『JOINT』多くのシーンにやくざ映画独特の既視感がない。セリフが聞き取りにくいのが難。いいところ満載なのに、まとまり感が今一つ。

映画備忘録。

2月1日。

『JOINT』(2020年製作/118分/G/日本/監督:小島央大/出演:山本一賢他)

     名簿売買、暴力団、特殊詐欺、ベンチャー投資、外国人犯罪組織など、現代日本で現在進行形の裏社会をリアルなタッチで描いた犯罪ドラマ。刑務所から出所した半グレの石神武司は個人情報の名簿を元手に詐欺用の名簿ビジネスを始め、成功を収める。カタギの親友ヤスから投資を勧められ、ベンチャービジネスに介入し、投資家へと転身を図った石神は裏社会から足を洗おうとするが、大手取引先から過去を問題視され、先方から「石神を外すように」との条件を出さてしまう。一方、石神の後輩・広野が所属する関東最大の暴力団・大島会は、組を破門された武闘派たちが決起した壱川組から抗争を仕掛けられていた。かつて大島会とつながりのあった石神もカタギかヤクザ、大島会か壱川組という、究極の決断を迫られる。主人公の石神を本作が俳優デビューとなる山本一賢が演じる。監督は本作が⻑編監督第一作となる小島央大。【映画ドットコムから】

 

 

最近1、年間で見たやくざ映画、思いつくのは『ねばぎば新世界』『無頼』『ヤクザと家族 The Family]』・・・。正直どれも前評判ほどには。陳腐さばかりが目についた。

 

2021年の新藤兼人賞で銀賞を受賞したというこの映画、ひとことでいうならば、新鮮だった。

とくに冒頭のシーン。石神は、刑務所から出所して高崎近辺で肉体労働で一年間働く。住んでいたのは薄汚れたホテル。ひたすらお金をためて、東京に戻る。迎えに来た友達とのクルマの中の会話。よく聴きとれないのだが、独特の雰囲気のあるいいシーンだ。

ヤクザ映画で、出所してすぐ肉体労働一年などというのは、なかなかない。

 

暴力の空気を十分に感じさせながら、全編、暴力とセックスシーンがほとんどないのもいい。

多くのシーンにやくざ映画独特の既視感がない。これはすごい。カメラワークも新鮮。

 

ただ、セリフが聞き取りにくいのが難。

それと、ヤクザ同士が互いに脅し合うシーンで口から出るセリフ、残念。その辺のチンピラが言うようなつまらない常套文句。「てめえ、この野郎・・・」面白くない。

個別のシーンはそれぞれに雰囲気があって、不穏さは伝わってくるのに全体の流れががつながって見えてこない。いや、流れは見えないことはないのだが、石神の心理がよく見えてこない。

 

それと、それぞれの今風の「ビジネス」について説明が入るが、「ビジネス」そのものが完遂するところもよく見えてこない。名簿にしても、その作り方はわかっても、具体的な使われ方が今一つ。IT関係の「ビジネス」も、着地点が見えないからがよくわからない。

「ビジネス」を追いかける警察の動きが中途半端。意味不明なシーンもいくつか。

 

画面に迫力はあるし、ほとんど見たことのない俳優たちの演技もいい。彫師が実際に入れ墨を彫っている、あるいはそうみえるシーンも今まで見たことのない構図。

 

いいところ満載なのに、まとまり感が今一つ。

最後まで、石神が何を考えどこに向かっているのかが、私にはよくわからなかった。

 

観る方の問題だろう、それは、と言われれば、そうかもしれない。

 

画像8

 

次回作、期待したい。