映画『香川1区』政治闘争ではなく、性格競争。大島新監督には、仲良し小川ではなく、小川の情緒的な言動に対して、政策や組織問題を切り込んでいく姿勢が欲しかった。

映画備忘録①

『香川1区』(2021年製作/156分/G/日本/監督:大島新・2021年12月24日公開)

2021年秋の第49回衆議院議員総選挙で注目を集めた選挙区の香川1区に焦点を当てたドキュメンタリー。衆議院議員小川淳也氏の初出馬からの17年間を追った「なぜ君は総理大臣になれないのか」が大きな話題を集めた大島新監督が、同作の続編的位置付けの作品として手がけ、香川1区の選挙戦を与野党両陣営、双方の有権者の視点から描く。2003年の初出馬から1勝5敗と闘いに窮し、比例復活当選を繰り返してきた小川氏。香川1区で彼の前に立ちはだかってきたのが、自民党平井卓也議員だ。四国新聞西日本放送のオーナー一族にして3世議員の平井氏は、前回2017年の総選挙で小川氏に辛勝。その後、小川氏は統計不正についての国会質疑や映画で注目され、その知名度は全国区に広がっていく。2020年に菅政権が誕生すると、平井氏はデジタル改革担当大臣に就任。保守地盤である香川の有権者にとって「大臣」の肩書は絶大で、小川氏の苦戦は免れないと思われたが、平井氏はオリパラアプリに関する不適切発言などでマスコミの標的となっていく。  映画ドットコムから

2時間半を超える長尺のドキュメンタリー。

昨年10月の衆議院選挙香川1区の選挙戦を克明に追っている。

映画的には、徒手空拳の小川淳也に対し地元政財界が一丸となって推す元デジタル大臣平井卓也という構図は、ドキュメンタリーというより、ある意味一つのドラマだ。

全くの劣勢の中、平井大臣の接待問題、暴言問題などがあり、戦況は拮抗するが、小川もまた2極対立のなかに出てきた第3極の維新の候補者に対し、出馬取りやめを要請するという行動に出て、維新のみならず西日本新聞からも集中的に攻撃を受ける。

結果はわかっていても、巨像に立ち向かうネズミ、悪代官と戦う野武士のように、観ている者は小川にどんどん入れ込んでいく構図。

そして投票日当日、投票終了の8時に当選確実が出て小川が劇的な勝利を収める。

言ってみれば、『ロッキー』のような話。

観終わって、なんだかなあという気持ちが消えなかった。

古い選挙を戦う平井は徹底して悪役に。

家族やボランティアに支えられる小川は清廉なイメージ。

ちょっとアンフェアかなと思った。

 

小川が立憲民主ではなく市民派で、後ろ盾がないのならまだわかる。

しかし、弱いとはいえ地元の連合の支援を受けており、いわば労組をバックの選挙。

大島は、出陣式での連合代表の挨拶を一瞬だけ挿入したが、あとは徹底して小川の周辺とその言葉を追う。

そこに描かれるのは、小川淳也という人間の魅力的な人格。

まだまだ若くて悩んで、それでもすじを一本通す欲のない清廉な政治家像。

これを妻や二人の娘、ボランティアとして勝手に支援をする市民グループ、あるいは劣勢の小豆島で最後の闘い、負けたらやめるという後援会会長が支える。

 

一方、平井は悠然と構えてインタビューにもこたえるが、どうしたって見てくれでは若い小川には見劣りする。殿様化あるいは代官様のような雰囲気。

暴言や接待、あるいは西日本放送四国新聞のオーナー一族という飾りは、どうしたって「判官びいき」となってしまう。

 

結論、映画としての、ドキュメンタリーとしての深みがない。政治闘争を性格競争に終わらせてしまった。

大島監督には仲良し小川ではなく、小川の情緒的な言動に対して、政策や組織問題を切り込んでいく姿勢が欲しかった。たとえ平井陣営から嫌がらせに近い対応を受けたとしても、政治家としての二人の対立をしっかり見せてほしかった。

 

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散歩御途中で見つけた標識。どういう意味があるのだろうか。あまり見たことがないのだが。歩行者専用道路を表す標識だとか。女の子を無理やり連れて行きそうにしているようにも見えるが、この男の人は横断歩道を渡っている男の人にも見える。