映画備忘録。4月5日、kiki、2本目。
『北風アウトサイダー』(2022年製作/151分/G/日本/脚本・監督:崔哲浩/出演:崔哲浩 櫂作真帆 伊藤航 上田和光他/公開2022年2月11日)
大阪府生野にある在日朝鮮人の町。みんなの母代わりであるオモニ(オカン)の葬儀が行われていた。15年前に失踪した長男・ヨンギはそこに現れない。オモニが始めた店の借金に追われ、ヨンギを除く3兄妹たちは途方に暮れる。そんな中、ヨンギが帰ってくる・・・。変わり果てた長男に困惑する兄妹たち。家族とは・・・。様々な人の想いがすれ違うなかで、大きな愛によってはたして家族の絆は取り戻せるのか。
(公式HPストーリー)
上のHPのストーリー、映画サイトでのレビューの数字が高いこと、それとタイトルに惹かれてみようと思った。
のっけからオモニの葬儀のシーン。オモニの写真のすさまじさ?に何か意味があるのかと思ったら、特になし。生前は大変にしっかりした立派なオモニだった。
読経の最中に坊さんに文句をつける三男?それに対して女子高生(長男が置いていった娘、次男の養女となっている)が、「おっちゃん、坊さんが困っているやないか」と突っ込む。
これをきっかけにいろいろな人間が、あちこちから口を出し・・・。
どの役者も見た覚えのない人たち。
しかし達者な演技はかなりのレベル。
この人たち、何か一つの劇団の人たちじゃないか?と思った。芝居そのものが濃い点からしても。
間違いなかった。監督の崔哲浩が主宰する劇団「野良犬弾」の人々。
不思議なことがいくつも。
皆に愛されたはずのオモニの葬儀なのに、悲しみが感じられない。
そこに、「かつてオモニに世話になった」という女性が訪れ、焼香をさせてくれという。
ここから物語が始まるのだが、彼女は行方不明になっていて葬儀にも帰ってこない長男ヨンギの内縁の妻。
なぜ、彼女がオモニの死を知ったのか。いったいどういうお世話になったのか。不明。
次の日かなにかにヨンギが戻ってくる。
監督の崔が演じる。この演技がよくわからない。
ずいぶんと不健康で異様な感じなのだが、数日のうちに健康そうに見えてくる。屈託の中身が見えてこない。
在日朝鮮人一家の家族、きょうだいの絆を描こうとしたようだが、成功しているとは言えない。面白さの糸口は見えるのに面白いところまで行かない。
スマホがしょっちゅう出てくるのを見ると、現代が舞台のようだが、在日をめぐる話題問題は、時代的に20年か30年をさかのぼるように感じられた。
群像劇と言っていいのだろうが、枝葉の物語も中途半端、中心となるストーリーも見えてこない。いろいろなものをぶち込んだごった煮のようで、味が完全にぼやけてしまった。
脚本の問題だと思う。
ストーリーに必然性が感じられない。
ヨンギの人物像がぼやけているし、店の借金のために娘が売春?というのもよくわからない。ヤクザの演技はよく出ているのに、やくざの登場に必然性がない。
ヤクザ内部の問題もはっきりしないし、北朝鮮のカルト集団のようなものもよくわからない。
笑えるシーンもあるしそこそこ笑えるのだが・・・。
過剰な演出と撮影技術、演技のやり取りの巧さで最後まで見てしまったが、見終わってみれば「なんだかなあ」だった。
残念。