7時過ぎ、投票所の五貫目町内会館へ。始まったばかりなので有権者はまばら。
感染対策で筆記用具は、業務用使い捨て鉛筆。自分で一本取って投票用紙に記入、投票の前に用意された箱の中へ。
入って出てくるまでものの1分。いつもなら出口調査の調査員がうろうろしているのだが、時間が早いせいかだれもいない。
朝食後に青木理や鮫島浩のyoutubeの番組を見たのだが、帰宅してからはハマのドンこと藤木幸夫氏の外国特派員協会でのスピーチを見る。1時間と少し。
「江田のやつが、コイツはどうだってんで山中を連れてきたんだよ。俺は、目がきつすぎるよ、それじゃだめだって言ったんだ」
「え?勝つのは八郎だろう」
藤木は山中陣営支持を公然と表明しているのだが。そうはいっても藤木の子どもたちは小此木陣営にいる。しっかり保険をかけている。
「(1964年の)オリンピックの時には、新幹線など大変だった。北海道から九州まで人集めにまわった。足りないから横浜刑務所の服役囚にも特別に手続して手伝ってもらった。蔵前の関取たちにも。」
「今回、IRは嫌だっていう協会をつくったら港の250社がすぐ集まった。会費だけで1億円が集まった」
「田中康夫も後ろ盾になってくれって来た。」
「竹中平蔵が小泉をだまくらかしておかしなことをやった」
「横浜はずっと護送船団方式。人情長屋だ」
「菅?草履とりから首相なったんだ。あいつはひたすら我慢だよ、我慢。ジェラシーともいうが」
八郎を引っ張り出したのは藤木だろう。
人情長屋などといっているが、所詮利益集団。オレたちの横浜ムラを守ろうということだ。
横浜ムラとは、そのまま護送船団方式の利権構造。IRなどで外資に入ってこられるのは何としてでも阻止したい。
藤木にしてみれば、たとえ八郎が落選しても、山中にも乗っているから横浜ムラの利権は守れると踏んでいる。
八郎は次の参議院にでも出させればいい、ってところか。
藤木の誤算は、手なづけていた林が菅らとともにIR推進を打ち出したことだ。
「草履とりふぜいが・・・」か。
それをひっくり返すために、91歳が最後の政治の図面を書いてみたというところだろう。
今夜には当落がはっきりする。
このコロナの惨状からすれば、林は無論のこと、小此木も当選は難しいのではないか。
田中はそこそこの票、松沢、太田、福田、坪倉は法定得票数に届くかどうか。
立民、連合を中心にIR反対の市民運動に共産党ものっかっての”革新”陣営。
もし山中当選となれば、コロナ対策の不備含めて菅の不人気に拍車がかかり、政局になると言われている。
それよりも横浜にとっては、それだけの幅広い?支援を受けた山中の行政手腕がどれほどのものかということだ。
横浜は日本で一番大きな巨大政令都市。人口は東京に次ぐ。当面はコロナ対策が目玉になるが、舵はかなり重そうだ。
議会勢力はどうか。
自民党は、今度の分裂の余波がかなり残る。36人の議員のうち林についた5~6人に対する処遇はどうなるか。というより、寝返ったのはどちらかと言えば30人のほうなのだが。どちらにしろ分裂の傷は簡単に癒えない後を引く。それぞれの議員の後ろには利益集団があるのだから。
これに加えて与党を形成している公明党が16人。この人たちも「寝がえり派」。創価学会含めた内部での総括はどうなのか。
山中の与党となる可能性があるのは、立民+αが20人、共産が9人。29人がまとまれるか?
それでも数字的にはまだまだ自公の力が強い中で、山中がどう手腕をふるえるか。目玉の一つである中学校の給食問題一つとっても簡単ではない。「全員喫食」とはいってはいるが、完全給食の実施と入っていない…。
「花博」は実施する!と言っている。自公の既定方針。これ一つで私は山中へは投票しなかった。
花博は返還された米軍上瀬谷通信基地跡の利用問題。さまざまなな思惑が絡む巨大な利権が潜んでいる。そのまま実施とするなら、自民も立民も違いはない。共産党はこれも含めて山中支持でいくのだろうか。
小此木当選ならば、林支持の数人の議員の処遇はどうなるか。反旗を翻したかに見える議員たちは戦々恐々だろう。いくら大義はこちらにありと言っても、勝てば官軍。
政策的にはIR以外は林市政を踏襲。ほとんど何も変わらない。
さてさて、今回の選挙で足りなかったものは?
選択肢だ。
自民も立民もどちらも組織選挙。
IR反対を前面に出した市民グループからの立候補がなかったのが、足りなかった点。
図体がでかい自治体ほど市民運動が羽を広げるのは難しい。それでも市民の立場からすると、もっと政策に直結した主張が欲しい。
広大な敷地を”花博”をやって人を集め、そこに新交通や住宅地をつくるといった旧来型の開発計画ではなく、もっとフレキシブルで広がりのある政策、普段は市民が自由に出入りできる広大な敷地でありながら、いざというときには緊急の病院設置などに使える土地として準備しておくといった発想はないものだろうか。
医療がこれほどにひっ迫するなど、この国に起きるとは思っていなかった。疫病をこうまで抑え込めないのが現実ならばそれに対する対応策が今一番求められているはずだ。
370万都市という一自治体としては考えられほどに膨張してしまった横浜を、まずはどう小さくするか、90万人もの高齢者を一体的に何らかの政策で対応するのではなく、小さく区切ることで、手が届かないところまで届くようにする努力が必要だと思う。
そのための新しい発想を持った政治家に出てきてほしい。横浜ムラの既得権益を守るのではなく、横浜に住んでよかったと思えるような・・・・。
あと少しだけ。
ふるさと納税は菅が推進した政策だが、現状はすさまじいことになっている。
横浜へのふるさと納税は2020年度は1億3500万円。これでも前年度より4400万円増えている。しかし住民税控除額、つまり住民税の流出額はというと176億9500万円だ。前年度より32億2900万円も増えている。差引174億円の税金が流出しているということだ。
これが何を表しているかということだ。
横浜は決して住みやすい街ではない。いつもイメージ先行だ。基本的に他自治体、例えば隣の川崎や東京の区部に比べれば子育てに関するサービスは何十年もの間、低いままだ。370万人の人口がありながら一自治体であるから、さまざまな事業において資金はいびつな形で投下され、多くの住民が満足できるような形でのサービスが行われにくい。支払った住民税に対して十分な見返りがなされていないという感覚が市民に広くあるのではないか。
いずれにしても(菅みたいだが)、今夜新しい市長が決まる。だれが当選するにしても一市民としてその行き先をしっかり見定めていきたいと思っている。