『なみの音』正面からのカットが多く、小津的であって、それがみる方をガシッと掴んで離さない。

2024年8月の映画寸評④

<自分なりのめやす>

お勧めしたい   ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

みる価値あり   ⭐️⭐️⭐️⭐️

時間があれば    ⭐️⭐️⭐️

無理しなくても  ⭐️⭐️

後悔するかも   ⭐️

(61)『なみの音』東北記録映画三部作の第一部(2011年製作/142分/日本/監督:濱口竜介 酒井耕/劇場公開日:2013年11月9日)

               8月12日 ジャックアンドベテイ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

「PASSION」「THE DEPTHS」で注目を集める新鋭・濱口竜介と「ホームスイートホーム」の酒井耕が共同監督で手がけた東北記録映画3部作の第1部で、東日本大震災津波被害を受けた人々の「対話」を集めたドキュメンタリー。岩手県宮古市田老地区から福島県相馬郡新地町まで南下しながら、家族や仲間など親しい者同士が震災とその後について語り合う姿を映し出す。被災地の悲惨な映像ではなく人々の日常的な対話を捉えることで、そこから生まれる被災者たちの感情をすくい取っていく。

横浜のジャック&ベテイの濱口竜介監督作品上映イベントで。

 

未見の『ハッピーアワー』をみたかったのだが、真夏に5時間を超える映画はエアコンが効きすぎて体調を壊しそうなので断念。代わりに2時間20分の本編を見た。

映画は津波の襲った風景を見せてくれるが、何より声に乗せられた語る人々の心象風景が圧倒的だ。

人々の語りを延々と聞く。

ごく普通の人たちが、思いがけないことを紡ぐ。話してみて、ああ自分はこんなふうに考えていたんだ、と気がついた人もいたのではないか。

夫婦や友人、きょうだい、さまざまな関係が、津波によって形を変えていく。

 

正面からのカットが多く小津的。客観性を排除して徹底して当事者性を全面に。

それがみる方をガシッと掴んで離さない。

 

聞くのが辛い話も多いのだが、それよりも、未曾有の津波の被害がこれほど人に深く思索させ、そして性愛の概念を除いたいわゆるエロス的な人と人との関係を求める対話になっていることに驚いた。

機会があれば第二部、第三部をみてみたいなみのおと