中国新聞の
「A book for peace 森田裕美のこの1冊」
”夏の読書スペシャル”と数冊の子供向けの本を紹介している。
”ワタシゴト”に触れているところを抜き出してみる。私自身の視点にそっくり重なる。
たった1発の原爆が生身の人間にもたらした悲惨を直接語れる人が少なくなる中、「継承」に示唆を与えるのが、広島市在住の中澤晶子さん著「ワタシゴト」(汐文社)と続編にあたる「あなたがいたところ」(同)。いずれも主人公は14歳の修学旅行生。それぞれに悩みや問題を抱える生徒たちが被爆地を訪れ、原爆資料館で遺品と向き合う。広島に残る被爆建物や遺構を歩く。この世にいない「あなた」の体験に、五感で追っていく。
「あなたがー」の白眉はかつて修学旅行生として同じ場所を訪れた引率教員たちの描写だ。大人になった教員の目に映るヒロシマ。歳を重ね、人生経験を積んだいまこそできる継承があるのだと気づかされる。
こんなふうに「児童文学」をとらえる視点は新鮮。
20数年前に、横浜の中学生と中澤晶子さんを引き合わせた者のひとりとして、中学生の成長の先に新しい「継承」の可能性があることを示してもらえたのはうれしいこと。
私が引率した中学生が、10数年後に教員となって中学生を引率している。
その中澤さんの新刊が
小峰書店・6月刊
これもまた継承をめぐる物語。あえて中身は書かないが、イメージ豊かな優れた作品。引き込まれた。
小峰書店は1980年6月以来のベストセラー『ひろしまのピカ』の版元。並べて見ると
字数がぴったり。名コンビささめやゆきさんの表紙、挿絵も素晴らしく、装丁もよく練られていて完成度の高い作品。これもロングセラーになるのではないか。
広島現地で、旧陸軍被服支廠保存運動を続けている方々が継続して毎回いろいろな方をお呼びしてインタビューを続けている「hifukusyoラジオ」(youtube) 。
50回目となる今月は中澤晶子さん2回目の登場。
ご自身の作品とのかかわりや子ども図書館移転反対運動について語っている。ぜひ聴いてほしい。
進行役は土屋時子さん。『ヒロシマの「河」』の著者のお一人。広島女学院大学図書館に司書として勤務するかたわら、同館に栗原貞子記念平和文庫を開設。広島文学資料保全の会代表。