映画5本まとめて。『林檎とポラロイド』『かば』『佐々木、イン、マイマイン』『流浪の月』『ハッチング 孵化』

映画備忘録。ざっとまとめて。

いつの間にかたまってしまった。記録だけはしておかないと落ち着かない。

5本まとめて。

 

5月17日

『林檎とポラロイド』(2020年製作/90分/G/ギリシャポーランドスロベニア合作/原題:Mila/監督:クリストス・ニク/出演:アリス・セレベタリス他/日本公開:2022年3月)

ギリシャの新鋭クリストス・ニクが長編初メガホンをとり、記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に描いたドラマ。ある日突然記憶を失った男は、治療のための回復プログラム「新しい自分」に参加する。彼は毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた内容をもとに、自転車に乗る、仮装パーティで友だちをつくる、ホラー映画を観るなど様々なミッションをこなしていく。そんな中、男は同じく回復プログラムに参加する女と出会い、親しくなっていく。男が新しい日常に慣れてきた頃、彼はそれまで忘れていた、以前住んでいた番地をふと口にする。新しい思い出を作るためのミッションによって、男の過去が徐々にひも解かれていくが……。ケイト・ブランシェットが絶賛し、製作総指揮に名を連ねた。(映画ドットコム)

 

面白そうと思ってみたのだが、さっぱり。途中寝てしまった。要するについていけないということだ。

 

 

『かば』(2021年製作/135分/日本/原作・脚本・監督:川本貴弘/出演:山中アラタほか・公開:2021年7月)

 

差別と偏見、貧困などさまざまな問題を抱えた環境の中で生徒たちに正面から向き合った、実在した中学生教師たちの生き方を描いたドラマ。1985年夏、被差別部落が隣接する大阪市西成区北部の中学校。荒んだ学校生活を送っている生徒たちに、蒲先生ら教師たちは手を焼いていた。臨時教員として赴任してきた加藤先生が生徒に受け入れてもらえず自信喪失する姿に、蒲先生は得意の野球で生徒と向き合うことを提案する。登校拒否になった転校生、家庭を顧みない母親、酒浸りで在日朝鮮人の父と暮らす女生徒、出身地を恋人に告白することができない卒業生、服役中の父親に代わって家庭を支える野球部主将など、さまざまな事情を抱えた生徒たち。蒲先生ら教師たちは、彼らと向き合い、時には生徒の家庭へ強引に入り込んでまで、彼らの生き方を模索する。主人公・蒲先生役を大阪出身の山中アラタが演じる。監督は「秋桜残香」「傘の下」の川本貴弘。(映画ドットコム)

 

たばこを喫うシーンがやたら多い。

時代的にはわからないではないが、ドキドキした。同じ時代、私は赤いラークのロングを2箱半喫っていた。

 

共感してみるかなと思ったのだが、そんなこともなかった。

どこか牧歌的。

「この学校には在日、沖縄、部落以外の者はおらんのじゃ」といった枠ではなく、この時代の子ども、中学生のわからなさに迫ってほしかった。

しんどさを抱えた生徒をまえに、悩みながら成長していく教師たち。それに応える生徒たち。

どこか予定調和。教育物語。

成長どころか「退場」するしかなかった教員が、あの時代たくさんいた。

若い女性の教員が野球部の監督となって・・・そういう話もあったのだろうが、かつてのフリョーくん、さんたちは部活動の邪魔をすることはあっても、まともにやろうとする子たちはほとんどいなかった。

映画の中では曲りなりのみ授業に出ている生徒たち。

関西滴突っ込みを入れる子どもたちの陽気さ、なんだかいいなあと思ってしまった。

 

この映画の中では目の前で起きていること、それはもちろんしんどいことではあるが、問題の枠組みがしっかり見えている。

そういうこともないではなかったが、私が渦中にいた学校では、目の前で起きることの理不尽さがなかなか整理できなかった。うそでもなんとか整理してその場しのぎの対症療法を編み出す?そんな時代だった。そこを共有しないと教員集団もまとまれなかった。

 

しらけた気持ちでエンドロールを見たことを正直に書いておく。

 

 

 

5月28日 Amazon primeで

『佐々木、インマイマイン』(2020年製作/119分/G/日本/脚本:内山拓也 細川岳/監督:内山拓也/出演:藤原季節 細川岳 河合優実他 /2020年11月公開)

 

前から見たかった映画。

無骨なつくり方だが、伝わってくるものはたしかにあると思った。最後までしっかり見た。

ただ、エキセントリックな「佐々木」のバックヤードが見えてこないのが残念。

終わりの方に出てくる河合優実の印象が強い。

正直、はじめて見る女優だが存在感あり!と思ったのだが、実際にはついこの間見た『愛なのに』や『由宇子の天秤』にも出ている。3本の映画、全く違うように見えた。いろいろな顔、表情を見せられるということだ。今年だけで6本の映画に出演。画像6

 

 

5月31日 グランベリーシネマ

『流浪の月』(2022年製作/150分/G/日本/原作:凪良ゆう/監督・脚本:李相日/出演:町坂桃李 広瀬すず 横浜流星ほか・2022年5月13日公開)

 

どうも李監督の作品は合わないような気がする。『怒り』『悪人』と同じ印象。

画像6

冒頭のシーンは、凝っていてイメージ豊かで素晴らしい。

あちこちに重厚なシーンがちりばめられているが、鼻につくというか少しやりすぎて、かえってリアリティを欠くことになっていないか。

佐伯文役の松坂桃李も、黒づくめに衣装で暗いカフェで働くなどつくりすぎ。

広瀬すずも力演はわかるが、声が単調でふかみがない。多部未華子もあまり活きていないと思った。

上手だと思ったのは横浜流星。脇役として存在感あり。

 

 

らっきょうの皮がいくら重厚でも、剥いていったらはて何が残ったのか?

文、さらさ、ともにバックヤードが腑に落ちない。

 

文の母親役がほんの少しの台詞だがすごい存在感を示す。

誰、この女優と思ってエンドロールを見たら、内田裕也樹木希林の娘さんの内田也哉子。納得。十数年ぶりの映画出演らしい。

 

 

6月1日 kiki

『ハッチング 孵化』(2021年製作/91分/PG12/フィンランド・原題:Pahanhautoja 邪悪な墓 /監督:ハンナ・ベルイホルム/シーリ・ソラリンナ ソフィア・ヘイッキラ/2022年4月15日公開)

予告のビジュアル~1m大の卵~が気になった映画。フィンランドのホラー映画。期待はしてなかったが面白かった。

 

つくりはわかりやすい。

娘に過度な期待をかける母親は、SNSで素晴らしい家庭を発信し続けるが、浮気をしている。

娘ティンヤは、母親のそうした分裂気味のメンタルをすべてそのまま受容、ひずみが見えないところで起きてくる。その発端のシーン。

絵に描いたような幸せな家庭を撮影している最中に、1羽のカラスが飛び込んでくる。カラスは家の中を飛び回り、「幸せ」を壊し続ける。

毛布をかぶせてカラスを捕まえたティンヤは母親にそのまま差し出すが、母親は毛布の上からカラスの首をひねり、殺す。

生ごみに捨ててきて」といわれティンヤはカラスをゴミ箱に捨てる。深夜、森の中からカラスの鳴き声が聞こえてきて、ティンヤは森に足を踏み入れる。カラスは瀕死の状態だが、ティンヤは大きな石でカラスのアタマを何度もつぶす。ふと、近くに小さな卵を発見。部屋に持ち帰り、ベッドに入れる。

 

そのうちに卵はどんどん大きくなり、1㍍ほどに。

殻を割って出てきたのは‥‥。

 

異形の動物はティンヤの抑圧された妄想の産物。怪異な外見が少しずつ変化し、ティンヤに近づいていく。

 

若い女性の監督。

ただのホラーにせずに、母親、ティンヤそれぞれの意識の深層をイメージさせるものに。

フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』(岩竹美加子・2019)という本を読んだが、この映画からフィンランドの教育のシステムをつかむことはできず、親の過剰な期待が子どもをつぶしていくという、割合普遍的なテーマが見えた。画像1