「9月入学、いいんじゃね」とはいかない。どれほどの歪み、ひずみをもたらすことになるか、やはりこの問題、じっくりと議論すべき。 というより、緊急時に無理な制度いじりはやめた方がいい、ということだ。

朝日新聞一面の二番めの記事。

 

「教員2・8万人付則の推計 来週9月入学 待機児童も増」のタイトル。

関連記事は22面にも。

 

苅谷剛彦 英オクスフォード大教授の研究チームの推計。

『大衆教育社会のゆくえ――学歴主義と平等神話の戦後史』(1995年)以来、日本の教育の階層化の問題を研究、教育政策を批判してきた人。

 

呑み屋談議のように全国知事会から始まった9月入学論。「前広の論議を」という安倍首相、いいんじゃない?という尾木ママまで、肯定論が出始まったところに先日日本教育学会が冷静な論議をと呼びかけた。それに苅谷さんらのグループが「エビデンス」をもって続いたというかたち。

 

2021年9月入学とした場合、2014年4月2日生まれから2015年9月1日生まれまで5か月分増やすとすると、新入生の数は、例年より42万5千人増える。1.4倍に。

このとき2014年4月2日~2015年4月1日生まれの児童は、保育所に5か月長くいることになるから、初年の地方自治体の支出は2640億円、教員は2万8100人が追加で必要になるという。このとき保育所は新たに26万5千人学童保育16万7千人の待機児童が生まれる。

 

都市部での待機児童が、例えば神奈川県だと2万5千人増える。学童保育は1万2千人。

大阪府の場合は2万5千人。すさまじい数だ。

 

教員の採用はもっとすさまじい数字になる。

不足する教員数を全て正規教員で充てた場合、採用倍率は全国平均で0.88倍、全入でも足りないということだ。

50%を正規教員とした場合は、全国平均が1.33倍に。

30%を正規教員とした場合は、全国平均は1.66倍

 

いまですら、採用倍率が3倍を切り、自治体によっては2倍を切っているところがある。

結論としては、財政問題がいちばん大きいが、それだけでなく、教員を充当できないなどということからすると、「教育の質の低下」が懸念されるということだ。

 

「9月入学、いいんじゃね」とはいかない。どれほどの歪み、ひずみをもたらすことになるか、やはりこの問題、じっくりと議論すべき。

というより、緊急時に無理な制度いじりはやめた方がいい、ということだ。

 

それより、GIGAスクール構想の前倒し、一人一台のパソコン配布をやめて、その分の3000億円を使って、少しでも教員を増やすことだ。

3密を防ぐ意味でも、本当のゆとりのある教育を進める意味でも。

 

そのために学校の色をブラックから、せめて薄いグレーに変えることが必要だが。

 

 

 

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youtube12人の優しい日本人』(1991年・三谷幸喜の朗読劇が見られる。無料である。

https://12nin-online.jimdofree.com/

 

昨日前篇をみた。驚いた。かなりいい。12分割、時には13分割の画面だが、画面もきれいだし、とにかく役者がうまい。朗読劇には見えない。

 

 

堀川惠子さんの『狼の義 新 犬養木堂伝』 (角川書店)が、すばらしく面白かったという話をいつだったか書いた。犬養毅という人の新しい宰相像が描かれた佳作。

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昨日、竹内良男さんの「広島講座」の通信最新号で、5月15日にちなんで堀川さんが紹介されており、そこに『読書人』のロングインタビューのアドレスがあったので、読んでみた。

昨年の司馬遼太郎賞受賞の作品、亡くなった夫の林新さんの遺志を継ぎながら、ご自分の線をしっかり貫いた堀川さんの軌跡が読み取れるインタビュー。

興味のある方、まずこのインタビューからどうぞ。

   https://dokushojin.com/article.html?i=5420
        「読書人ロングインタビュー第1回から第6回」