国勢調査の用紙が郵便受けに入っていた。
うちは2人暮らし。
なのに3人分。2015年に亡くなった義母の分だ。
国勢調査は5年に一度。
前回は義母が亡くなって1年も経たない時期。届けは済んでいるから、年金も来ないし、市の健康診断の案内も来ない。
なのに国勢調査は来る?
きちんとしているようで杜撰なこの国のシステム。
マイナンバーカードなどその最たるもの。
保険証から運転免許証からなんでも入ってしまう魔法のカード?使い方が難しいようだ。コロナの給付金ではマイナンバーカードで申請した人の方がめんどうだったとか。更新も面倒だし、そもそもこういうカードでうまくいったものがあっただろか。
国民生活の利便性の向上?国民の私的情報管理の方策ではないのか?
単純に考え1枚のカードになんでも入っているというのがコワい。
マイナポイントというのがあるらしい。
なんとなくマイナーな感じがするのは私だけか。
国勢調査は2人分だけ郵送。
返送されずに情報のない義母の扱いはどうなるのだろう。
24日、厚木での二本目。
『はりぼて』(2020年/100分/日本/監督:五百旗頭幸男 砂沢智史/出演(声)佐久田脩/2020年8月公開)★★★★☆
富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、報道によって人間の狡猾さと滑稽さを浮き彫りにする様子を描いたドキュメンタリー。市議14人をドミノ辞職に追い込んだ「政務活動費を巡る調査報道」で日本記者クラブ特別賞などを受賞した富山のローカル局チューリップテレビが、その後3年間にわたって取材を重ね、テレビ番組放送後の議会のさらなる腐敗と議員たちの開き直りともいえる姿を追う。2016年、チューリップテレビのスクープ報道により、「富山市議会のドン」といわれる自民党重鎮の不正が発覚した。これを皮切りに議員たちの不正が次々と判明し、半年間で14人もの議員が辞職する事態に。富山市議会はその反省をもとに厳しい条例を制定するが、3年半が経過した2020年には、議員たちは不正が発覚しても辞職せず居座るようになっていた。そんな議員たちを取材し、政治家の非常識な姿や滑稽さを目の当たりにしていく記者たちだったが……。(映画ドットコムから)
自民党会派の重鎮へのインタビューから映画は始まる。
根拠も示さず、「市議をやめれば国民年金6万円で生活できると思うか、あんた」と持論を展開する重鎮。
何の話かと思えば、議員報酬を一律月に10万円値上げするという議案のこと。
生活が苦しいことが報酬値上げとどうかかわるのか、それって別物でしょ?というツッコミをするでもなく、「そうですよね」と納得する記者と「そうだろう?わかるだろう」としてやったりの重鎮。
いいシーンから始めたものだ。
政務活動費の問題で、テレビの前で大声をあげて泣いたのは兵庫県議だったか。たしか政務活動費で城崎温泉に遊びに行ったんだったっけ。
富山も同じ。
政活費ではなく、生活費と思っている議員たちは全国にいたのでは。国会議員の文書通信交通滞在費も同様だ。金に色はついていない、ということか。
まずは重鎮から始まり、同じ会派の非主流派まで次々と不正が発覚して、半年の間に14人が辞職する前代未聞のスキャンダル。
映像のすごさを感じた。
たいていの議員が不正の事実を突きつけられると白を切る。その表情がとってもわかりやすい。
子どもがいたずらを見つかったときとそれほど変わらないのだ。
無表情に近い。口数が多くなる。早く切り上げようとする。
皆でやれば怖くない、の世界だ。
「おれだけじゃないよ」というのも子どもと同じ。
子どもはそれでも認めればごめんと謝る。おっさんたちも一応は申し訳なさあそうに頭を下げる。そして有権者に対してはひたすら情に訴える。
私はそんなに悪いやつではない、私なりにみなさんのために一所懸命に働いてきた・・・
そういう言い訳を堂々と言えるのが政治家の特質だ。
会場から出てきた支持者ののおばさんたち
「あそこまで言われたらもうそれ以上ねえ・・・」
寛大というか、情には情で応えるのだ。
閉じた関係。
市議をやめる人とやめない人がいる。
やめてまた(選挙に)出てくる人もいる。
広島の河井夫妻からお金をもらった政治家たちも同じ。
「そういうものだろう」「おれだけじゃないし」。
笑いながら見ていて、ふと自分だったらどうだろうか、と考える。
わからんなあ・・・流されやすいしなあ。それほど倫理的にしっかりした人間じゃないし・・・。
この映像は、わたしのようなフツーの人間がこういう仕儀に至ったとき、どういう態度を取ればいいかを教えてくれる。
単純なことだ。
悪いことをしてもごましてはいけないということ。
でもそれが難しい。
福岡へのカラ出張を問いただされる市議。不正の書面を見せられて
「こう書いてあるんだから行ったんじゃないの?」
「どんな視察を?」
「そりゃいろいろあるだろう・・・」
福岡市の担当者は
「いらっしゃっていませんねえ」
調べればわかるような嘘をつくのは、みんなでやっているという安心感があるからだろう。
自民党会派全員で4000万円超の不正使用が明らかになる。
市議だけではない。
市議たちが公民館を使って「市政報告会」をやったとして、その時に資料配布の費用を政活費として支出していたことから、事実かどうか確認するためにテレビ局は教育委員会に情報公開請求をした。
するとそのことがすぐに議会事務局に伝わり、市議たちにも伝わっていたことが判明する。
記者は、教育委員会の課長に直接問いただす。
このときにもカメラが入る。わきが甘いというか何というか。カメラを締め出すこともせず、「情報を流したんですか」と迫られる課長。
いったんは否定するが、「いやあ、内々に・・・」。
「内々に」が通るなら、情報公開制度は成立しない。
凄すぎ。市議だけじゃない。役人も。
情報公開制度が死んでいることをカメラが明らかにする。
責任者の教育長もカメラの前に。
「同じ行政なんだから情報を共有するのは当然なのでは・・・。」
すごい発言だ。情報公開制度の基本のキすら知らない人が教育長をやっている。
普通ならこの発言で責任取って辞職だろう。
数日後、カメラの前でアタマを下げる教育長。
時々、市民の姿が映る。
わたしと同年代の老人が数人がこぶしを振り上げている。
公園で遊ぶ親子、若い母親に危機感はない。
どの市議もいたずらがばれた子どものような困った表情をするが、ひとり不正はないのに?顔つきがどんどん悪くなる男がいた。
市長である。
議員報酬10万円アップについてコメントを求められるが、
「審議会の方が出した答申に従うのが市長の仕事。私はそれについてコメントする立場にない」
それが制度論というもの、が口癖。
不正が明らかになり14人が辞職してもノーコメント。
あろうことか、いったんは通過した報酬10万円アップの決議案の撤回法案が通ってもノーコメント。
自分に降りかかる火の粉を防ぐだけの保身のかたまりをカメラはしっかりとらえている。どんどん悪相になっていくと感じたのは私だけではないだろう。
しまいには自ら市長を辞職。
「私の本来の仕事は農業」とぶち上げる。
この人がいちばんかっこ悪い。
逃げに逃げ切った姿をすべてカメラがとらえている。
もう一人困ったちゃんがいた。
自民党会派ではない「改革派議員」の一人。
議会事務局に忍び込み、好意をもっていた事務職員二人の机を荒らしたとして起訴された議員、こちらは居直る。
「富山市議会の膿はまだ全部出ていない!」
天に唾する行為。
富山市議だけ?こういうの。
最後の方でチューリップテレビ内部の取材方針の食い違いから局をやめることになったキャスターが、社員の前で泣きながら述懐するシーンがあった。
どういう方針の違いがあったのか。「正々報道!」を掲げて市議たちの不正を暴いた若い記者たちだが、それほど単純な正義ではなかろう。
暴けば暴くほど思わぬところでひどく傷つく人たちもいる。
自分たちの葛藤ももっと描いてほしかった。
市内から望める美しい日本アルプスの姿、カラスが集まる市庁舎。
カメラがとらえる街並み。
富山市内での上映会はやられているのだろうか。
調べてみた。「ほとり座」という映画館で10/31(土)より上映されるそうだ。