旅の備忘録。

この時期、後期の授業が始まってペースに慣れるまでいつも少し窮屈な思いをする。

たった一コマなのに、メールで送られてくる学生の課題を読むのとその整理に時間を取られる。対面でない分、学生がどんなふうにこちらの働きかけを感じているのかがつかみにくく、それを文書で補強しようとややしつこい資料をつくってしまう。

ようやく落ち着いてきた月末、一年ぶりの信州旅行に出かけた。旅の備忘録。

 

珍しく天気に恵まれ、初日から快晴。早めに出て韮崎のグリーンバレイで遊び、夕方、高遠の山荘五合庵に到着。標高1200メートル。部屋には2台の石油ストーブ。目の前の入笠山が夕日に縁どられている。

いつものように夕・朝食のけっこうな時間、庵主ご夫妻とこころゆくまでおしゃべりを楽しむ。高遠の銘酒「黒松仙醸」、はかがいってしまった。

ここは実家のない私たちにとっては実家のようなもの。年に一度の帰省のような感覚だ。

 

2日目も快晴。秋らしい一日。安曇野、池田町に住む大学時代の友人S君を訪ねる。時間があったので安曇野池田クラフトパークへ。丘に登ると上原良治の碑がある。いつもこれを見たくなる。

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自由の勝利は明白な事だと思います。

明日は自由主義者が一人この世から去って行きます。

唯願はくば愛する日本を偉大ならしめられん事を国民の方々にお願いするのみです。

 

 

S君は教員を退職した後炭素循環農法で作物を育てている。

自慢のネギ畑に案内され、ネギや株、野沢菜などを収穫。

いつものことだが、横浜に戻って食べてみるとどれもおいしく、無肥料、無農薬の農法のすごさを思い知らされる。今回は殊にカブがすばらしかった。生で食べたのだが、これほど甘みのあるみずみずしいカブは食べたことがない。

畑からクルマで30分ほどの『お野菜懐石 & Organic Cafe manaya』で、3人でお昼を食べる。一品一品ゆっくり出てくる。2時間近く。

お店は古民家を再生した雰囲気のあるもの。なんともしゃれた野菜料理に舌鼓を打つ。

 

夕方、毎年リンゴを取り寄せているおぐらやま農場に寄る。ここも無農薬、無肥料でリンゴをつくっている。切り口が時間が経っても色が変わらず、味も自然な甘みのあるおいしいりんご。

 

この日は甲府まで移動して宿泊。

ドライバーには休んでもらって、部屋呑みのネタを買い求めに街へ出る。

どこの地方都市でもデパートの地下食品街に行けば大抵のものはそろう。

甲府の百貨店は岡島だけ。ホテルの地図が少し見にくく、45度方角を間違えて10分ほど歩いてしまう。行きつ戻りつしながらたどり着き、閉店間際のところに滑り込む。

甲州ワイン他、地元産品を買い求める。

 

3日目。この日も快晴。山梨県立美術館でたくさんのミレーを見る。何年ぶりだろう。堪能。

広い敷地内にある県立文学館も。この文学館、美術館と同様の黒い制服を着た女性の監視員が数人配置されている。文学館としては珍しい。文学館は国内にかなりの数があるが、展示はピンキリ。ここは太宰や芥川などの自筆資料など充実しているし、取り上げている山梨ゆかりの作家の数が多いのも特長かもしれない。

65歳以上は2館とも企画展以外は入場料はかからない。

 

二つの建物の間にはいくつもの彫刻やモニュメントがある。ゆったりした空間。

天気が良いので、小さな子ども連れの若夫婦たちが何組も。そういえば土曜日。

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偶然見えた虹。県立文学前の噴水

 

Mさん、腹が空いたと言うので早めの昼食。

事前調査で調べておいた甲府ではよく知られた支那そばの蓬莱軒。すでに行列。

10分ほどで着席。残念。名物に・・・なし。

 

一度も行ったことのない武田神社に行ってみようということに。

 

遠く離れた駐車場から歩いて境内に入っていくと、何やら甲冑姿の大人に子どもたちが集まっている。何本もの幟りには「狼煙リレー」とある。

武田信玄公生誕500年祭。今日10月30日がイベント「狼煙リレー」の日であることを知る。

 

ドローンやテレビカメラは見えるが、見物人がいかにも少ない。甲冑姿の子どもたち

の母親たちが中心。

空いているベンチに坐ると、実行委員会の人なのか中年の女性が近づいてきて、イベントの全体像を説明してくれる。ありがたい。

 

三河の徳川が動き出したことを、岐阜と愛知の県境の長野県根羽村で狼煙をあげ武田の本拠である躑躅が崎館(武田神社)まで全67か所で次々に狼煙を上げながら約280キロをリレーして知らせる」というイベント。

 

「韮崎で狼煙ががりました!」というアナウンス。

子どもたちが走りだす。狼煙を確認するという。ドローンが追いかける。

このあとなぜか間延びして、境内はがらーんと。

最後まで見ずに席を立ってしまったが、子どもたちが狼煙を確認したら、武田信玄役の人に報告に駆け付けるというところでイベントが最高潮を迎えるのだろう。見なかったけれど、武田家の何代目か子孫の方もいたそうだ。

 

天気がいいので、笛吹川フルーツ公園に向かう。30分ほどの距離。

緊急事態宣言が解除され、土曜日のこの好天。いくつもある駐車場はすべて満車。

敷地内のフルーツパーク富士屋ホテルの駐車場に一台空きを見つける。

少しお高いがここのレストランで休憩。私はビール。Mさんは珈琲なんとか。

外のテーブルに坐ると、お椀の底のような甲府盆地の壮大な眺望。晴れてはいるがすこしもやっていて富士山は見えない。夜は「新・三大夜景」。ずいぶん前になるが、娘の披露宴で宿泊、きれいだったことを思い出す。

このホテルの裏に「ほったらかしの湯」がある。何年か前、M君、H君との信州旅行の帰りに寄った。まさに絶景の露天風呂。

 

早めに帰ろう渋滞しないうちに、とドライバーをせかして出発。休憩した談合坂SAを過ぎたところで事故渋滞。かなり長い。事故現場がなかなか見えてこない。

 

明るいうちに帰宅できるかと思っていたのだが、渋滞は1時間ほど。横浜帰着はもう夜のとばりが落ちたころ。

らいはいない。2週間前、3年半ぶりに実家?に連れて行った。孫たちのたっての希望だ。玄関のドアを開けた時に聴こえる思い切り前のめりの足音が聞こえないのが、寂しい。