ドラマを見ていると、にぎやかな居酒屋のシーンが出てくる。 今は、もうありえないなとつぶやく。 小さな店の器がぶつかる音や大きな声のやりとり、そんな喧騒が懐かしい。

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散歩で見かけたモッコーバラ(一昨日)


新型コロナウイルスの影響で減収や失業した人に向けた特例貸付の申請が急増しているという。

18日までに約72000件の申請。厚生労働省の所管だが、自治体では社会福祉協議会などが窓口になっている。

無利子で借りやすいため窓口はかなり混雑してとのこと。6月下旬まで待てと言われたという人もいるとか。

厚労省は窓口の拡充を急いでいるが、資金を必要としている人たちにとっては切実な問題。諸外国の給付金の素早い対応を見るにつけ、日本でももう少しスムーズな対応ができないものかと思う。

 

特例貸付には2種類ある。

ひとつは【緊急小口資金】20万円が限度。減収を証明できる給与明細などと住民票がいる。返済は2年以内。

 

もうひとつは【総合支援資金】こちらは失業した人が対象。単身世帯は15万円まで、2人以上の世帯は20万円を限度に3か月間借りられる。失業が証明できる書類と住民票がいる。返済期間は10年以内。

 

無利子で保証人が要らないというのは緊急時の制度としては、使い勝手のいいシステムだと思う。

混雑に対しては、現在自治体の部署が窓口になっているのを、全国の労働金庫に緊急小口資金の受付業務を依頼するという。30日からこちらは始まる。連休中も申請を受け付けてくれるといいのだが。

 

自粛要請を受けて休業している店の経営者にとっては、一律給付の10万円もまだまだ先のこととすると、当座の必要な資金繰りに奔走している人も多いはず。使えるものは何でも、の気持ちだろう。額面の少ないこういう資金もあるに越したことはない。

 

いつも思うことだが、給料生活をしてきた身としては、借金は住宅ローンが中心で、仕事そのもので借金をすることはまずない。家賃を払うという行為も、それによって何かを生み出すというより、仕事をする上での必要条件なわけで投資とは云えない。

 

しかし、自営業者、たとえば居酒屋をやろうとするには、まず店舗を借りること一つとっても、投資である。

 

同様に水光熱費という固定費がいる。これも投資である。さらに店内の物品の購入や仕入れ、なにより人件費がかかる。みな投資である。

 

元手となる資金は限られているから、利益が出てくるまではすべて持ち出しとなる。

儲からなければ、店を明け渡して閉店するしかない。元手を借りていれば、借金が残る。

しかし、少しずつ利益が上がっていけば、借金は返済できる。うまくいけば、店舗を購入することも考えられるが、自前の店舗をもてばあらたに経費がかかるから、それよりも資金を回して利益を上げる方がリスクは少ない。

 

毎月、家賃、人件費などの固定費を回収してから利益が出てくるが、月によって売り上げには差が出てくるから、資金が続かないときがある。こういう時に町の信金などが小口の融資を頼むことになる。平均的に売り上げを見込めるお店には、信金などは定期的にお金を回してくれるが、もちろんタダではない。問題は今回のような非常時だ。

 

店を開けておいても客は来ない。閉めれば収入はゼロ。

急な病気だとか怪我ならば、先が見える。先が見えればそれなりの手当てができるが、今回のようにいつになれば緊急事態宣言が解除されるかも全く分からない状態では、お金を借りようにも短期で利子のつく資金は借りられない。

 

無利子で長期の返済期間が設定されていれば助かる、ということになる。こういう資金は額面が少ない。3か月ではたして回復するのかどうか。そうなると、ふだんの体力の有無が重要だが、商売人にとってお金は基本的に回すもの。自分のところに留保することも大事だが、次の一手を常に考える商人は留保よりも投資を先に考える。

だから今は、どうお金を借りるかが最大の問題ということになる。厚労省のふたつの融資も単独ではなく、各自治体のものや民間のもの、いろいろ組み合わせて利子の計算をしたうえでの借り入れということになる。

 

私のような給料生活者だった者には、想像もつかない事態だ。

 

もらったひと月分の給料で何とかその月をやりくりし、なるべく借金はしない。住宅ローンの返済は低利で超長期のもの、そのために借り換えもする。ローンには保険がかかっているから、借りた本人が倒れても残された家族に支払い義務はない。

つまり、基本的にお金を儲けるために資金を借りるという発想はない。

国は、こういう給料生活者を大量に生み出し、源泉徴収によって所得税を確保してきたわけだ。

 

気になるのは、自分が通っていたお店のことだ。

 

行って呑むのがいちばんいい応援だが、それができない。

 

メールをする。窮状を聞く。

出来るのはささやかな陣中見舞いぐらい。

いろいろ工夫していますよ、ということばにホッとする。

ドラマを見ていると、にぎやかな居酒屋のシーンが出てくる。

今は、もうありえないなとつぶやく。

小さな店の器がぶつかる音や大きな声のやりとり、そんな喧騒が懐かしい。