルファベットで名前が入っている。

こういうのが気になる。個人情報が露出している。

 

8時になると職員の女性2人が出てきて検温と消毒、番号のついたファイルを順に配る。

7番!早いぞ、これはと思ったのだが、この当ては後々外れることになる。

 

待合室の椅子に坐って、番号が呼ばれるのを待つ。

8時30分、職員が増えて窓口が開く。ファイルの番号を呼ばれ保険証を出して、初診の人は問診票に必要事項を記入、それで診察科目が決まり、移動。

 

病院ごとにさまざまな手順、システムがある。診察科目が決まっても次の待合のスペースは科目ごとにはなっていない。小規模の病院のせいか診察の受付は一箇所に。ここにファイルを出しても、10いくつも並んでいる診察室の前には外科とか整形外科の表示がないので、どこから呼ばれるのかはわからない。

診察開始は9時。

いろいろな科目がある中、総合?順位7番だから、いくらなんでも外科の3番くらいには入っているだろうと踏むも、声はかからない。

エアコンがかなり効いていて寒い。半袖の人が多いが、寒そうにしている人はあまりいない。

呼ばれない。寒い。トイレ。

9時30分、小柄な女性の看護師「傷を見せてください」。

ようやく来たかと勇躍覆っていたガーゼをはいで傷を見せると、思いもかけない反応。

「これは縫うかもしれないね。診察の合間に処置することになるから、ちょっと時間がかかるかも」と言って、ガーゼを渡される。テープも「はい」と。自分でやれ、か。コロナのせいだろう。レジで何もしないセブンの店員さんのようだ。

 

なんのための順番か。ハラが立つが、看護師は次の人の問診に入っている。

 

診察室に呼ばれたのは10時40分、外に並んでから3時間近く。

アナウンスが聞こえにくく、何番の診察室かわからない。

外科なら外科と大きく書いておけよ、と声を出さずに毒づく。

 

ドクターは若い男性。となりに件の看護師。

傷を丹念に消毒する。「どうしようかなあ」と声に出して考えている。縫うか縫わないか、境界線の傷のようだ。

「サラサラの薬飲んでるんですよね」と確認したあと、「縫うと治りも遅くなるからキズパワーパッドがいいかもしれない」。

カットバンの高性能のものらしい。瘡蓋を作らずに傷を治すらしい。初耳。

「それって、ここで処方してもらえるのですか」

「いえ、薬局で買ってください」。

治療の方法を指示しながら、薬剤は自分で買え、か。

なんだかなあと思っていると、ドクターは、薄い透き通ったセロファンのような

ものを何重にも傷の上に巻き付ける。空気が入らないようにしているようだ。

 

「はい、ではこれで」。5分はかかっていない、3分か。

「これ、あげます。さっきのあまり」と看護師が袋に入ったガーゼをくれる。

 

ガーゼよりも”傷パワーパッド”というのが欲しいんだけど。

 

最初の受付に戻り会計を待つ。

朝あった高校生の親子も、私のあとにきた。

彼女だって順番は8番。どうも腑に落ちない。

 

会計は1040円。初診料、消毒、セロファン、ガーゼ+待ち時間、3割負担だから合計医療費は3000円を超える。そんなにかかるものなのだろうか。

寒い中待たされ、簡単に放り出されたせいか、毒を吐きたくなる。

傷パワーパッド、Amazonで売っている。10枚760円。使用方法、注意事項が詳細。

これは医薬品だと思う。途中用足しに出かけていたMさんを少し待ったが、帰宅したのはお昼前。

件の女子高校生は車椅子に乗り、タクシーで帰っていった。

お互いとんだ半日仕事に。