『幸せの答え合わせ』(2018年製作/100分/G/イギリス/原題:Hope Gap/監督:ウイリアム・ニコルソン/出演:アネット・ベニング ビル・ナイ ジョシュ・オコナー/日本公開2021年6月4日)理解できないところが多いが、引き込まれたし、楽しめた。そういう映画もある。

8月8日、深夜に激しい雨音を聴く。

散歩。境川は濁流に。鳥も人もほとんど見当たらず。

 

映画備忘録。7月27日。kiki。

 

『幸せの答え合わせ』(2018年製作/100分/G/イギリス/原題:Hope Gap/監督:ウイリアム・ニコルソン/出演:アネット・ベニング ビル・ナイ ジョシュ・オコナー/日本公開2021年6月4日)

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オスカー女優のアネット・ベニングビル・ナイが離婚の危機を迎えた熟年夫婦を演じ、「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョシュ・オコナーが息子役で共演した家族ドラマ。イギリス南部にある海辺の町シーフォードで暮らすグレースとエドワードは、もうすぐ結婚29周年を迎えようとしていた。独立して家を出た一人息子のジェイミーが久しぶりに帰郷した週末のこと、エドワードは突然「家を出て行く」とグレースに別れを告げる。その理由を聞いてグレースは絶望と怒りに支配され、そんな母を支えるジェイミーも自身の生き方や人間関係を見つめ直していく。「グラディエーター」「永遠(とわ)の愛に生きて」でアカデミー脚本賞に2度ノミネートされたウィリアム・ニコルソンが、自身の実体験をベースに脚本を執筆し、自ら監督も手がけた。

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配給会社の邦題は相変わらずひどい。原題は舞台となった土地の海岸の名前だが、ストーリーと重なっていてよい。

 

ほとんどのシーンが、妻、夫、30歳ほどの?一人息子の会話だ。息子のロンドンの?友人や離婚調停の弁護士、夫の新たな相手の女性との会話は少ないが、それぞれが印象が強い。きちんと描かれた少ない絵をしっかりと見せられているような。

 

ひとことで言えば、高齢夫婦の離婚話なのだが、日本的な「湿度」のようなものは感じられない。

とっかかりは妻の「わたしたちって幸せよね」。

 

夫婦のそれぞれの言い分はよく理解できるし、修復不可能jなのだろうということも伝わってくる。互いの言い分のぶつけ合いは、突然離婚を切り出された妻のほうがより感情的で「あるべき夫」を演じてこなかった夫に対する激しい誹謗と愛情のアンビバレントな感情が繰り返し繰り広げられるのはとっても演劇的。

 

夫のほうは、「昔からそんなふうに思っていたわけではないでしょう?」と言われても、すでに関係を清算しようと決めている分、振り返ろうともしない。

高校の教員をしている?夫の思いは、歴史の中でナポレオンの撤退について生徒に質問しているシーンなどに仮託されているようだが、正確にはよくわからない。

 

二人の間で交わされる会話は、たぶんイギリス人独特の皮肉や嫌味が取り混ざっているのだろうが、表面的にしか理解できない。妻の徹底した合理性、論理性もよくわからない。

 

そのわからなさを息子の視点から眺めているのがこの映画の特質なのだと思う。別居後に買い始めた犬に夫の名前をつけ、しつけようとする母にそれこそアンビバレントな感情を持て余す息子のやさしさ。両親のどちらにも偏ることのできない柔弱さ。

 

イギリス南部の海辺の町シーフォード、そのはずれにある白く切り立った岸壁が何度も登場するが、そこは家族の思い出の地であり、別れの地でもある。小さな町の中で繰り広げられる愛憎劇。

 

ラスト少し前のシーン。妻はクルマで夫が新しい相手と住む家の前に来かかる。

気がついた時にはリビングで本を読む夫の前に立っている。非常識な訪問に驚く夫。

ふたたび繰り言を繰り返す妻。

そこに新しい相手がダイニングから出てくる。それを制して妻を返そうとする夫。

新しい相手は「わたしが話をするわ」と妻と向き合う。

 

「寂しい思いをしている人間が3人いた。今はそれが一人になった」

 

印象的なシーンではあるけれど、なにゆえこの人がここでこんなことを言わなければならないのか、よくわからないかった。

ことほどさように、私のバックボーンでは理解不能なところがいくつもあった。

 

とはいえ、脚本、演出、構成、舞台…引き込まれた。秀作であることは間違いない。

 

 

 息子と二人で海岸で歩いているとき、父親がアイスを買おうという。

「この海の風景に合うから」といったことを言う。

お金を払う段になって「2ポンドもするのか」。

なんとも言えないシーン。2ポンドは300円とちょっと。私も高いなと思う。