一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)というのがある。全国47都道府県に支部を置き、会員数5600社、観光事業の振興と地域の活性化を目指しているのだという。
いわゆる業界団体。
業務内容は、観光庁長官の指定協会としての「法定業務及び指定業務」、「試験事務代行業務」のほか、旅行業の健全な発展と経営の合理化に資する「一般業務」に大別されます。
法定業務及び指定業務では、旅行業法に定める5つの業務のほか、指定研修などを開催しています。
また、一般業務では、旅行に関する知識の普及や旅行業に関する業務の改善、観光事業団体等との連絡協調、関係官公署等に対する意見の具申等の事業を実施しています。
(HPから)
GoToキャンペーンの予算、1兆6000億余円のうち、そのほとんどがGoToトラベルに予算が割かれていることと全く関連していないとは言えない。
東京だけを対象から外すことになったという。
東京・千葉・埼玉・神奈川の首都圏は一体的に、とはならなかった。
神奈川を外さなかったのは、官房長官の地元だからだろうか。
そうまでして、それも予定より前倒してまで、今やらなければならないことか。
巨額のマネーは、給付金業務の下請け同様、あちこちにばらまかれたりするのだろうか。
アンタ(ANTA)が、ポケットを開いて待っていたりすることはないのだろうか。
疑心暗鬼になる材料がそろいすぎている。
【読み飛ばし読書備忘録】
『私の良い子』(2019年/寺地はるな/中央公論新社/1600円+税)★★★☆
Mさんが図書館から借りて読んだのをまた借り?して読む。読ませる文章。キレがあって無駄がない。こういう人を手練れというのだろう。初めて読んだ作家。
『時間革命』(1998年/角山榮/新書館/1500円+税)
ちょっと気になって古本で買った。中世の時間から始まって、近代化の中で資本や経営がどんなふうに労働者の時間を管理してきたか。期待していたモノとは少し違った。
『ふがいない僕は空を見た』(2012年/窪美澄/新潮文庫/520円+税/単行本2010年)
タナダユキ監督の映画がとっても良かったので、原作を古本で買って読んでみた。
よくできた連作小説。5つの短編の一人称がみな違う。同じ空間、時間をそれぞれの視点から描くと面白そうだが、仕掛けがうまくいかなければ退屈、冗長になる。そうなっていないのがすごい。心理描写が重層的で豊か。深さがある。面白かった。映画も原作も面白いってすごい。この原作から映画をつくったタナダユキという監督もただものではないと思った。
『すみなれたからだで』(2020年/窪美澄/河出文庫/680円+税/単行本2016年)
朝日新聞の文庫本紹介のところで目にとまった。9編の短編集。読んでいるときの体調によるものかもしれないが、1作目の「父を山に棄てに行く」は緊張感ある文章。ほかはつくりモノ臭さがあってちょっと。ほんとうかな。
『女医レニアの物語 ロシアから来た女性(ひと)は「愛」の種をまいた』(1990年/神田香織/主婦の友社・1200円)
『悲しみのマリア』上・下(2014年/熊谷敬太郎/NHK出版/1800円+税)
戦後、鶴見俊輔らと『思想の科学』を創刊した理論物理学者の武谷三男の研究会がいまも開かれているという記事を竹内さんの『ヒロシマへヒロシマから』通信で読んだ。武谷の妻が白系ロシア人で、その父親が帝政時代のバルチック艦隊の艦長であり、ロシア革命のときにハルピンから日本に脱出、一家は会津若松に住んで父親はテーラーとなり、その娘武谷ピニロピは眼科医となり、のちに清瀬にある武谷病院をつくり…という記述に惹かれ、2冊、読んだ。
講談師の神田香織は、武谷三男とピニロピの間に産まれた息子と結婚した縁で、義母の伝記を書いたのだが、タイトルは立派だが文章は雑で情緒的、途中から読みとばした。
『悲しみのマリア』上・下のほうは、多くの資料にあたりながらピニロピ氏へのかなり詳細な取材をもとに書かれたもので、最後まで読ませる。ただ、ピニロピ氏の写真を表紙に使いながら、ドキュメンタリーではなく「小説」としているので、かなりピニロピ医師、武谷家に対する思い入れの強いものとなっている。
裁判まで闘われた武谷病院の労働争議についても感情的な労組への忌避感が強く、「医は仁術」を対置するだけに終わっているのもその証左。
両書ともピニロピ氏を奉りすぎる傾向が強いのが随所で鼻についた。等身大のピニロピ氏、とりわけ一人息子との確執などもっと書き込んでほしかった。