井上荒野のエッセイ『夢の中の魚屋の地図』

井上荒野の文庫本『夢の中の魚屋の地図』を読み終わった。

彼女が28歳から52歳の24年間に発表したエッセイをまとめたもの。全73編。

発表順ではない。

中身はもちろんだが、たぶん、この73編の並べ方がいいのだろう。

その時の情景、言葉の選び方、つなげ方・・・心地いいと感じるのは、自分もその場にいるような臨場感のせい。楽しかった。

 

5月ごろに新刊の『生皮 あるセクシャルハラスメントの風景』を買って読んだ。

それなりに面白かったが、期待したほどではなかった。

次に、父井上光晴瀬戸内寂聴の不倫をえがいた『あちらにいる鬼』を読んだ。

これはこれは絶妙に面白かった。映画は11月に公開になる。

 

井上光晴は若い頃に読んだ。忘れられない作家だ。

娘荒野は気になってはいたが、今まで一度も読んだことがなかった。

 

続いて『そこへ行くな』『その話は今日はやめておきましょう』『赤へ』『切羽へ』。そして一区切りに『夢のなかの・・・』。

 

書いた時期やテーマによって、作者名を隠されたらたぶんわからないだろうなと思う。その程度の読み手なのだが、どれも面白かった。久しぶりに夜中に起き出して読んだりもした。

あえて小説1冊挙げるとすれば、『切羽へ』だろうか。