【薄暮シネマ】5月12日~22日
『みんなの憲法』(2019年/日本/39分/2019憲法を勉強する会)★★★
https://maimaiz.wixsite.com/minnanokempo
「映画「みんなの憲法」は、憲法問題についてみんなで考えたいという素朴な思いから、東京都西多摩地域の市民グループ「憲法を勉強する会」が手づくりした短編映画です。映画では、西多摩地域の文化遺産である五日市憲法草案(明治時代の私擬憲法)をテーマにわかりやすく紐解きながら、憲法が何のためにあるのかを投げかけています。」(公式ホームページから)
友人のFさんが、自分も関わっているからぜひということで、youtubeで見た。
五日市憲法をつくったひとり、千葉卓三郎が現代の女子中学生の部屋に出現するところから映画が始まる。学生時代に五日市憲法を発見、研究を続けてきた専修大教授新井勝紘さんも登場して、憲法の歴史と現在的意義、そして改憲の問題まで丁寧に取り上げている。最後のシーンにFさんも登場。短いけれども、授業には使い勝手がよい。素人の手でここまでつくりあげるエネルギーには驚かされる。
『別離』(2011年/123分/イラン/原題:Jodaeiye Nader az Simin「ナデルとシミンの別れ」/監督:アスガー・ファルハディ/出演:レイラ・ハタミ:ペイマン・モアディ/2012年日本公開)★★★★☆
見てよかった。唸ってしまった。親子の情愛や家族のつながりの問題は普遍的なもの、とまとめてしまうのは簡単だが、映画の中で感じる「神」の存在は、簡単にはまとめられない。
離婚調停のシーンから始まり、夫による家政婦への暴力や損害賠償など裁判や調停のシーンが多い。何がどう問題なのかがこれでよく分かる。イラン社会での教育、介護や離婚の問題の在り方は日本と共通するところと全く違うところと。
夫婦、娘、その父親、そして家政婦とその夫、それぞれの心の動きをカメラはドキュメンタリータッチで追っていく。まったく緩むところがなく最後のシーンまで。誰もが傷つきながら生きていくしかない。登場人物の表情の捉え方が、すごい。
すばらしい映画だった。雰囲気としては2018年の『判決 二つの希望』(レバノン・フランス合作)の緊張感と似ていると思った。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2014年/102分/アメリカ/原題:St. Vincent/監督:セオドア・メルフィ/主演:ビリ・マーレイ/2015年日本公開)★★★
ビル・マーレイ扮する破天荒なダメオヤジが、12歳の少年との交流を通して生きる力を取り戻していく姿を描いたハートフルコメディ。アルコールとギャンブルを愛する、嫌われ者の偏屈親父ヴィンセントは、隣に引っ越してきたシングルマザーのマギーから、彼女の仕事中に12歳の息子オリバーの面倒を見るよう頼まれてしまう。嫌々ながらも引き受けたヴィンセントは、行きつけのバーや競馬場にオリバーを連れて行き、バーでの注文方法からいじめっ子の鼻のへし折り方まで、ろくでもないことばかりを彼に教え込んでいく。オリバーはそんなヴィンセントと反発しあいながらも、一緒に過ごすうちに彼の隠された優しさや心の傷に気づいていく。マーレイは本作でゴールデングローブ賞主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネート。オリバーの母親役に「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」のメリッサ・マッカーシー。「21グラム」のナオミ・ワッツが妊婦のストリッパー役で出演。(映画ドットコムから)
ほとんどこれで説明はいらない。ありがちなフリョ―親父と少年の物語。でも、見てしまう。痛快。
『ある母の復讐』(2012年/韓国/73分/監督:イ・ジスン/出演:チャン・ヨンナム、マ・ドンソク/原題:공정사회(公正社会)Mother Vengeance(母の復讐)/2013年日本公開)★★
見ている最中も後味もよくない映画。選択失敗。娘を見知らぬ男に強姦された母親が、離婚した歯科医の男と犯人と二人の男に対し復讐する。キム・ギドクぽさを狙っているのかもしれないが、とにかくグロテスク。物語としての枠組みが崩れている。
『12人の優しい日本人を読む会~よう久しぶり、オンラインで繋がろうぜ』(2020年)★★★★
発起人の言葉 (近藤芳正)
今回の企画は、zoomで「12人の優しい日本人」を読んだら面白いかも?と思ったのがきっかけで、三谷さんの快諾を得てスタートしました。
東京サンシャインボーイズのメンバーも賛同・参加してくれて、三谷作品には常連だが「12人〜」初参加の吉田羊さん、僕が近ごろ仲良くさせていただいているPrayers Studioの渡部朋彦さん、妻鹿ありかさんを加え、そして演出は〝三谷フリーク“だと言うアガリスクエンターテイメントの冨坂友さんにお願いしました。
今回の企画主旨は「どんなに、ぐだぐだになっても最後まで続ける。」コレです。
僕を含め、ネット関連にまったく慣れていないおじさんばかりです。途中で間違えて音声や画面を切ったりする可能性が大いにあります。久しぶりに読むので、以前の滑舌がないかもしれません。老眼がありますので、違う台詞を読んじゃうかもしれません。
それでもネット慣れしていない我々が新たなツールを使って、大昔の劇団の台本に挑んでみます。
大失敗するかもしれません。失笑だけなのかもしれません。でもやってみないことにはわかりません!生(ナマ)の面白さを観てください!
『雲切仁左衛門』で中井貴一の雲切の下で、小頭役、三坪の伝次郎を演じる近藤芳正の呼びかけ。12分割、時に13分割の画面ではたして楽しめるのか?と思ったが、前後編2時間半?十分に楽しめた。いずれもいずれも達者な役者さんたち。脚本は90年代のものそのままだからあちこち古さを感じさせるが、人の気持ちの揺れ動き、ずるさ、弱さ、格好つけ、プライド・・・がよく描かれている。面白かった。
https://12nin-online.jimdofree.com/
これで見られます。
ちなみに1号役の甲本雅裕さん、最近よくドラマでも見ますが、南原清隆に似ているのだそうですが、雰囲気が賭けマージャンの黒川東京検察検事長にも似ている。甲本さんのほうが表情に緊張感があるが。
『チルソクの夏』(2003年/114分/日本/監督:佐々部清/出演:水谷妃里・上野樹里・高樹澪/ amazonプライムレンタル400円)★★★
3月終わりに『半落ち』の監督佐々部清さんが急死したとの報道があった。そこで追悼の意を込めて2作品を見ることに。
冒頭、2003年の関釜陸上大会(下関と釜山の高校生の交流大会)のシーンから始まるが、こんな大会があったとは知らなかった。主人公郁子は1977年のこの大会で韓国人安大豪と出会い、恋に落ちる。ちょうどその日が7月7日。来年のこの日に今度は下関で会おうと二人は約束するが、二人の文通に双方の家族はいい顔をしない。
それでも一年後2人は下関で出会うが、安には大学進学とともに兵役があり、次に会えるのは4年後ということに。しかしそれぞれの人生はそれぞれの場所で動き出し、二人はその後会うことはなかった。
そして2003年、バブル崩壊のあと途絶えていた大会が再開、郁子は母校の体育教師となり、この大会を仕切ることに。そこで二人は25年ぶりに再会することに。
韓国と日本、釜山と下関は近いがゆえに、大人たちは互いを忌避する感情をもつ。
そのなかで次に世代は偏見なく交流を始めていく。
78年の大会のあとの交流会で安はステージに立って『なごり雪』を歌う。
韓国選手団の役員が「日本の歌を歌うな」と止めに入るシーンがある。
韓国では日本の音楽が禁止されていた時期。
韓国の若者たちはラジオで日本の歌を聴き、日本の若者は韓国語を聞いていた。
政治的な問題と思われるシーンはこれぐらい。
ほのぼのとした70年代の女子高校生の感性が繰り広げられる。キャンディーズやピンクレディが懐かしい。
ただ『パッチギ!』」のようなひりひりするようなインパクトはない。「イムジン川」のように訴えかけてくるものは少ないかな。チルソクは韓国語で七夕のこと。
『六月燈の三姉妹』(2013年/104分/日本/監督:佐々部清/出演:吹石一恵・吉田羊・津田寛治)★★★☆
ご当地映画だが本格的。方言がよく分からないところが何か所も。字幕があってもいいかな。
六月燈というお祭りを舞台に、再起を期す和菓子屋とら屋の家族の悲喜こもごもが描かれる。
登場人物のキャラクターが丁寧に造形されていて、西田聖四郎と市毛良枝の夫婦は、離婚しているが同居して商売に励んでおり、独特の力の抜けた感じがとっても良い。西田聖四郎という役者は初めて見たが、独特の味わい。企画はこの人である。
長女の吉田羊の、家業と家族への責任感、次女の吹石一恵とダンナの津田寛治の離婚をめぐるごたごた、三女の徳永えりの不倫と家業への思いなど、三姉妹の違いがくっきりとしていて微妙な気持ちのすれ違いもいい感じに描かれているなと思った。脚本も練れていて行間がすっと伝わってくる。
味のある映画である。
『飢餓海峡』(1964年/182分/日本/監督:内田吐夢/出演:伴淳三郎・三國連太郎・左幸子・高倉健・加藤嘉)★★★☆
これで5度目くらいになるだろうか。
そのせいか、物語の立て付けについてはあちこちかなり無理があるところが目についた。警察の動き方や判断など、今の小説で描かれるのとはもちろん違うが、ずいぶん無理があるように思えた。最後のシーン、犬飼太吉が留置場で伴淳に「私も北海道に連れて行ってくれ」と頼むと、次のシーンでは伴淳と高倉健ほかひとりが犬飼を列車に載せて北海道に向かう。次のシーンは青函連絡船。伴淳が津軽海峡に花をたむけ、犬飼にも仕向けるが、犬飼はそのまま海に飛び込んでしまう。
舞鶴から北海道に連れていく必然性も、手錠もかけずに青函連絡船に乗るのも不自然といえば不自然。
ただ、そういう立て付けの不自然さを補って余りあるのが、犬飼太吉を演じる三國連太郎の犬飼太吉の気弱でやさしい一面と樽見京一郎の傲然とした態度、左幸子演じる娼妓杉戸八重のどこまでも人を信じる一途さ、伴淳の戦争直後の警察官のどこかうらぶれているけれど、芯の強い刑事役。いずれも見ごたえのある演技で惹きこまれる。
そのうえで、いちばんの不満は、犬飼太吉がどのような経緯から刑余者に対して3000万円もの寄付をする会社の経営者となったのか、前半の犬飼太吉の行動からは全く想像できない。
さらに杉戸八重に素性を暴かれそうになった時に、樽見が八重の首を絞めて殺してしまうのだが、これも解せないし、思い余って書生を殺してしまうのも解せない。
松本清張の『砂の器』にも同じことがいえる。ハンセン病の親の子として生まれた和賀英了がどのような経緯でピアニストになったのか、前歴を暴かれそうになって刑事?を殺してしまうのも同じ。
2人の人生は劇的ではあるし、素性が暴かれそうになった時の行為も劇的であるが、そこになにがしかのリアリティが感じられないのだ。
ともに名作とされる作品、何度か見ていると不満も出てくる。
『飢餓海峡』に英語の原題があるのを今回初めて知った。海外公開用につくったものか。
『A Fugitive from the Past』(「過去からの逃亡者」だろうか)
『見栄を張る』2016年製作/93分/日本/監督:藤村明世/出演:久保陽香・似鳥美貴・岡田篤哉)★★☆
是枝裕和さんの推薦文にほだされてみてしまった。
「泣き屋」をめぐる物語。
葬儀で参列者の涙を誘う「泣き屋」の仕事に就いた女性の奮闘を描いた人間ドラマ。28歳の売れない女優・絵梨子のもとに、疎遠にしていた姉の訃報が届く。葬儀に出席するため和歌山に帰郷した絵梨子は、姉が女手ひとつで育てていた息子・和馬を引き取ることを決意。そして和馬との生活のため、姉がやっていた「泣き屋」の仕事を、絵梨子も始めるのだが……。(映画ドットコムから)
全体に雰囲気があって、いい感じと思うところもあるのだが、「泣き屋」の部分もあまり詰められず、なんだ行間ばかりが空きすぎていてリズムが感じられない。気持ちが乗っていかない。技術的な問題がおおきいのだろうか。
暇に飽かせて、辺見庸の『月』の朗読をしている。オーディエンスは夕食準備中のMさんとライ。毎日1章ずつ。5月16日から始めた。続くかな?