立て続けに3本。『立ち上がる女』『ペパーミントキャンディ』『岡本太郎の沖縄』

朝一番の天気予報、今日は全国的に夏日になると云う。

 

らいとの早朝散歩は、空気がほど良く湿っていて、超微風。こういうのを風薫る5月というのだろう。らい、うれしいのか心なし早足に。

 

10時半、テラスの温度計は26℃。たしかに夏日。からっとして気持ちのいい午前中である。

 

 

一昨日、大雨、大風のあと病院をはしご。2軒目の医院で

 

「紹介状ですが、どこの病院にしますか」と若い医師。

 

拙宅からいちばん近い基幹病院は、田園都市線藤が丘駅昭和大学藤が丘病院。定年に至るまでの7年間乗り降りした駅。


「入院するにしても4,5日でしょう」。

 

簡単には釈放してくれないようである。有罪と決まったわけではないのだが。

 

ふたつの医院、薬局を回ってそのまま、産まれて20日足らずの赤ん坊の顔を見に次女宅へ。大和から相鉄線に乗り換える。

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退院まで時間がかかったが、落ち着いている。体重も増えている。母子ともにようやくリズムのある生活に。

 

4歳になる上の男の子と相撲を取る。栃ノ心のファン。今日、栃ノ心勝ったよと録画を見せてくれる。

つれあいは、泊まりこんでそろそろ2週間。こちらもリズムが出来つつあるようだ。

 

そして昨日、うってかわってカラッとした晴天。自宅へ戻ってから藤が丘へ出かける。

生徒の見舞いに来たことは何度かあるが、受診は初めて。コンビニやタリーズ珈琲がテナントとして入っている。

今では珍しくないが、病院の淡彩の中に黒や青や黄色が入ると「お、いいじゃん」と思う。

 

初診受付から2階の内科受付へ。

 

受付職員の「待ちますよ、今日は込んでいるので」の言葉通り、2時間あまり待って診察室へ。

その間、居眠り、読書、友人とのメールのやり取りなどを繰り返して間を持たせる。

 

若い男性の医師。初対面。「やあやあ、どうもどうも」という雰囲気ではない。時間は12時40分。朝から診察を続けてこの時間、たぶん私が午前中最後の患者。疲労の限界か、口数も少ない。視線を交わしたのは一度だけ。じっくり見られても困るけれど。

 

問診に答える私の言葉を、休みなく巧みなキーさばきでパソコンに打ち込んでいく。医師の働き方改革という言葉が浮かぶ。

 

「もう一度、内視鏡検査をやります」

 

ここだけははっきりと。込んでいるからと1週間後に。結果説明はその10日後。そこから治療が始まっていく。入院は1週間程度だという。

 

大学病院などの基幹病院は紹介状優先。しかしかかりつけ医の紹介状に付される検査結果は大雑把な判断に使われるだけで、実際の治療方針を決めるための検査は再度行うのが通例のようだ。その検査がかなり込んでいる。1週間後となったのはさほどに難しい病気ではないということだろう。

 

いずれにしろ、自覚症状がないのに「異状」が見つかったことは僥倖である。敬愛するかかりつけ医のI医師の卓見である。感謝しなければならない。これから1か月余、ルーティンから外れた生活になる。それもまたよしと考えるしかないだろう。

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先週、若葉町のジャックアンドベティで立て続けに3本の映画をみた。
『ペパーミント・キャンディ』(4Kレストア・デジタルリマスター版)(韓国・1999年・130分・監督イ・チャンドンソル・ギョング主演)

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知っていたが、みていない。2000年の日本公開時には数々の映画賞を獲得した作品。

 

先々週だったか、同じ監督の最新作『バーニング・劇場版』をみた。その感想はこのブログに書いた。

 

今回は主演が若いころのソル・ギョングだというので楽しみに出かけた。

 

やはりぴんとこなかった。やろうとしていることはわかるし、独特の雰囲気も感じるのだが、正直、冗長の感がぬぐえなかった。つくる側の思い入れが強く感じられて、ちょっと勘弁してほしいなと思った。


伝説の傑作といわれているが、まあ私の感覚がずれているのだろう。ソル・ギョングはこの当時イケメンだが、まだ陰翳というか深みがない。今の方が臭いがある。★★★

 

 


岡本太郎の沖縄』(日本・2018年・121分・監督葛山喜久・出演岡本太郎ほか)

 

楽しみに出かけた。1959年・66年の二度沖縄を訪れた岡本太郎の足跡を追ったドキュメンタリー。

 

久高島のイザイホーなど貴重な映像もあり、風葬に関する岡本太郎の醜聞なども含めて興味深いフィルムが多い。

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しかし井浦新のナレーションにも特徴的なように、つくる側のイメージとしての沖縄への思い入れが強く、太郎が訪れたところすべてを入れ込みすぎていて、かえって冗漫になってしまったような気がする。

 

随所にみられる沖縄人々の表情を垣間見るシーンも同様だ。つくる方がマジになりすぎてみる方が少し引いてしまうような、そんな感じ。久高島だけに絞った方が締まったのではないだろうか。★★★

 


面白かったのは『立ち上がる女』(2018年・アイスランド・フランス・ウクライナ合作・101分・原題:Woman at war・監督ベネディクト・エネリングソン・主演ハルドラ・ゲイルハルズデッティル)

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冒頭、洋弓を持った主人公中年の女性ハットラが、原野を駆け巡って、ある送電線に向けて鉄線のついた矢を放つ。矢は送電線の上を通って落ちてくる。その矢の先を引っ張ると鉄線についている金属が送電線をショートさせる。

 

どこからか現れる追跡のヘリ、そしてドローン。ハットラは何らかの主張があって、国の政策であるアルミ精製工場の稼働をたった一人で妨害しようとしている環境活動家「山女」。

 

この当局との追いつ追われつがとってもハードボイルドで新鮮。ハットラはかなり専門的な知識と行動力を持っているが、しかしどこか独断的。効果も考えず自分の主張を書いたビラを屋上からまいたりもする。ある意味独善的。

 

しかしハットラの独善とそれへの迷いが映画の推進力となっている。ハットラは一方、ウクライナからの養女の受け入れを希望している。それがいま実現しそうなところまで来ている。

 


もう一人重要な登場人物がハットラの双子の姉アウサ。姉のアウサも養女受け入れを希望していたが、今ではヨガに熱中しインドの寺院に入ることを願っている。アウサもまた以前は養女を希望していた。

 


ハットラは、アマチュアコーラスグループの指導をしている。これが仕事?これで食えているのかどうか、映画は拘っていない。

 

この合唱団の中に政府の官僚がいる。二人は時々別室で内緒話をする。その時携帯は冷蔵庫にしまう。家でもハットラの携帯置き場は冷蔵庫だ。盗聴を恐れているのだろうが、そうまでして妨害しなくてはならない問題なのかどうか。アイスランドの諜報活動がどんなものなのか。

 


アイスランドは、総面積は韓国と同じぐらい、北海道と四国を合わせ程の広さ。人口が35万人。横浜の区一つ程度の人口しかいない。軍隊をもたない希少な国のひとつ。その原野で繰り広げられるハットラと警察との闘いが軸になって、そこに養女の問題が絡む。

 


さまざまなシーン、ハットラ一人のシーンほとんどだが、そこに伴奏が入る。原野の中にオルガンと大太鼓にスーザフォンだったか。時々ドラムになったりピアノに変わったり。

 

バンドはハットラの家の中にも出現するし、街の中にも現れる。ハットラの心象を音楽にしているふうなのだが、ハットラには彼らは見えていない存在。この音楽がとてもいい。

 

ところがまれにこのバンドマンたちとハットラが視線を交わすシーンもある。

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ウクライナの民族衣装を着た3人の少女のコーラスも登場。不意に現れるこの二つのグループが、映画を格段に面白くさせている。大胆。映画でしかできないこと。これすごく印象が強い。

 

ランボーのようにかなり高度な戦いを繰り広げるハットラだが、親戚?の農夫の味のある支援も功を奏さず、逮捕されてしまう。しかし映画の面白さはここから。しっかり布石の打ってあるどんでん返しも含めて、ネタバレになるのであとは書かない。

 

全体にテンポがよく、気が利いていて、惹きつけられる映画だ。興業の惹句には「ユーモラスかつ皮肉たっぷりに描いたヒューマンドラマ」とあるが、ちょっと違うと思う。ヒューマンドラマじゃないだろう。

 

なにしろ、どうしてアイスランドウクライナからの養女を受け入れようとしているのか、それはチェルノブイリと関係があるのかどうか。よくわからない。わからないことが多いのだ。

 

それから、ハットラはアルミ精製工場を攻撃するが、基本的にこの意味がよくわからない。

アイスランドは80%を水力発電、20%を地力発電という再生エネルギーで100%を賄っている国だ。火力はもちろん原発は一基もないし、2050年までに水素エネルギー社会を確立するとしている。ハットラは何に怒りを覚えて闘っているのか、その基本的なことが私には理解できていない。誰か教えてほしい。

 

それでも映画は映画として楽しめてしまった。★★★★

https://youtu.be/Zf3rdHD67qY