台風19号の被害、今朝の段階で61人死亡13人不明となった。河川は47河川、66か所で決壊したという。
各地に取り残されている人たちがまだまだいる。
道路が崩れたり、土砂の流入でクルマが通れず、徒歩だけというところも。
断水、停電などライフラインがまだ確保されていないところがある。
台風15号のあとの千葉の大規模停電もまだ完全復旧していない中での大災害、言葉を失う。激甚災害指定という言葉が出てきているが、政治が前面に出る場面だと思うのだが。
『タリヌスコラーズ第2回演奏会
を聴いた。
このグループ、初めて名前を聞いた時にびっくり、笑ってしまった。
タリススコラーズは、ルネサンス期の音楽をア・カペラで演奏するイギリスの声楽アンサンブルグループ。私も何枚かCDを持っている。2,3面に一度来日してコンサートを行っているが、まだ一度も本物を聴いたことはない。
タリス、というのはイングランドの16世紀の作曲家トマス・タリスのこと。スコラーズは学者? タリススコラーズはトマス・タリスの曲を研究する人たちといった意味になる。
で、この青葉区のタリヌスコラーズ、一文字だけ「ス」を「ヌ」に変えた。代表の方は自らトマス・タリヌと名乗っている。どうしてもタリヌは”足りぬ”・・・である。
ダジャレのような団名を冠したこのグループがどんな歌を歌うのか、以前から興味があった。
コンサートのチラシを見た時には、? と思った。小さい(500席)とはいえ会場はフィリアホール。日本のみならず海外からの著名な演奏家たちがステージに立つところ。
そこで15人ほどのコーラスグループが、入場無料でア・カペラのコンサートを開く。
フィリアホールといってもこれはホールではなく、ホールに隣接するリハーサル室か練習室なのではないか、という疑念がエレベータを降りるまで消えなかった。
間違いなくホールだった。
聴衆は、ざっと目で数えて120人ほど。
どうして?
演奏が始まってその理由が私なりによく分かった。
プログラムは二部構成
第一部 ルネサンス曲集 全6曲
オルランド・ラッソやハインリッヒ・イザークの曲。名前を知っているのはこの二人ぐらい。
休憩20分
第二部 Missa Pange lingua(ジョスカン・ド・プレ)
ミサ曲だから、キリエに始まり、グロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス
最後がアニュスデイの定番。
え?これじゃすぐ終わってしまうね、とMさんに軽口を叩いていたのは、無知なるゆえ。
第一部は35分、第二部は40分、どちらも途切れぬ緊張感を保って聴かせに聴かせた。
女声7人に男声7人。指揮者なし。出だしの指示だけ。指揮者なしだけならともかく、伴奏もない。横に一列に並んで、互いのわずかな動きや息遣いを感じてうたう。
それがどれだけ大変なことか、素人の私にもわかる。
第一部の始めこそ、ややおとなしい感じがしたが、曲が進むにつれ、特に第二部のミサ曲など、2重唱3重唱を随所に挟みながら、まったく破綻を見せずに、緊張感のある無伴奏の美しいハーモニーを存分に聴かせてくれた。時代も国も歴史も違う音楽なのに、全く無理のない自然な発声、心地よさはこれ以上ないほどだった。
アマチュアで・・・というのはそれほどの練習時間などない中でという意味だが、これだけのものがつくれるのは驚き。
どうして、100人ちょっとの聴衆しか入らないのにフィリアホールを使ったのか。
ホールの響きが決め手のような気がする。14人の無伴奏のコーラスがとにかくよく響くのだ。もちろんむやみにお風呂のように響くわけではなく、ほどよく、だ。
聴衆は120人ほどと書いたが、このホールに定員の500人が入れば、聴衆の衣服で音が吸われて、響きがかなり変わりそうだ。意図的かどうかは別として、この広さにこの聴衆によってごく自然に教会のような環境がつくられて、人数の少なさなど全く感じない、自然な響きがつくられていたような気がするのだ。
入場無料はどうだろう。
今ではアマチュア合唱団も入場料を取るのは当たり前になっている。この夏に聴いた人気の「大江戸コラリアーズ」の入場料は3000円。東京芸術劇場という会場と演奏レベルの高さからすれば、プロの入場料に引けを取らない価格も納得できた。
ではなぜタリヌスコラーズは。
ご本人たちに聞いたわけではない。これは勝手な想像だが、自分たちが歌いたい曲を歌いたい場所で存分に歌いたい。そこにわざわざ足を運んでもらうのだから、お金なんかもらえないよ、ということではないか。
こういうの、潔いな、と思う。
久しぶりに無伴奏のコーラスを愉しんだ。気持ちが高揚した。
掛け値なしの素晴らしいグループである。