岐阜、2日目。
学校へ行く二人の孫を二人で長良川近くの学校まで送っていく。
道路に出て空を見上げると、そこには金華山。頂上に岐阜城が見える。
横浜の小学校はほとんど(たぶん)が集団登校。
小学校の校外委員の方から頼まれて2人で始めた「旗持ち」、今年2年目になるが、2列に隊列を組んで俯き加減にタラタラと歩いていく子どもたちに「おはようございます!いってらっしゃい、気をつけて!」と声をかけている。週一木曜日だけだが、ちょっとした日々のアクセントになっている。
そんな横浜の登校風景と岐阜は全く違った。そもそも集団登校がないのだ。
三々五々、皆バラバラに歩いて学校に向かう。
保護者同伴の児童もいれば、クルマで送られてくる児童も。
驚いたのは、親と一緒に登校する児童たち、それも両親と手をつないで登校する児童が多い。
なんというか新鮮。
自営の方が多いせいだろうか。
初めて岐阜を訪れた時に、ハンコ屋や提灯屋、和菓子屋など小さな商店が多いことに驚いた。
都会では、いや地方ではもっと廃れてしまった商いがここではまだ健在。
信長の楽市楽座とは無縁と思うが、そんな登校風景をみていると、時間の流れがゆったりしているように感じた。
途中、道路をほうきで履いている高齢の女性に孫たちが挨拶する。
Mさんも「いつもお世話になっています」と声をかけると、最敬礼で挨拶を返してくださる。いつも二人に声をかけてくれ、お菓子をくださったりするそうだ。
この方のお店の看板にはポンプ屋とある。
さて、この日の行き先は明治村。
30年以上前に一度行ったことがあるが、Mさんは行ったことがないというので出かけることに。
ここもまた電車で行くのは不便なところ。名鉄で犬山まで行きそこからバス。
頼みの綱のTさん、今日もクルマで行ってくれるという。
各務原市(かがみはらと読んでなんの疑問も持っていなかったが、正確には「かかみがはら」が正しいとのこと。交通標識にそう書いてある)。
国道が木曽川を越えるときに、北側に木曽川にはみ出るようにして小高い山とお城が見える。
国宝犬山城。時間があればここにも。
月曜の明治村、閑散としているかと思ったらそうでもない。
帰っていくTさんを見送り、入園。2500円は安くないが、全国から移築した明治時代の本物の建築物を保存、維持し見学に供するのだから、このぐらいはかかるのかもしれない。
村内には乗り降り自由のバスや電車、SLも走っている。
広さは100万平米、東京ドーム21個分だそうだ。
30年前の印象は、夏だったせいもあってどこか白茶けた埃っぽいものなのだが、今回は大きく違った。
新緑の季節、吹き抜ける風は乾いて気持ちがいい。ウグイスの鳴き声がひっきりなしに聞こえてくる。鬱蒼とした林がどこまでも続いている。
30年の間に花卉や樹木はしっかり育ったようだ。
入園者の合計は昨年5000万人を超えたとのこと。
印象に残っている建物の写真を並べておく。
日本赤十字社中央病院棟(東京都渋谷区)
歩兵第六聨隊兵舎(名古屋市中区)
帝国ホテル中央玄関(東京都千代田区)
園内バスで正門に戻り、犬山駅行きのバスを待つ。
20分ほどで犬山駅東口。ここから犬山城まで地域循環バスが通っているというので、バス停を探すも見つからず。
停車しているバスの運転士さんに訪ねる。わざわざ降りてきてすまなそうに「駅の向こう側なんですよ、すみませんね」。
西口のホテル前からでるのだそうだ。バス停らしきものを発見。調べた時刻が載っているが、なぜか犬山城の文字はない。
程なく小さなワゴン車のようなバスがやってくる。
犬山城に行くと言う。200円でチケットを買うと、「乗り放題です。帰りの時間を確認してから見学してくださいね」
とにかく皆親切。老人二人連れだからなのか、それとも地方独特のものなのか。
犬山城。登ったというのが正直なところ。
階段を4回ほども連ねて天守閣の一番上まで行くのだが、大抵どこのお城もそこそこ急なものだが、ここの角度は今まで経験したことのない急なもの。手すりなしでは登れない。
そしてこの日最大の難関が、木曽川をのぞむ眺望が素晴らしい天守閣をぐるりと巡る外まわり。その手すりの低いこと!
高所恐怖症にとっては、手すりが30cmほどに感じられる。
Mさんは「きれいだねえ」なんて言いながら歩きだす。
嫌ならやめればいいのだが、そうも言えず後ろからそっと歩き出す。
やめればよかったと思うが、後から他のお客さんがついてくるので引き返すわけにもいかない。足がすくむ。手すりに近寄らず壁側に引っ付くようにして、なんとか一周する。景色は?見えない。
下の階段よりもこの天守閣巡りが恐怖だった。
手すり。
国宝の城は少ない。松本城、姫路城、松江城、彦根城、そして犬山城。3つ登ったことになる。彦根城、姫路城は遠くから車窓見学?のみ。
名鉄犬山駅に戻り、各駅で50分近く走り、名鉄岐阜。疲労困憊のMさんを励ましながら、もうバスはいいだろうと、タクシーで帰宅した。