横浜市長選、”野党系”候補の勝利。「虚飾」とパワハラ疑惑にまみれた人という風聞も。3つの応援団は、今後いかにする?

        <開票速報:横浜市長候補者別得票数>
                           

           山中竹春=   50万6392票     当選

                            小此木八郎=32万5947票

                            林文子=      19万6926票

                            田中康夫=   19万4713票

                            松沢成文=   16万2206票

                            福田峰之=     6万2455票

                            太田正孝=     3万9802票

                            坪倉良和=     1万9113票

 

投票率49.05%は、前回より11.84%上回った。

 

結果は予想通りだったが、これほど大差がつくとは。

18区のうち小此木が山中を上回ったのは地元の鶴見区だけ。その意味では惨敗、あるいは完敗と言ってよいのでは。

逆風の中にあって林候補は善戦。自民党の既定方針を守っての選挙戦は”大義”をもったもの。36人の自民市議のうち6人だけが林を支持。自主投票とはいえ自民党再議団には大きな亀裂が残ったはずだ。

田中康夫松沢成文、二人の元県知事経験者は10%以上の得票。

政策的には田中康夫ものに新鮮味を強く感じた。とりわけ上瀬谷通信基地跡地の利用方法では、「東京ドーム51個分跡地に消防・救急と医療・保健のレスキュー拠点を建設」が他候補と比較してもっと具体的で意義が伝わった。

それに対し松沢は「横浜開港英語パーク、英語ビジネスパークで世界から企業を誘致。英語第2公用語化でバイリンガルティー実現」には市民への視線は感じられなかった。

福田、太田、坪倉は法定得票数に届かず供託金240万円が没収ということに。

 

自民党分裂の中で漁夫の利を得たのが山中氏ということになる。それも思わぬ大量の票を得た。

 

新聞各紙は山中氏を”野党系”と表記。確かに立民と共産が下支えをしたという点では野党系であるが、可笑しいのはハマのドン藤木幸夫が山中の後ろ盾となっていることだ。

藤木としては、山中陣営に肩入れしながら、自身名付け親である小此木八郎の当選を願っていたことは間違いない。自分がこの市長レースのキーパーソンたらんとして動いてみたものの結果は予想とは違うものとなった。藤木にしてみれがとりあえずIR阻止という点では市長選は終わり!あとは山中とは是々非々で「市長のクビくらいいつでもすげ替えられる」ぐらいに考えているのだろう。

 

その山中だが、出された政策を見ても、実施可能かどうかは別としてコロナについてははっきりした方針を出しているが、それ以外のもには切れ味を感じない。さまざま色をつけてはいるが、基本的には林市政を継承するのではないか。その意味で”野党系”という表現が適切かどうか。

 

今回、当初立候補を表明していた元検事の郷原信郎が立候補を取りやめ、小此木・山中の落選運動に転じた。とりわけ山中に対しては、横浜市大内での行状について追及。選挙後もTwitter

 

「虚飾」とパワハラ疑惑にまみれた市長候補に、一切説明をさせず、コロナ感染爆発による菅政権の失政への批判を追い風に「圧勝」しただけの選挙結果。横浜市民にとっては、これからが本当の戦い。

 

とつぶやいている。行政を外から監視するという点ではもっと注目されてもいい。

 

それから三つの応援団?について。

一つは公明党。元々は林市政の下で与党としてIR推進の立場にありながら、小此木の「寝がえり」によって菅―小此木路線にIR取りやめに”転進”。支持母体の創価学会会員からすれば、わかりにくいことこの上なし。そこそこの組織票で小此木に53%が入れたが、林にも10.9%が投票。自民同様ここも分裂している(いずれも出口調査から)。

いつも与党に身を置きたがる党だが、はたして山中とはどう位置取りをするのか。

 

もう一つの応援団は共産党

こちらは共産党支持者のうち63.5%が山中に投票。選択肢がなかったとはいえ、かなりの高得票。

”野党系”とはいえ、市議会の中で共産党が山中の「母体」とはなりえず、政策的にもバッティングすることが多いのではないか。

 

最後の応援団は市民派。何もをもって、誰をもって市民派というかは難しいところだが、支持政党なしの改革派でひとくくりをしてみると、この人たちも山中に投票した人が多いのではないか。IR推進の林は論外、IR取り下げの小此木は手のひら返しの可能性大、さらには菅政権のコロナていたらくの中では、立民推薦の山中を選ぶしかないということに。

 

この人たちが求めるものと山中の路線が手を結ぶことはあるのかどうか。

いわゆる”市民派市長”というものがあるとすれば、それは立民や連合といった政党や労組からは一歩も二歩も距離を置く人のことを言うのだろうから、山中はほど遠い。

 

終わってみれば、山中の大勝。

面白くもなんともない。

マスコミも永田町も、この結果が横浜の今後を占う?という視点よりも、これで菅の影響力に大きな陰りが見えた、いざ政局だ!という雰囲気。

 総裁選や総選挙をめぐって動きが激しくなるが、そんなことをしている場合じゃないと思う。コロナは簡単には収まらない。若年層、とりわけ10代の感染が増えている。

神奈川、横浜の感染も増えている。緊急の手当てが必要なことはもちろんだが、山中には林市政とは違う「色」が求められるはずだ。当分はじっくりとウオッチングだ。

 

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日本外国特派員協会で記者会見する藤木幸夫氏。内容はyoutbeでみられる。かなり面白い。