菅退陣。短命政権がやったのはGoToトラベ(ブ)ルと五(誤)輪。みな一斉に泥船から逃げ出した。

政治に仁義を求めるのは、八百屋で肉を求めるようなものだ。そこにあるのはいつも、おらがおらがの渦巻く欲望だけ。

与党も野党も、その点では変わりはない。まずは自分の身を守ること、選挙に通ることだ。

 

政治家は基本的に政治より政局が好きだ。官僚が政策より人事が好きなのと同じ。政治や政策(の多く)は論理が優先するが、政局や人事は欲望そのものだからその人間の素の姿が出る。

 

菅が退陣を発表する前日、3日の東京新聞神奈川県版に小さな記事が載った。

2日に開かれた自民党神奈川県連の総務会が開かれたという記事だ。

記事の主旨は、横浜市連に対して先般の市長選の総括を求める声が出たというもので、これに対し市連は「受け止める」と述べただけというもの。

その末尾に9月29日の総裁選について「国会議員票と党員票(いずれも383票)で行われるが、(自民党神奈川)県連は現状では県内の党員向けに菅義偉首相に投票するよう呼びかけることはしないという」とあった。

 

菅は「総裁選に出るのは当然」と言っていたのではなかったか。二階を辞めさせ、新布陣で闘うのではなかったか。

地元の県連が支援をしない・・・。ふーん、そこまで来ているのかと思った。

記事は総裁選をめぐって侃々諤々の議論があったとは書かれていない。粛々と支援せずが確認されたという雰囲気だ。

 

午前中のネットニュースに「菅首相退陣」が流れる。

 

これ以降、安倍や麻生の陰での姑息な動きが報じられ、誰もが菅の泥船には乗りたくないと逃げ出し、菅は孤立無援、出馬断念となったことが分かった。

 

逃げ出すときには一気に。義理も人情もあったものではない。

恐怖政治の菅にとっては、気の許せる腹心もいなかった。

 

 

神奈川三郎、というのがいる。

小此木八郎小泉進次郎河野太郎 の3人のことだ。

菅はことのほかこの若手3人をかわいがっていたという。腹心と思っていた。

 

八郎は国家公安委員長、小泉は環境大臣河野太郎は行革担当大臣とワクチン接種担当大臣。八郎は自己アピールが得意ではないが、あとの二人は自己顕示欲のかたまりだ。

 

この1年、コロナ対策は後手後手に。ブレーキとアクセルを同時に踏むようなちぐはぐな政策に支持率は急降下している中、決壊は八郎の市長選出馬から始まった。

カジノを含むIRを撤回し、横浜市連の分裂を呼び、結果的に立民を中心とする「野党系」に敗北。八郎は政治家引退。一人が消えた。

 

二人目は太郎。このやんちゃ坊主を党役員の中心、二階の後釜に据えて一気に情勢を挽回しよう、というのがここ数日の菅の腹づもりだったか。

しかし、河野は麻生派麻生派からすれば、派閥の若手の中心を「泥船」に乗せるわけにはいかない。麻生に協力を頼んだ菅は怒鳴りつけられたという。二人目が消えた。太郎は、「菅退陣」を聞いた途端、「オレ、出るよ」だ。この男には父親のような惻隠の情などかけらもない。

 

三人目の進次郎。県連の「菅不支持」は、進次郎やわいろをポッポした甘利明あたりが画策した結果と見える。ここ数日何度か菅と進次郎は会談を重ねたと言われるが、はじめは菅が進次郎人気をあてに太郎とともに党の中心に据え挽回をはかるつもりだったのが、「飼い犬」の進次郎はもはや菅にしっぽを振らない。そればかりか「ボス犬」引退を勧めたようだ。おやじ同様、はっきりしているというか、抜かりがない。三人目退場。

 

結局、あてにしていた神奈川三郎は、三人が三人とも菅から離反。菅は自分を担いでくれた二階も放逐してしまった。後ろ盾だったはずの安倍は「高市支持」を打ち出し離反、麻生はさっき述べた通り。

ほんの短い間に泥船に空いた穴は一気に広がってしまった。

 

報道を見ていると、みなそれぞれ立派に見えるが、なんのことはない、自分の身をどう守るか、選挙が勝てるかどうかしか考えていない。横浜市長選のあと「早く(衆議院)選挙をしたい」と語った立民の江田憲司はがっかりだろう。

 

コロナ対策に専念したいと菅は退陣の理由を述べた。今まではコロナ対策に「専念」していなかったのだ。16329人(9月4日現在)の人々が亡くなる大災害が2年近くも続いているのに。

コロナ緊急事態宣言の最中にGoToトラベ(ブ)ルと五(誤)輪をやった宰相ということで歴史に名を刻まれるか。

 

さて、自民党の総裁選挙。

国会も開かずに党内選挙をやり、その結果選ばれた人物が次の首相になるというよくわからん仕組みのこの国の政治。

出てきた候補者も新鮮味なし。せめて安倍・菅批判を貫いて石破が出ればと思うが、党な基盤が弱いのだとか。モリカケ問題や学術会議問題など説明抜きのでたらめさなど、かつての党内派閥が活発だった自民党ならそこそこの落としどころが見つけられたろうに、小選挙区制度の前ではその「自浄」作用も期待できない。

 

ところで、菅退陣で一番がっかりしているのは野党だけではない。一番がっかりしているのは都知事ではないのか。自民党が、解散であれ満期であれ、とにかくガタガタしてくれればと考えていた、それこそ政局好きの小池。コロナ対策もあちこちボロが出てきているだけに国政への復帰を考えていたのではないか。

 

いずれにしろ(菅みたい)これからの2か月、与野党含めて政治家がどんな動きをするのか、しっかり注視したいと思う。

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Mさん丹精のきゅうり。少し育ちすぎだがみずみずしくておいしかった。