空腹の5時間病院滞在記

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3月15日境川河畔の桜のつぼみ


先週の12日に入院、次の日に退院した。

大船駅近くの湘南鎌倉総合病院。自宅から遠く離れた縁もゆかりもない病院だが、初来院は5日の金曜日。2週続けて来院。そして月末にも3度目の来院、2度目の入院の予定である。

 

この5年ほどかかりつけ医となっているPクリニックは隣の駅、東海道線藤沢駅近くにある。

 

ここのI先生には、大変お世話になっている。毎月、血液検査をするのだが、そのわずかな貧血の数字の変化と、私の個人情報から胃の内視鏡検査をⅠ医師が勧めてくれたのが、2年前の5月。

 

検査で異常が見つかり、大学病院で精密検査。結果「早期胃がんの疑い」ありということになり、7月に入院、手術。事なきを得たのだった。

 

毎月一度の診察は、Mさんと二人で診察室に入り、時には1時間近くおしゃべりをしながらの診察。

数値の読み方、病歴、個人情報の判断が、今までにかかったドクターとはかなり違う。

戦略的というか、I  先生からは、長期にわたって問題のある所をつぶしていこうという姿勢と熱意をいつも感じる。

 

ここ1、2年は、私の病歴や生活習慣、家族歴などから心臓疾患を疑い、半年ごとに2回の外部でのCT撮影を指示された。

 

いよいよ機が熟したと考えたのか、この1月、近隣では最も精細なCTの機器をもつくだんの病院を紹介された。

 

そして先週、1時間半ほどもかけて出かけ、受診したのだ。

 

4階まで吹き抜けのロビーは驚くほど広い。椅子はベンチではなくすべて簡易なソファ。一つ空きになっているが、かなりの患者が坐れるようになっている。

たくさんの人が出入りしているが、吹き抜けているせいかそれほどの喧騒は感じない。

新患受付窓口の前に立ったのが11時。待たされるのだろうなと思っていたら、40分後に心電図検査。

 

しかし、ここからが長かった。循環器科の待合で1時間半。時間は13時を過ぎる。1階にはローソンやドトールが入っているが、ウェイテイングがかかっているため動けない。

どのくらい待つかあらかじめわかっていれば覚悟もできるが、初めてのところに向かうときは長く感じられるのと同様、忘れられているのではないかと思うほどだった。

 

循環器科の診察担当医師はこの日6人ほど。

呼ばれたのは年配の男性のS医師。あとで分かったことだが、このS医師、この病院のトップの人物。病院のトップはふつう院長と呼ばれるが、ここは独特。その呼び名は「総長」。

あとあと、ネットで検索するとこのドクター、循環器学会の長嶋茂雄のような人なんだとか。

さまざまな論文を書き、術式を作り出し、後進を育て・・・。日本の循環器学会に大変な貢献をした方のようだ。でも、「総長で長嶋茂雄」。記録より記憶に残る人物?

 

ロビーにある医師一覧を見ると、№2は副院長と呼ばれている。この方も循環器科。院内に心臓病センターHCUというのがあるくらいだから、ここは循環器の世界では有名な病院のようだ。

 

さて、診察。問診を繰り返して、最後にドクターの判断は

「CTよりカテーテルのほうがいいかもしれない」。

どう違うかと問うとひとこと

「精度が一桁違う」。

カテーテルというのはラテン語で「管」、医療では血管に通す管のことだ。

管になっていないものも含めて各種の管を挿入しそこから造影剤を注入し、心臓の血管の働きを調べることを「心臓カテーテル検査」というのだという。

 

心臓カテーテル検査の歴史は古く、1929年にドイツの医師フォルスマン博士が、自分の腕を切開し、カテーテルを挿入、自身の右心房まで通し、放射線医学の部署まで歩いていき、レントゲンで心臓までカテーテルが入っていることを確認したのが始まりと言われている。

この時に撮影されたレントゲン写真が現在まで残っている。

Sドクターが自ら作成した「心臓カテーテルの同意説明文」という45ページの冊子にその写真が載っている(この冊子、卑近な例を数多く上げて、大変わかりやすく心臓カテーテルについて説明している。ただところどころ文章がよれているのが気にかかった。誰か校閲をしてくれればいいのにと思ったが、長嶋茂雄に物申す勇気のある人がいなかったのだろう)。

つまり心臓カテーテルは90年を超える歴史を持っている検査方法だということだ。

 

診察は15分ほど。「看護師から入院の手続きの説明があるから」と言われ退室。検査は1泊2日だそうだ。

 

ここでまた「待ち」に入る。

 

40分後、看護師に呼ばれ種々の説明を受ける。

言われればなるほどそうかと思うが、何よりも今は「PCR検査」。

 

1週間後、9時までに受け付けを済ませたら、すぐさまPCR検査をするのだという。結果が判明するまで1時間半。「陰性が確認された時点で入院手続きをしてもらいます」とのこと。

「もし陽性だったら?」と訊いてみる。

「それはもう保健所の管轄ですから」

それはそうだけど。入り口は一つ、出口は二つ。陽性のほうの出口はどこまでどんなふうに続いているのか?

 

説明は15分ほどで終わる。同じ説明を一日に何度もしているのだろう。早口の説明。老人には聞き取りにくい。何度か聞きなおす。録音しておけばよかったとあとになって思う。14時15分。このあとの指示がつづく。

「これから採血、採尿、エコー検査、レントゲン撮影があります」

まだそんなに?私の空腹など病院にとっては埒外の些事。

いつ呼ばれるかはわからない。ひたすら待つのみ。

 

すべて検査が終了して会計の自動精算機の前に立ったのが15時40分。飲み物も持参していなかったから、家を出た9時半ごろから何も口にしていない。病院を出る直前に甘めの缶コーヒーとパンを買う。

 

病院滞在時間は5時間。「寝てれば済む」はずだった調精細CT検査はとりやめになり、1泊2日のカテーテル検査となった。一週間後には入院、検査ということに。