放棄し続ける独立国家としての自治を回復させようとするか、今までどおり民意を無視した対米従属の路線を守るのか、この選挙結果は政権の喉元に突きつけられた鋭いナイフである。

9月30日(日)
 早めに呑み始めた酒が過ぎたのか、7時半ころ早々と床に就いてしまった。目が覚めると0時過ぎ。外の風の音に反応したようだ。強風というよりもはや暴風。木が揺れてぶつかり合う音がすさまじい。ふだん雨や風の音はよほどのことがない限り聞こえない。こんなに風の音が聞こえるのは、ここに移ってきて初めてのことだ。

 

宇宙から見た台風24号

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 台風24号が沖縄を経て九州に上陸、そのままスピードを上げて本州を席巻。

 昨夜は22時には首都圏の電車全部が運休となる。計画運休というのだろうか。これも初めてのこと。
 

 

 早朝4時のテレビが各地の被害を伝えている。西日本で雨の被害が出ているが、関東は風の被害が中心。風速40mを超え大型トラックが横転したり、店舗が崩壊したところも。


 大きなニュースがもうひとつ。沖縄県知事選。深夜につれあいから玉城デニー氏が勝ったことを聞いたのだが、票数までは分からなかった。今朝の報道では玉城氏が40万票以上を獲得、佐喜眞氏に8万票の差をつけたとか。下馬評は“僅差”だっただけにうれしい。

 これで沖縄の民意は改めて辺野古反対ということがはっきりした。政権はこの結果を受けてどうするのか。放棄し続ける独立国家としての自治を回復させようとするか、今までどおり民意を無視した対米従属の路線を守るのか、この選挙結果は政権の喉元に突きつけられた鋭いナイフである。

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 何人かの友人から「勝ったね」のメールが届いた。

 

 


 北海道新聞東京新聞中日新聞など連載されてきた桐野夏生新聞小説『とめどなく囁く』が、昨日9月30日で終了した。414回。休載は一度もなかったのではないか。

 一回分が400字詰め原稿用紙で3枚弱ほどだから、1000枚にもなる。1回目から欠かさず読んできた。桐野夏生の小説、全部読んでいるわけではないけれど、どちらかと言えば静かな部類に入るもの。

 

(ほぼネタバレなしの簡単なあらすじ)
 「塩崎早樹は前夫・庸介が海難事故で死亡認定された後、年の離れた克典と再婚。庸介の姿を見たという義母の話から彼の釣り仲間を訪ねた。庸介が自殺したのではという憶測に苦しむ早樹は、克典に心情を吐露する。そして克典も同様に前妻の死が自殺だったのではと悩んでいたことを知った。」
                         
 中心は早樹と、死亡認定された庸介の話なのだが、そこに克典の家族、とりわけ真矢という娘との関係、早樹の家族、庸介の母親、そして庸介の友人や早樹の友人も絡んで400回。最後の5,6回ほどで大胆ななぞの開示。桐野はこれをダメージとの闘いを描くのが小説だという。

f:id:keisuke42001:20181001165816j:plain桐野夏生

書き出す前に彼女はこんなことを書いている。

人生はダメージとの闘いであり、小説はその闘いを描くものではなかったか。自分が滞りなく仕事を回していた時は、ダメージに対する実感が失われていたとつくづく思った。

 今回の「とめどなく囁く」の女性主人公は、前夫を海難事故で失った経験をしている。「失った」と簡単に書くけれども、その喪失はいったいどれほどのダメージを彼女に与えたのだろう。夫が突然いなくなった彼女の日常はどう変わり、その心はどれほど傷付いたのか。

 しかも、ようやく新しい日常を確立した時に、再びアクシデントが起きる。前夫の母親が、夫は生きている、と彼女に囁くのだ。 その小さな囁きによって、彼女は今度はどんなダメージを喰(く)らうのだろうか。ダメージとの闘いを描くのが小説だと思うと、私たち作家は、とても怖(おそ)ろしいことを考え、そして書いているのだ、と今から緊張してしまう。(木)


どこまで引っ張るのかとも思ったが、結局1年以上、毎朝楽しませてもらった。

 新聞小説は、途中で「もういいや」という場合も少なくない。最後まで読ませるのはやはり技量の高さだと思う。ただ、これほど長くなければならなかったのかとも思う。新聞小説でなかったならまた違ったものになっていたのではないか。
 

 夕刊では、桜木紫乃の『緋の河』が好調だ。カルーセル麻紀を題材とした小説。現在257回。直木賞受賞の『ローヤルホテル』(2013年)に唸ったおぼえがある。ほかに何編か読んだが、桜木の文章にはつやというか、惹きつける力があると思う。

f:id:keisuke42001:20181001165949j:plain桜木紫乃


 

 カルーセル麻紀の一代記としてこのまま続くとすれば、400回では終わらないのではないか。『とめどなく囁く』は、登場人物が思いを語る部分が多かったが、『緋の河』は主人公に動きがあり停滞感が感じられない。毎朝の愉しみは続く(夕刊はどういうわけか朝に読む習慣になっている)。

 ちなみに桐野夏生のあとは中村文則の『逃亡者』が今日から始まっている。『教団X』を読んだことがある。それほど良いとは思わなかったが。