『パラサイト 半地下の家族』(2019年/132分/PG12/韓国/原題:Parasite/監督 ポン・ジュノ/主演ソン・ガンホ) 行間からにじみ出てくるものが薄く「かき乱される感じ」がなかった。

  1月13日、グランベリー109シネマで

『パラサイト 半地下の家族』(2019年/132分/PG12/韓国/原題:Parasite/監督

ポン・ジュノ/主演ソン・ガンホをみた。

 

韓国映画が好きでよくみるが、これもその一つ。132分と長いが、飽きずに最後までみた。

「半地下」という韓国独得のすまいと、それとは対極的な丘の上に立つお金持ちにパラサイトする二つの家族…。期待をしてみにいったのだが。

 

韓国の格差社会?ちょっと違う気がしたこと、どうして随所にあるべきはずの葛藤がないんだ?と思ったこと、いくつかの布石を無理すじの「殺人」シーンで終わらせてしまったのが雑に見えたこと、ソンガンホの家族の紐帯というかつながり方がよくわからないこと、臭いについてのシーンが印象的なのに、深まりがないこと…。二つの家族のつながりがよく見えなかったこと・・・。絵的には(若者風だけど)いいなと思うところがあちこちにあった。

 

ラジオ、テレビ、ネットでは、この映画、絶賛の嵐。映画.COMが4.2と高得点。フィルマークス映画も4.2。Yahoo映画でも4.1。

カンヌ映画祭パルムドール賞、アメリアカデミー賞6部門にノミネート、というが、それほどの映画だろうか。

 

私だけどうしてこんなにずれてしまうのかと思うほどに、評価がずれる。レビューで「おもしろい」と書かれているところがあまり面白くないのだ。もっと面白い韓国映画はいくつもあるだろうに、などとつい毒づきたくなってしまう。

 

結局のところ、ポン・ジュノという監督の「文体」が肌に合わないのだなとというところに行きつく。

つくりものっぽさが強く、なんだか妙に仕掛けにはめられてしまう感じ、狙ったところに落とし込まれている感じがした。 

 行間からにじみ出てくるものが薄く、私が思ういい映画の条件「かき乱される感じ」がなかった。

 

 

ほとんどが絶賛評の中で、やや疑問を呈していて共感できるものがあった。一部抜粋する。

 

『 ・・・私の見落としでなければ家族内での、家族間の、葛藤は描かれていない。やはりその構図への疑問や懸念は示されていないとみなすのが妥当だろう。実際、韓国では血縁家族に頼る傾向が日本より強く、映画やドラマで、子にたかる親が子から見てネガティブな存在として描かれることも少なくない。だが『パラサイト』にそのような血縁家族という制度への疑念は一切ない。そして父は単なるグータラではなく、子(とくに息子)にとっての理や知や仁の源として、リスペクトされるべき存在として描かれているように見える(まさに家父長制!)。

 要は、家族の話で「も」あるのに、そこがツルッとしすぎているというのが、筆者がもうひとつ入り込めなかった理由であるように思う。社会経済的に困難な状況は、一般的に家族の関係も複雑化させ、とくに子どもを困難に陥れる。社会経済的に困難な状況にあるが家族は仲よしという表象は、筆者にはとってどうしてもファンタジー、欺瞞に見えてしまう。いやポン・ジュノは、「救い」として家族のファンタジーを描いたのかもしれない。それは格差社会の厳しさを逆説的に示唆するものではあるが、だが一方で、韓国でも日本でも(そして世界中のどこであっても)、血縁家族への回帰が処方箋になることはないだろう。』(Yahooニュース 韓東賢 日本映画大学准教授)